【2114】 ○ 船床 定男 (原作:川内康範) 「月光仮面 (第2部:「バラダイ王国の秘宝」第1話)/姿なき殺人 (1958/05 KRT) ★★★☆

「●TVドラマ①50年代・60年代制作ドラマ」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【3110】 近藤 竜太郎 「まぼろし探偵(第17話)/犯人黒星十郎?
「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「●日本のTVドラマ (~80年代)」の インデックッスへ (「月光仮面」)

平均視聴率40%、最高視聴率67.8%。低予算で作られた初期作品のテンポの緩さにレトロ感。

月光仮面 連続テレビ映画.jpg 月光仮面 vhs.jpg 月光仮面 バラダイ王国の秘宝編 dvd.jpg 月光仮面 DVD-BOX3 第2部 バラダイ王国の秘宝.jpg 月光仮面 DVD-BOX3 第2部 バラダイ王国の秘宝-後篇.jpg 
月光仮面 [VHS]」['99年](第二部 バラダイ王国の秘宝篇(全21話)第1話 姿なき殺人/第三部 マンモス・コング篇(全11話)第11話 悪は滅びる/第五部 その復讐に手を出すな篇(全14話) 第14話 天の裁きを収録「月光仮面 バラダイ王国の秘宝編 Disc1 [DVD] TVG-001」['06年]「月光仮面 DVD-BOX2 第2部 バラダイ王国の秘宝-前篇-」「月光仮面 DVD-BOX3 第2部 バラダイ王国の秘宝-後篇-」['08年] 

月光仮面 バラダイ王国の秘宝.jpg 滅亡したバラダイ王国の巨億の財宝の在り処を示す3つの「黄金の鍵」を得るため、王国に敵対したサタン一族の末裔「サタンの爪」が日本在住のアフナリカ・シャバナン殿下宅に押し入って殿下を殺害し、その1つを奪う。鍵の1つは既に「サタンの爪」が持っており、残る1つの在り処も知っているらしい。新聞でも事件は報じられたが、殿下の死は臥せられる。事件現場にいたお手伝いは、サタンの爪を見た恐怖から寝込んでしまい入院、祝探偵事務所の祝十郞(大瀬康一)らは警察と共に彼女から殿下がアルバムを大事にしていたと聞き出し、そのアルバムを調べてみると写真が1枚ない。そこにお手伝いの悲鳴が聞こえ、看護婦が「患者さんが大変です」と駆け込んでくる。祝らが慌てて病室に戻った時にはお手伝いは既に毒殺されていて、看護婦の姿は無かった―。

月光仮面.jpg 「月光仮面」は、KRT(現TBS)と宣弘社が制作し、1958(昭和33)年2月24日から1959(昭和34)7月5日まで放送されたテレビ冒険活劇で、第1部:「どくろ仮面篇」(71話)、第2部:「バラダイ王国の秘宝」(11話)、第3部:「マンモス・コング」(11話)、第4部:「幽霊党の逆襲」(13 話)、第5部:「その復讐に手を出すな」(14話)の全130話から成ります。第1部が放映回数が多く、そのは後減っているのは、第1部は「月金のベルト」で午後6時から10分番組として放映されていたものが第2部から日曜の午後6時からの30分番組となったためです(第3部の途中から午後7時のゴールデン・タイムにスライド)。劇画化もされましたが、あくまでTVの方が先です。
劇画「月光仮面」楠 高治(原作:川内康範)昭和35年7月 少年クラブ

月光仮面 祝十郎.jpg 原作は川内康範(1920-2008/享年88)、月光仮面(配役テロップの出演者のところで"月光仮面 ...?"と出る)の普段の姿である私立探偵・祝十郎は大瀬康一が演じ、その他に、祝探偵事務所の助手・袋五郎八、カボ子を谷幹一、久里千春(資料では日輪マコだが番組クレジットでは久里千春)らが演じています(シーズンによって配役が若干変動した)。

月光仮面  .jpg阿久悠2jpg.jpg 元々、前番組のスポンサーだった武田薬品が番組提供を降りるという話があり、広告代理店である宣弘社(現・電通アドギア)にとっては武田薬品の意向如何によらずその枠は"マストバイ"の状況となり、急遽プロダクションを設立し、番組制作にも乗り出したという経緯で(宣弘社は作詞家・阿久悠(1937-2007/享年70)が1959年の新卒入社から7年間コピーライターとして在籍した会社であり、「月光仮面」を製作していることが志望理由の1つだった)、結局、武田薬品は提供を継続したものの、製作費は超低予算に抑えられました。

月光仮面 大瀬康一.jpg 26歳の若手・船床定男(1932-1972/享年40)の監督への抜擢もそのためで、大瀬康一も当時は大部屋俳優。しかし、蓋を開ければ大人気番組となり、平均視聴率は40%、最高視聴率は67.8%(東京地区)を記録し、当初1クール(3ヵ月)で終わる予定が1年半続くことになりました。高視聴率は続いて「放送時間になると銭湯から子供たちの姿が消える」とまでも言われましたが、月光仮面のマネをして高所から飛び降りて怪我をする子供が相次いだために打ち切られたとのことです(一部では死者も出たとの話も)。大瀬康一は3年後に「隠密剣士」の主役に起用されます。

月光仮面 登場.jpg この第2部の最初あたりは、まだ低予算の影響が残っていて、室内シーンは宣弘社の社長の自宅を使ったりしたそうで、野外シーンもどこかの空き地で撮影したりしている感じで、月光仮面がコンクリート塀の脇から、それまでかくれんぼでもしていたかのように登場するといった緩いテンポ感です。これが第3部の「マンモス・コング」になるとテンポアップし、"身長15メートル"のコングが登場する関係からミニチュアを使った特殊撮影なども行われています(それでも、コングに対する自衛隊の出撃場面などは、自衛隊の観閲式や訓練に便乗して撮影するなどしたという。スタッフには節約癖が身についてしまっていた?)。作品の質としては後の方(第3部以降)がより洗練されているけれど、この第2部あたりのまったり感も悪くないと思います。

サタンの爪.jpg 「サタンの爪」(左写真)の容貌どくろ仮面.jpgは、とにかく顔がデカイという印象で、その上、第1部の「どくろ仮面」(右写真)とあまり変わり映えがしないのが可笑しいです。更に、その「サタンの爪」の名の由来である"爪"は、手袋に"付け爪"を張り付けただけのものに過ぎず、ここまでくると微笑ましい(?)。この「サタンの爪」は、殿下を襲う前に「黄金の鍵」の背景事情を視聴者に丁寧に説明してくれるし、月光仮面と出くわすごとに、お互いに相手を倒す機会であるのに、「いずれ決着をつける時が来るであろう」み川内康範.jpgたいな感じで先延ばししている―でも、これで、視聴者は「次回も観なくては」ということになっていったのだろなあ。川内康範って人は意外と長けたストーリーテラーだったのかもしれません。

川内康範 作詞家、脚本家、作家。(1920-2008/享年88)

 事件の推移を八卦見占いするカボ子にその「占い」の結果をマジで訊く五郎八、勝手に報道規制を敷いてしまう祝十郎(警察のコンサルタント的立場だからいいのか)、逃げた看護婦を(明らかに殺人犯なのに)誰も追わない警察、雨あられのように飛んでくる銃弾がかすりもしない月光仮面―と突っ込みどころ満載です(この"緩さ"にレトロ感が感じられて星半分オマケ)。

 こうなるとフィルムの保存状況が悪くて当初は映像ソフト化が難しいとされていた第1部「どくろ仮面篇」(デジタルリマスターの技術が進んでDVD化された)も観てみたくなりますが、第1部第1話「月光仮面現わる」はマスター・ネガが破棄されてしまって「幻の第1話」となっているとのこと。月光仮面:「バラダイ王国の秘宝」.jpgCSチャンネル「ファミリー劇場」でシリーズが再放映された際に、他話月光仮面第2部 バラダイ王国の秘宝.jpgからのカットや挿絵を組み合わせて、第1話を再現制作し(制作会社は東北新社)、吹き替えは大瀬康一が実際にアフレコを担当しましたが、53年の年月差は大きすぎるように思われ、「幻」は幻のままでいいような気もします。

「月光仮面(第2部:「バラダイ王国の秘宝」第1話)/姿なき殺人」●制作年:1958年●監督:船床定男●企画:小林利雄●脚本:川内康範●音楽:小川寛興●出演:大瀬康一/谷幹一/日吉よしやす/千葉隆三/久里千春/山田のり子/玉島精二/小川純/赤尾関三蔵/オレンジ河野●放送局:KRT(現TBS)●放送日:1958/05/25(評価:★★★☆)
月光仮面第2部 バラダイ王国の秘宝(3枚組) [DVD]」(2016/04)

月光仮面1.jpg月光仮面2.jpg「月光仮面」●演出:船床定男●制作:西村俊一●脚本:川内康範●音楽:小川寛興●原作:川内康範●出演:大瀬康一/谷幹一/布地由紀江/千葉隆三/高塔正康/日吉としやす/山田のり子/武藤英司/大塚周夫/十朱三郎/オレンヂ河野/小川純/高塔正康/久野四郎/河野有紀/小栗一也/高木新平●放映:1958/02~1959/07(全130回)●放送局:KRT(現TBS)

About this Entry

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1