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コンパクトな解説の中で的確に判例を抽出し、分かり易く解説している。増補改訂が望まれる。
岩本充史 弁護士(安西法律事務所)2012年10月6日リーガロイヤルホテル東京
『異動・配転・出向Q&A (労働法実務相談シリーズ3)』
労務行政の「労働法相談シリーズ」(Q&Aシリーズ)の一冊で、215ページに80問のQ&Aを収めており、3千円という価格との対比において数量的にはもう少しQ&Aがあってもいいかなという気もしなくもないですが、「賃金」や「労働期間・休日・休暇」などよりはQ&Aが立てにくい「異動・配転・出向」に絞ってこれだけのQ&Aを扱っているという意味では、むしろ有難いと見るべきでしょう。
3章構成の第1章で「配転をめぐる問題」、第2章で「出向・転籍」を扱っていて、ここまでで70問、更に、第3章には「分割・合併・事業譲渡における雇用関係」をもってきています。
「配転」では、「職種を特定して採用した社員の配置転換は可能か」といったオーソドックスな問いから「職場内結婚をした場合、どちらか一方を他部署・他支店に配転することは問題ないか」といった、法律上の問題と配転命令の問題が含まれる微妙なものまで。
「出向・転籍では、「入社時において予想されない会社への出向命令は有効か」といった就業規則絡みの問いから、「出向先が事実上倒産した場合、出向労働者を当然い出向元に復帰させなければならないのか」といった出向契約の定めによるものまで。
「分割・合併・事業譲渡」では、「会社合併にあたり、新会社の労働条件は合併前・合併後のどちらに変更すべきか」等々。
この分野としては基本的なテーマを扱っているかと思いますが、「賃金」や「労働期間・休日・休暇」ように法令でスパッと適法・違法の答えが出せるもものが少ないだけに、判例の引き方が重要になってきます。その点は、コンパクトな解説の中で可能な限り的確に判例を抽出し、分かり易く解説しているように思いました。
刊行されて5年。増補改訂が望まれますが、その際にあまり価格は上げないで欲しいね。