「●文章技術・コミュニケーション」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1690】 冷泉 彰彦 『「上から目線」の時代』
P&G礼讃本。「広報」本のきらいあり。
『P&G式伝える技術 徹底する力―コミュニケーションが170年の成長を支える (朝日新書)』
P&Gの人事は、デイビッド ウルリッチが90年代に、GEなど当時成功していた企業の人事部にヒアリングして書いた『MBAの人材戦略』の中で提唱した、「人事の4機能」(①ビジネスパートナー、②チェンジエージェント、③人材管理エキスパート、④社員チャンピオン)を忠実に実践したことで知られています。
何年か前に企業向けセミナーで、かつてP&Gに在籍していた女性による、同社の人事マネジメントの考え方や人事制度に関する話を聞きましたが、その人はP&G在籍時代は営業のマネジャーを務めていて、そうした人が会社の人事についてしっかり語れるところが、いかにもP&Gらしいというか、スゴイなあと思いました。
そうした経験もあって、組織内コミュニケーションの在り方という観点から本書を購入しましたが、第1章で、①3つにまとめる、②「目的」へのこだわりが結果につながる、③「イシュー(論点・課題)シート」で焦点を絞る、という、P&Gの社内におけるコミュニケーションの要諦が紹介されており(これも「3つ」にまとめられていることになる)、一応は参考になりました。
但し、第2章以降は、消費者とのコミュニケーションや、社員に目的を達成させるためのマネジメント、グローバル・コミュニケーションのノウハウが紹介されていますが、殆ど完璧に「企業プレゼンテーション」という感じで、最後の第5章で「なぜ170年以上も成長を続けられたのか」と括られていて、これは「売上高800億ドル、世界80カ国以上に事業拠点を持ち、180以上の国と地域で製品が販売されるグローバル企業」のスゴさをアピールする"宣伝本"だったのかと。
著者は元P&Gの社員ということですが、「広報」部長をしていたのだなあ。しかし、既に会社を辞めているのに、こんな自分がいた会社をとことん褒めちぎった"礼讃本"を書くもの何かなあ。
P&Gの「広報」との繋がりを随所に感じさせるパブリシティのような内容に(朝日新聞社系のメディアへの広告出稿とバーターになっている?)やや辟易させられました(ウルリッチの話が無かったのも不満だが、広報だから仕方がないのか)。