【606】 ○ ナンシー関 『ナンシー関 大コラム (2004/02 世界文化社) ★★★★

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テレビ芸能人の分析に長けていた著者の真骨頂。

ナンシー関大コラム.jpg 『ナンシー関 大コラム』 (2004/02 世界文化社)

 著者が亡くなった後に、新進・既存のコラムニストたちが辛口ぶりを発揮すると「ナンシー関の後継か」などと言われることがありますが、これは一種の期待願望であって、死後も次々と出版されている著者自身の書いたものを読むと、コレを超えるのは容易ではないという気がします。

 '04年に順次刊行された「大コラム-テレビ芸能人編」「超コラム-テレビCM編」「激コラム-世情編」というシリーズの1冊ですが、「テレビ芸能人編」であるこの本が一番面白かった。と言うか、「テレビCM編」「世情編」となるにつれて"意外と"さほど面白くなくなってきました。

 テレビ芸能人・文化人を見ていて、何か感じる違和感やウソ臭さの背後にあるものを鋭く見抜くとともに、それを的確な言葉で表現してくれていたなあと。やはりこの点が著者の真骨頂ではなかったかと思います。
 文芸評論家の鹿島茂氏は彼女の面白さを、フローべールの『紋切型辞典』(岩波文庫)に近いと言ってましたが、これって大絶賛しているということですね(鹿島氏はフランス文学者でもある)。

 そして多分、テレビに映し出されるものに対する眼力を曇らせないようにするために、自らの私生活における文化芸能人的なものを(そうした人種との接触を含め)、極力排していたのではないかと思います。一種、"節制"生活のような感じで。

 ちょっと興味深いのは、こき下ろすばかりでなく、ジャイアント馬場を「葉巻が似合う稀な日本人」としたり(プロレス雑誌に寄稿したものではありましたが)、それから、大食い選手権のチャンピオンに男女を問わず感嘆の意を表していて、また違った一面を知った気がしました。
 多くの面で"節制"しているわけだから、これぐらいは自分の嗜好を出しちゃってもいいのかも...。

《読書MEMO》
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