【323】 ◎ 毎日新聞児童虐待取材班 『殺さないで 児童虐待という犯罪 (2002/09 中央法規出版) ★★★★☆

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児童虐待は犯罪であるという立場で貫かれているルポルタージュ。

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殺さないで―児童虐待という犯罪』(2002/09 中央法規出版)

 「毎日新聞」の連載を単行本化したもので、2001(平成13)年・第44回「日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞」受賞作。

本書に書かれている虐待例は、何れも幼児の「死」という結果のみならず、その過程において凄惨極まりないものですが、死んでいった子どもたちにとって、この世に生まれてきたということはどういうことだったのか、考えずにはおれません。

 こうした事件の判決がほとんど殺人ではなく傷害致死罪であり、驚くほど刑が軽いことを本書で知りました。
 児童虐待が起こる原因を家族心理学的に分析する動きは以前からありますが、本書にもあるとおり、最近は弁護側が、親がAC(アダルトチルドレン)であったことを主張するケースもままあるそうです。

 相談所が事前把握していた事実を伏せる、警察が民事不介入を盾に動かない、防止に力をいれた入れた地域や自治体では虐待事件が多くなる(つまりその他の地域では事件として扱われない)等々、周辺課題も本書は指摘しています。

 児童虐待防止法は制定されましたが、「児童虐待は犯罪である」という姿勢に立ち返る意味でも、本書を再読する価値はあるかと思います。

《読書MEMO》
●ター君(6歳)を裸のまま雪に埋めて記念撮影した親(埼玉県富士見市)/3人がかりで大輔ちゃん(5歳)暴行を加えワサビを口に押し込み、タバコを押し付けた(栃木県小山市)-母親も居候先の女もアダルトチルドレン→ほとんどが傷害致死罪。弁護側が親がACであったことを主張することもままある
●児童虐待の種類...身体的虐待/性的虐待/ネグレクト/心理的虐待
●大きなニュースにならない理由...虐待事件で死んでも、損害賠償請求をする人がいない。相談所が事前に把握していたというニュースは報じられにくい傾向
●虐待防止に大きな予算をつけた都道府県ほど虐待事件が多い(顕在化)
●厚生省児童家庭局の98年度のテーマは少子化(育児をしない男を父とは呼ばない)だった。ポスター・CMで5億円投下。
●児童虐待防止法(2001年11月施行)で児童相談所の権限が強化されても、予算や人員不足では動けない。また親の更正や再発防止策は手つかずのまま。アメリカでは虐待した親はケアや教育を受けねばならず、再発した場合は担当職員が資格剥奪されることも。日本では児童相談所の職員が責任を取らされることはない

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