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「●日本のTVドラマ (90年代~)」の インデックッスへ(「銀行 男たちのサバイバル」)
わかりやすい展開でクライマックスの合併推進派と反対派の対決へ持っていく企業ドラマ。
日本放送出版協会(単行本ソフトカバー版)/『銀行 男たちのサバイバル』(NHKライブラリー)['97年]/文春文庫 〔'00年〕/NHKドラマ「銀行 男たちのサバイバル」橋爪功・小林稔侍・中村敦夫 [Kindle版] 『銀行男たちのサバイバル』
バブル崩壊後の不良債権に喘ぐ都市銀行が舞台。独立系都銀中位行である三洋銀行の名古屋支店長・長谷部、総合企画部長・石倉、業務推進部長・松岡の3人は同期生だが、ある日、同期トップを走っていたエリート支店長が過労死し、それとほぼ時を同じくして、ライバルである富蓉銀行との合併話がもちあがり、期せずして3人とも合併プロジェクトのメンバーとなる。そのことにより重役レースの最前線に躍り出た彼らは、合併推進派と反対派の間で揺れるが、その背後には、現・旧の頭取のそれぞれの思惑や監督官庁・大蔵大臣の意向も絡んでいる―。
'93年に単行本刊行されたもので、銀行合併の画策とそれに対する反攻を描いたものでは、高杉良の『大逆転!-小説三菱・第一銀行合併事件』('80年)などがありましたが、冒頭「貸し渋り」の場面から始まるこの小説は、バブル崩壊が'91年4月であったことを思うと、かなり切実感があります。
歴史小説などもこなす作者ですが、出身が東京相和銀行(現・東京スター銀行)ということもあり、やはり銀行モノが原点(東京相和はかつてトップがワンマンだったことで知られ、バブリーなホテルなども経営していましたが、バブル崩壊で破綻した)。
キャラクターがくっきり描き分けられていて、同期の仲間意識とライバル意識の混ざったような関係も自然だし、サバイバルレース的な話ではありますが、登場人物のうちの何人かは、組織に囚われない自分なりの生き方を選択していているのがよく、読後感も悪くありません。
わかりやすい展開でクライマックスの合併推進派と反対派の対決へ持っていく筆の運びは、経済小説というよりは企業ドラマという感じでしょうか。ただし、ラストは、その後さらに進んだ銀行業界の再編を暗示していて予言的でもあります。
'94年1月にNHKでドラマ化されていて(この小説自体がドラマ化を前提に書かれたもの?)、主人公の長谷部を小林稔侍、切れ者の総合企画部長・石倉を中村敦夫、日和見的な業務推進部長・松岡を橋爪功がそれぞれ好演し、ラストで思わぬセリフを口にする副頭取は児玉清、女性初というMOF担は黒木瞳がやってましたが、それらもハマっていました(「MOF担」そのものは、官民癒着を助長するものとして廃止されたぐらいだから、ややキレイに描かれすぎている感じもあるが...)。
「銀行 男たちのサバイバル」DVD(廃盤)
「銀行 男たちのサバイバル」●演出:岡崎栄/原田和典●制作:小林由紀子●脚本:仲倉重郎●音楽(タイトルテーマ曲):五輪真弓「空」●出演:小林稔侍/橋爪功/中村敦夫/黒木瞳/鈴木瑞穂/児玉清/河原崎建三/穂積隆信/伊藤真/夏目俊二/伊藤栄子/吉野由樹子/桂春之助/古柴香織/杉山亜矢子/大寶智子/青空球一/倉石功●放映:1994/01(全3回)●放送局:NHK
【1997年ソフトカバー版[日本放送出版協会]/2000年文庫化[文春文庫]】