【1588】 ○ 真野 俊樹 『人事・管理職のためのメンタルヘルス・マネジメント入門 (2009/03 ダイヤモンド社) ★★★★

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入門書として読み易く、実務対応に絞って書かれている良書。

人事・管理職のためのメンタルヘルス・マネジメント入門.bmp          真野俊樹 世界一受けたい授業.bmp 真野 俊樹 氏(NTV系「世界一受けたい授業」)
人事・管理職のためのメンタルヘルス・マネジメント入門』(2009/03 ダイヤモンド社)

 本書の著者は、病院、企業、大学など9つの組織に勤務した経験を持つ産業医で、最近はテレビ番組(NTV系「世界一受けたい授業」など)のコメンテーターとしても活躍している現役の内科医ですが、本書は、そうしたマネジメント、企業社員、産業医としての経験と知識をもとに書かれた、人事部・管理者向けの「メンタルヘルスの対応書」です。

 「世界一受けたい授業」は個人的には殆ど見ない番組なのですが、たまに見た際に、同じ精神科医でもちょっと偏った考えの人も出演したりしていたのでどうかなと思ったけれども、本書に関してはマトモでした。

 前半は"基礎知識編""応用知識編"で、「うつ」という病気を事例により解説するとともに(併せて、適応障害や人格障害についても解説されている)、なぜ「できる人」がうつになるのかを解き明かし、社員がうつ病ににならないようにするために、人事あるいは管理職が知っておくべきことは何か、また、社内・社外の資源をどう使うかなどが示されてされています。

 後半は"個別対応編""予防策編"で、メンタルヘルス問題社員に何をすべきか、その具体例と対処法を示すとともに、うつが出にくい会社を作るにはどうすればよいのか、社員のメンタルを強くするモチベーション・マネジメントや、予防対応としてのメンタルマネジメントなどについてが書かれています。

 本書の第一の特長は、読み易さにあるのでは。課題ごとに項目を1ページぐらいずつに区切って、それぞれに大きな活字でポイントを要約した見出しがつけられていて、本文も平易な言葉で書かれているため、前提知識があまりない一般の読者でも、読むのにそれほど苦労はしないと思います。

 専門書によくある「現場から見ると無理な注文」がなく、現時点で「対応する側ができること」に絞ってあり(従って、本書での対応策は「適応障害」を主に対象としており、重篤なうつ病の場合は早期に専門家に委ねるよう指導されている)、また、必要に応じて項目ごとに、これは人事部の役割なのか管理職の役割なのかを記してあるのも親切です。

 入門書でありながらもやや驚かされたのは、産業医とのコミュニケーションが"死活を握る"と説く一方で、病院勤務に疲れたので「産業医でもするか」とか、「産業医しか」できない医師、いわゆる「でもしか」産業医がいるかもしれないという指摘で、そうした現状への対応として、産業医の選び方のポイントも書かれています。

 また、うつ病対策に効果的なのが「カウンセリング機能の充実」であるとしていますが、大企業ならともかく中小企業ではなかなかそこまでは難しいのではないかと思っていたのが、実は健保組合などが専門の医療機関と契約しているケースが多く、対面のみでなく電話でも、また、土日や夜も対応してくれるとのことで、こうしたことは、人事や総務の仕事をしている人にも知られていないケースが多いのではないかと思われます。

 うつが出にくい職場を作るにはどうすればよいのかということを、「プロフェッショナルタイプによい職場」と「安定を求めるタイプによい職場」に分けて解説しているのが興味深く、「目標達成した人は、報酬よりも言葉の評価を待っている」というモチベーション論にも頷かされました。

 本書は対策本としての実務書の要素が強いため、巻末に、知識を補うための参考書籍のリストを掲げているのも親切で、そのカバーしてるジャンルは広く、人事担当者ならばこのうちの何冊かは既に読んだことがあるとは思われますが、是非、この中から何冊かを選んで読み進んでみることをお勧めします。

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