【1810】 ○ 山田 吉彦 『日本の国境 (2005/03 新潮新書) ★★★★

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沖ノ鳥島は「島」?「岩」? 竹島・北方四島などに関して歴史認識と現実対応を区別している。

日本の国境 新潮新書.jpg 『日本の国境 (新潮新書)』['05年]      山田 吉彦.bmp 山田 吉彦 氏(日本財団)

沖ノ鳥島 排他的経済水域.jpg 全4章構成の内の書第1章で、「海洋国家日本」の基礎知識を概説し、第2章で、著者自らが訪ねた国境の地として沖ノ鳥島、石垣島、大東諸島、根室・羅臼について述べ、第3章で領土紛争の焦点にある尖閣諸島、対馬、竹島、北方領土について述べるとともに、第4章で「日本の海」を守るにはどうすればよいかを考察しています。

沖ノ鳥島1.jpg 第1章を読むと、日本の国土面積は38万平方kmで世界59位であるのに対し、日本の排他的経済水域は447万平方kmで(接続水域を含む)、世界で6位であることが分かり、個人的には、これだけでも新知識として参考になりました。

 著者自身が訪ねた場所では、日本財団が調査団を送った際に著者自身が事務局を務めた、日本最南端の「沖ノ鳥島」に関する記述が、探検記風に最も詳しく書かれていて面白かったです(面白がっている場合ではないか?)

沖ノ鳥島2.jpg 沖ノ鳥島は東西4.5km、南北1.7km、周囲約10 kmの島ですが、高潮時には16cmだけ海上に頭を出すだけであり、但し、この「島」があることで日本は日本全体の排他的経済水域の約1割にあたる40万平方kmの水域を確保しているとのこと。

 仮にこの島が国際法によって「島」では無く「岩」であるとされれば、日本は40万平方kmの排他的経済水域を失うわけで、チタンネットを張って浸食等から防護していますが、満潮時になると直径何mかのその部分だけしか海上に姿を見せないため、これはやはり「岩」だはないかとの印象を抱かざるを得ず、むしろ「岩」を「島」として留めるために様々な検討がなされているといった印象を受けました。

 その他にこの章では、石垣島が、正式な国交の無い中国・台湾間の、中台貿易の中継点(クリアランス基地)となっていて、毎年かなりの入港税(トン税)収入があるといったことも興味深かったです(実際には入港せず、沖に停泊するクリアランス船と石垣税関との間を、船舶代理店の船が書類を持って往復するのだが)。

 領土問題の焦点となっている地域については、尖閣諸島が古来からの日本固有の領土であることを説明する一方で、「竹島」については、韓国の領有の主張が錯誤に基づくものであるとしながらも、実効支配されている今となっては「還らぬ島」になりつつあるとしています。

 北方領土についても、日本の領有主張の正当性を解説しつつも、北方四島からソ連に追い出された日本人が約8,000人なのに対し、現在、択捉・国後島には12,000人のロシア人が住み、市場経済下で生活していることを考えると単純に返還されるのは難しいとして、四島返還のステップ案を提示しています。

 日本財団所属ということで、もう少し強硬な主張かと思ったけれども、歴史認識はともかくとして、問題の最前線にいる人は、現実を見据えたうえでの対応を考えざるを得ないということなのでしょう。

 国民が自らの領土に関心を持つことが、領土防衛の第一歩であることを示唆した本でもあります。

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