【524】 ○ 山岸 凉子 『青青(あお)の時代 (全4巻)』 (1999/01 潮出版社) ★★★☆

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かなり自由に「卑弥呼」像を描いている。ヒミコと諸国の関係が掴め、勉強になる?

青青(あお)の時代 コミック 全4巻.jpg青青の時代0_.jpg青青(あお)の時代.jpg 『青青の時代』潮漫画文庫(全3巻)['04年]
青青(あお)の時代 コミック 全4巻完結(希望コミックス ) [マーケットプレイスコミックセット]

 '98(平成10)年に雑誌『comicトムプラス』(潮出版社)で連載がスタートした作品(1998年5月号~2000年2月号)。南の島で気のふれた祖母を世話しながら暮らす10歳の少女・壱与(イヨ)のもとへ、ある日伊都国から四の王子・狗智日子(クチヒコ)がやってきて、祖母と少女を伊都国へ連れて帰る。伊都国には、「聞こえさま」と呼ばれる大和(ヤマタイ)の巫女王・日女子(ヒミコ)がいて神託で国を治めていたが、少女の祖母は日女(ヒルメ)といい、ヒミコの姉にあたるらしいことがわかる―。

 『日出処の天子』などと同じく古代史ものですが、この作品のヒミコは凋落期にあり、伊都国の方も、男王の死没で王位継承争いが起きていて(この人、こうした血肉の争いをわかりやすく面白く描くのは本当にうまい)、ヒミコは権力抗争の道具になっており、ヒミコはヒミコで、自らの巫女王としての座を守ることに汲々としているという感じ。

 かなり自由に「卑弥呼」像を描いているという感じですが、人間臭い分、『日出処の天子』の厩戸王子(聖徳太子)ほどの清澄な凄みは感じられず、ストーリー的にも、壱与がやがてその後継者となって国を治めるはずですが、壱与を(特殊な能力を持ちながらも)普通の少女のように描いていて、巫女王になるところまでは描かれていないので、やや物足りない感じもしました。

 ラストで壱与は13歳になっていますが、これは壱与が巫女王になった年齢ではないでしょうか。(「卑弥呼以て死す。(中略)更に男王を立てしも、國中服せず。更更相誅殺し、当時千余人を殺す。また卑弥呼の宗女壱与年十三なるを立てて王となし、國中遂に定まる」―『魏志倭人伝』より)。島(沖縄?)に帰っている場合じゃないのでは...。

 でも壱与を助けるクロヲトコ(死体埋葬人)のシビや、王位を狙う狗智日子などのキャラクターの描き方はなかなかよく、最後まで飽きさせず、それなりに厚みのあるストーリーにはなっているように思いました。
 
 一般に「邪馬台国の女王・卑弥呼」という言われ方をしますが、ヒミコは大和連合共通の巫女王であるものの、連合と言っても、統一されておらず、国同士で覇権争いしている、その中の1国である伊都国に居て、伊都国には男王もいるのですが、巫女であるヒミコが次第に権威を増し、伊都国の政治の決定権を握ってしまっているという構図になっています。ヒミコと諸国の関係が掴めるので勉強になる?

 【2004年文庫化[潮漫画文庫(全3巻)]】

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