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「●岩波新書」の インデックッスへ ○日本人ノーベル賞受賞者(サイエンス系)の著書(利根川 進) 「●「朝日賞」受賞者作」の インデックッスへ(利根川 進)
文学や哲学はいずれ脳科学に吸収されてしまう? 教授自身にまつわる話がかなり面白い。
利根川 進 博士
『私の脳科学講義 (岩波新書)』 〔'01年〕
ノーベル賞学者(1987年ノーベル生理学・医学賞受賞)であるのに、海外で活躍する期間が長かったゆえに岩波新書にその著作が入っていないのは...ということで、岩波の編集部が口述でもいいからと執筆依頼したかのような印象も受けないではないのですが、本題の脳科学講義もさることながら、利根川教授自身にまつわる話が面白かったです。
京都大学では卒業論文を書かなかったとか、バーゼルの研究所で契約切れで解雇されたが居座って研究を続けたとか、英語の同じ単語の発音の間違いを米国育ちの3人の子どもが3歳になるごとに指摘されたとか...。
今の著者の夢は、自分の研究室からノーベル賞学者を出すこと―。"日本人から"でなく"自分の研究室から"という発想になるわけだ。
著者の考え方の極めつけは、巻末の池田理代子氏との対談の中の言葉(利根川教授はこの対談の中で、池田氏が40才を過ぎてから音大の声楽科へ入学し(この人、音大に通っている時に、マンションの同じ棟に住んでいたことがあった)、イタリア語を勉強をし始めてモノにしたことを大変に稀なケースだと評価していますが、利根川氏の理論から言うとまんざらお世辞でもないみたい)。
利根川氏はこの対談の中で次のように述べている―。
―文学や哲学はいずれ脳科学に吸収されてしまう可能性がある、と。
ほんとにエーッという感じですが、以前、立花隆氏に対しても同じようなことを言っていたなあ(立花氏もちょっと唖然としていた)。
世界中の脳科学者の中には同じように考えている人が多くいるらしく、一方それととともに、こうした考え方に対する哲学者らなどからの反論もあるようです(知られているところでは2005年に来日した女性哲学者カトリーヌ・マラブーなど)。
《読書MEMO》
●抗体は一種のタンパク質で、B細胞(Bリンパ球)がつくる(26p)/抗体と抗原はいわば鍵と鍵穴の関係(27p)
●バ-ゼル研究所で契約切れで解雇されたが、研究を続けた(30p
●多様性発現とダーウィン進化論の類似(32p)
●カスパロフVS.ディープ・ブルー(54p)
●rice(米)とlice(しらみ)の発音の違いを3歳の子供に指摘される(60p)
●海馬のどの部分に記憶と想起の部位があるかを、ノックアウトマウスで調べた
●夢は自分の研究室からノーベル賞学者を出すこと
●文学や哲学はやがて脳科学に吸収される