【2332】 ○ 宇野 弘蔵 『資本論の経済学 (1969/11 岩波新書) ★★★★

「●経済一般」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【928】 都留 重人 『経済学はむずかしくない
「●岩波新書」の インデックッスへ 

「資本論」入門と言うより「宇野経済学」入門だが、それを理解するにはまたとないテキスト。

資本論の経済.JPG

       
  宇野弘蔵.jpg 宇野弘蔵(1897 - 1977/享年79)

資本論の経済学 (1969年) (岩波新書)』『資本論の経済学 (岩波新書 青版 B-67)

 かつてノーベル経済学賞候補にもその名が上がったというマルクス経済学者の宇野弘蔵(うの こうぞう、1897-1977/享年79)による、"「資本論」入門"―と言うより "「宇野経済学」入門"と呼んだ方が正しいと思われる本です。

 第1章「『資本論』の経済学」、第2章「マルクス経済学に特有な二つの用語「物神性」と「変態」について」、第3章「理論と実践―経済学と社会主義―」の全3章構成で、第1、第2章は著者が「岩波市民講座」で話した内容がベースになっており、3章は新たに書き下ろしたものですが、講義調で書かれていて、宇野弘蔵の著作の中ではとっつき易い入門書ではないかと思います。但し、それでも(難解で知られる?)「宇野経済学」ということもあって、個人的にも内容的に難解な点も少なからずありました。

 宇野経済学では、本書でも述べられていますが、『資本論』を読み解くにあたって、経済学を社会科学として確立することを目指し、社会主義イデオロギーを理論から排除しており、原理論であるところの『資本論』は資本主義経済の法則を解明するだけで、社会主義への移行の必然性を論証するものではないとしたわけです。このことによって宇野弘蔵は多くのマルクス主義者やマルクス主義経済学者から批判されることにもなりましたが、宇野学派と呼ばれる一派を形成することにもなりました。思うに、『資本論』自体が大方、資本主義経済を読み解くためのものとして読まれているようになって久しいことを考えると、こうした宇野弘蔵のスタンスは今日では強く拒絶されることはないのではないでしょうか。

 本書では第1章で、マルクス経済学の要約し、価値法則、人口法則、利潤率均等化の法則の資本主義の三大法則を解説(但し、何れも"宇野流"の見解を交えたものとなっている)、更に『資本論』との対比でレーニンの『帝国主義論』を取り上げ、『資本論』を原理論、『帝国主義論』を段階論として位置づけ、資本主義経済が19世紀の自由主義段階から20世紀の帝国主義段階に移行しても『資本論』は原理論としての有効性を失わないとしています。

 本書の約半分を占める第1章が、何と言っても本書の"読み所"でしょう。あとは、第3章で「理論」と「実践」を科学とイデオロギー(第2節)、経済学と社会主義(第3節)にそれぞれ置き換えて説明しており、この部分も宇野経済学の特質を端的に表す部分として"読み所"ではないでしょうか(第3章の第2節と第3節の終わり部分は密度が濃かった)。多少難解な部分もありますが、「宇野経済学」を理解するうえではまたとない入門書(乃至はテキスト)ではないかと思います。

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1