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筒井、老いたか?ホラーとしてはヌルく、ミステリーとしてはユルい。
『恐怖』 (2001/01 文藝春秋) 『恐怖 (文春文庫)』 〔'04年〕写真:杉山拓也
作家の「俺」こと村田勘市が住む姥坂市で、ある日、画家の町田美都が殺され、続いて建築評論家の南條郁雄が殺されるという連続殺人事件が起きるが、たまたま町田の他殺死体の第一発見者となった「俺」は、犯人の狙いはどうやら町に住む文化人を皆殺しにすることにあり、次に殺されるのは自分だという強迫観念に囚われ、その恐怖から次第に狂気へと追いつめられていく―。
恐怖小説かと思って読んでいくと実は、それこそタイトル通り...、という感じなのですが、同時に恐怖小説としても読める。
そのあたりを面白いと見るか中途半端と見るかで評価が割れるかもしれません。
個人的にはやはり、往年の作者の少ない紙数でたたみかけ読者を奈落へ突き落とすような迫力を思い起こすと、この小説はホラーとしてはヌルく、ミステリーとしてはユルいという気がします。
恐怖小説として成功しなければ、"メタ恐怖小説"としても成功しないのではないかと。
そう言えばかつての筒井作品には、表立って二重構造にしなくとも、"メタ恐怖小説"になっていたものが多かったような...。
【2004年文庫化[文春文庫]】