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現代の男性像を探るうえで好著かも。
『実録 男性誌探訪』('03年/朝日新聞社) 文庫改題 『麗しき男性誌』 文春文庫
雑誌『AERA』に連載していた「Men's magazine walker」に加筆し、再構成して単行本化したもの。
著者は以前に、『あほらし屋の鐘が鳴る』('99年/朝日新聞社)の中で部分的に「女性誌」批評をしていましたが、今度はそれに対応するようなかたちでの「男性誌」批評になっていて、丸々1冊このテーマで本になってている分、読み応えありました。
「週刊ポスト」は1冊の中に"知的パパ"と"エロ親父"同居しているとか(確かにネ)、「文藝春秋」の「同級生交歓」は、社会階層の何たるかを如実に教えてくれる企画であるとか、「サライ」(ペルシャ語で「宿」の意味らしい)は、春夏秋冬、飯飯飯、人間最後は食欲であることを教えてくれるとか、「日経おとなのオフ」は「失楽園2名様ご案内」って感じだとか、「エスクァイア」は男性用の「家庭画報」であり、脱亜入欧魂に溢れているとか、「BRIO」は「ヴェリイ」の男性版で世田谷か目黒のコマダムの旦那たち向けであるとか、「LEON」(イメキャラはP・ジローラモ)の読者はモテたいオヤジであるとか―、とにかく笑わせてくれますが、ひやっとさせられる人もいるのではないかと思ったりして...。
スポーツ誌「ナンバー」の記事の書き方が「従軍記者」風であるという指摘は鋭いと思いましたし、デート・マニュアル誌だった「ホットドッグ・プレス」はいつの間にかファッション誌になっていたのだなあ。
結局、時代の流れに合わせるのも大事だけれど、切り口のようなものがはっきりしている方が共感を呼ぶのかもしれないという気がします(「ナンバー」は残っているけれど、「ホットドッグ・プレス」は本書刊行の1年後に廃刊!)。
釣り専門誌でも〈バス〉と〈へらぶな〉では全然違うんだなあとか初めて知りましたが、「鉄道ジャーナル」や「丸」などのオタク系の雑誌含めて、読んでいる人たちは、サークルの中にいる人の間では知識や技量の差にこだわるけれども、サークルの外にいる人からどう見られるかということは関係ないんでしょうね。
ある意味、現代の男性像を探るうえで好著かもしれないと思ったりもしました。
【2007年文庫化[文春文庫(『麗しき男性誌』)]】