【759】 ○ 柳谷 杞一郎 『マチュピチュ―写真でわかる謎への旅』 (2000/02 雷鳥社) ★★★★

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"超一級"の世界遺産マチュピチュの解決されない「謎」。

マチュピチュ.jpg 『マチュピチュ (写真でわかる謎への旅)』 〔'00年〕 マチュピチュ:.jpg

 写真家による本書は、ペルー・マチュピチュ遺跡のカラー写真が豊富で、旅行案内もありガイドブック的体裁をとっていますが、中核部分は、インカの歴史解説となっています。
 その歴史解説そのものはオーソドックスですが、マチュピチュに関する部分が詳しく書かれていて興味深かったです。

 インカの最後の王となったアタワルパ亡き後もスペイン人に対し抵抗を続けた、マンコ・インカをリーダーとするインカ族の勇士たちですが、彼らが「新インカ」の都としたとされる地〈ビルカバンバ・ビエハ〉は、その後のトゥパク・アマルーの刑死により抵抗が潰えるまで、インカ族の誰もが(スペイン人の激しい拷問にも関わらず)その地がどこにあるか口を割らなかったため、本当にそうした都市があるのか半ば伝説化されていましたが、1911年にマチュピチュを発見した米国人探検家ハイラム・ビンガムは、マチュピチュこそ〈ビルカバンバ・ビエハ〉だと確信したわけです。

 しかし、その後の文献調査などで、マチュピチュは〈ビルカバンバ・ビエハ〉ではなかったことが分かっていて、では、何故こんな「天空の城」みたいな壮大な"空中都市"があるのか、その役割が興味の対象となるわけです。
 "壮大な"と言っても、建造物が山頂から傾斜地にかけてあるため、居住可能人口は500から1,000程度と推定されていて、"都市"と呼ぶにはちょっと中途半端な規模です。

 本書によれば、マチュピチュの建造目的には、アマゾンの反抗部族に対する備えとしての要塞都市、特別な宗教施設、皇帝に仕える女性たちを住まわせる後宮、避暑のための別荘地的王宮...etc.諸説あるようですが、どの説もそれだけでは説明しきれない部分があるように思われ、本当に謎深く、そうした意味でもマチュピチュは"超一級"の世界遺産だなあと。

 マチュピチュの麓で今も暮らすインディオの人々の様や観光用の登山鉄道などの写真もあり、その他の見どころや現地のホテル、お店などのトラベルデータなども掲載されているので、観光ガイドとしても充分に参考になるかと思います。

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This page contains a single entry by wada published on 2007年10月21日 19:56.

【758】 ○ カルメン・ベルナン 『インカ帝国―太陽と黄金の民族 (「知の再発見」双書)』 (1991/05 創元社) ★★★☆ was the previous entry in this blog.

【760】 ○ 増田 義郎 『アステカとインカ―黄金帝国の滅亡』 (2002/03 小学館) ★★★★ is the next entry in this blog.

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