【1350】 △ 恩田 陸 『中庭の出来事 (2006/11 新潮社) ★★☆

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構成が複雑すぎて十分に入り込めなかったというのが正直な感想。

中庭の出来事5.JPG    中庭の出来事.jpg中庭の出来事』[単行本/'06年] 
中庭の出来事 (新潮文庫)』['09年]

恩田 陸 『中庭の出来事』_7938.JPG 2007(平成19)年度・第20回「山本周五郎賞」受賞作。

 瀟洒なホテルの中庭で、気鋭の脚本家が謎の死を遂げ、容疑は、パーティ会場で発表予定だった「告白」の主演女優候補3人に掛かる。警察は女優3人に脚本家の変死をめぐる一人芝居『告白』を演じさせようとする―という設定の戯曲『中庭の出来事』を執筆中の劇作家がいて―。

 小説内の現実(中庭にて)、『中庭の出来事』という劇中劇、『告白』という劇中劇中劇という3層の"入れ籠構造"の作品で、それに、オーディションの最中に起きた主演候補女優の毒殺事件と、ビルの谷間の公園で起きた就職活動中と思われる女性の突然死事件、これら3つの事件の関係を推理する推理小説好きの脚本家とその友人の会話(旅人たち)が絡むという、凝りに凝った構成です。"犯人探し"&"入れ籠構造"の両方の謎解きが楽しめる作品と言いたいところですが、あまりに複雑過ぎて十分に入り込めなかったというのが正直なところです。

去年マリエンバートで dvd 2009_.jpg 終盤、一旦は両方の謎の解明に向かうかのように見えましたが、小説内の現実と思われた部分は実は芝居の一環であったようであり、結局、謎の一部は謎のまま残されたという感じもして、虚実皮膜の味わいと言えばそうなのかも知れませんが、全部がお芝居(脚本の内)でしたみたいな結末には、やはり不全感が残りました。作者には『夏の名残の薔薇』という、アラン・レネ監督の映画「去年マリエンバートで」('61年/仏・伊)をモチーフにした作品がありますが、この『中庭の出来事』も、敢えて謎を残したままにしているのは、同じく「去年マリエンバートで」が意識されているからだと思われます(タイトル自体がまさにこの映画を示唆している)。

 山本周五郎賞受賞作ですが、結構難しい作品が選ばれたものだという気がします。リフレイン構成自体はともかく、繰り返される1つ1つの話がやや冗長であり、しかも最後は"入れ籠構造"自体も韜晦させてしまったところからすると、演技と素の間を揺れ動く女優の心理が主テーマだったのかなあと。

去年マリエンバートで  チラシ.jpg去年マリエンバートでes.jpg「去年マリエンバートで」●原題:L'ANNEE DERNIERE A MARIENBAT●制作年:1961年●制作国:フランス・イタリア●監督:アラン・レネ●製作:ピエール・クーロー/レイモン・フロマン●脚本:アラン・ロブ=グリエ●撮影:サッシャ・ヴィエルニ●音楽:フランシス・セイリグ●時間:94分●出演:デルフィー去年マリエンバートで ce.jpgヌ・セイリグ/ ジョルジュ・アルベルタッツィ(ジョルジョ・アルベルタッツィ)/ サッシャ・ピトエフ/(淑女たち)フランソワーズ・ベルタン/ルーチェ・ガルシア=ヴィレ/エレナ・コルネル/フランソワーズ・スピラ/カ去年マリエンバートで 記事をクリップする_3.jpgリン・トゥーシュ=ミトラー/(紳士たち)ピエール・バルボー/ヴィルヘルム・フォン・デーク/ジャン・ラニエ/ジェラール・ロラン/ダビデ・モンテムーリ/ジル・ケアン/ガブリエル・ヴェルナー/アルフレッド・ヒッチコック●日本公開:1964/05●配給:東和●最初に観た場所:カトル・ド・シネマ上映会(81-05-23)(評価★★★?)●併映:「アンダルシアの犬」(ルイス・ブニュエル)

 【2009年文庫化[新潮文庫]】

《読書MEMO》
いるかHotel第18回公演「中庭の出来事」(2015・神戸)

中庭の出来事  01.jpg中庭の出来事  02.jpg

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This page contains a single entry by wada published on 2010年3月20日 06:57.

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