【439】 ○ 高杉 良 『会社蘇生 (1987/05 講談社) ★★★☆

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会社更生の手続きがどう行われるかを知るテキストとして読める小説。

会社蘇生 高杉良.jpg  高杉 良 『会社蘇生』.jpg会社蘇生.jpg 『会社蘇生』新潮文庫.jpg高杉 良 『会社蘇生』新潮文庫.jpg
会社蘇生』['87年/講談社]『会社蘇生 (講談社文庫)』['88年] 会社蘇生 (新潮文庫)』['10年]
新装版 会社蘇生 (講談社文庫)』['19年/講談社文庫]
高杉良 『会社蘇生』.jpg 会社更生法の手続きが開始されれば、裁判所が選んだ管財人が会社に来て事業経営にあたり、管財人は通常は弁護士である―。知識として知っていても、弁護士が経営陣と入れ替わるなんて、一般にはちょっとイメージしにくいのではないでしょうか。

 本書は、商社の倒産から再建までを、管財人となった弁護士を主人公に描いた小説ですが、「宝石・カメラ・スポーツ用品を扱う商社」という点から「総額1100億円もの負債を抱え倒産」という点まで、'84年に倒産した大沢商会(後に西武流通グループの支援を受けて再建)と同じです(主人公のモデルは管財人の三宅省三弁護士)。

 会社更生法は'02年に改正され手続きは多少簡便化されましたが、管財人というのが何をやるのかを理解する上では今でも十分テキストとして使える小説かも知れません。

 会社が経営難にあるのを知りながらも入社を希望する学生がいたという話などはいい話だけれども、実録風である分、やや人物の描き方にはパターン化されたものを感じました。しかし、外資系企業との商品ブランドの商権維持をめぐる攻防の様子などは熾烈で、この場合の管財人の仕事は商社のトップマネジメントが日々やっている交渉ごとと同じで、弁護士がこういうことまでやるのだと改めて実感させられました。

 ただし、民事再生法がスターとして、中小企業だけでなく、大会社も「民事再生」を申し立てることが多いようです。会社更生法では旧経営陣は全員クビですが、民事再生法では退任しないことも可能です。こういう小説を読むと、旧経営陣には辞めてもらった方がスッキリするケースもあるのではないかと思ったりして...。

 さらに労働者サイドに立てば、会社更生法では未払い賃金が債権担保されるのに対し、民事再生法では労働債権の確保が難しく、また、本書にあるような労働組合などとの交渉手続きも、「民事再生」の場合には充分に行われないまま整理解雇に踏み切ったりするケースもあるなど、労働者保護の観点が希薄なところも気がかりな点です。

 因みに、この作品は'88年にテレビ朝日系列で「あざやかな逆転 大会社が甦る日」というタイトルで林隆三主演で単発ドラマ化されていますが、個人的には未見です。

【1988年文庫化・2019年新装版[講談社文庫]/2010年再文庫化[新潮文庫]】

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This page contains a single entry by wada published on 2006年9月10日 00:02.

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