【356】 ○ 野本 陽代 『カラー版 ハッブル望遠鏡の宇宙遺産 (2004/10 岩波新書) ★★★★

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望遠鏡の修理打ち切り? 本当にこれらの写真は"ハッブルの遺産"になってしまうのか。

カラー版 ハッブル望遠鏡の宇宙遺産.jpgカラー版 ハッブル望遠鏡の宇宙遺産 (岩波新書)swap.gif

 岩波新書の「カラー版ハッブル望遠鏡が見た宇宙」シリーズの3冊目ですが、美しい天体写真の数々には、ついにここまできたかと思わせられる一方、この宇宙望遠鏡が使えなくなるかも知れないというのは本当に残念に思います。

 「ハッブル・ヘリテッジ」は"地球遺産"に対する"宇宙遺産"という意味合いでのNASAのネーミングですが、著者の指摘のように、この宇宙望遠鏡が使えなくなれば、これらの写真は"ハッブルの遺産"になるという意味にもとれます。

 なぜハッブル望遠鏡が存亡の危機にあるのかは、本書の4章にこの望遠鏡の歴史と併せて述べられています。
 つまり、宇宙望遠鏡の軌道と国際宇宙ステーションの軌道が一致していないため、望遠鏡の修理保全がたいへんであるとのこと。
 今までこの望遠鏡を守るために何人もの宇宙飛行士が命を賭けてきたことに感動するとともに、長期間に及び、その間に不測の事態がまま起こる宇宙計画の難しさというものを知りました。
 
 ただし、本書出版後しばらくして('04年12月)、全米科学アカデミーは、老朽化が進むハッブル宇宙望遠鏡の改修をめぐり、「スペースシャトルで飛行士を送って改修するのがベスト」という報告書をまとめています。 
 ロボットによる改修構想もあったようですが、「技術面で確実性に欠ける」とし、「ハッブル望遠鏡の価値を考えると、有人飛行による改修はリスクを負うに値する」と結論づけています。

 全米科学アカデミーはNASAに勧告する立場にあり、ハッブル望遠鏡の部品を交換しないと望遠鏡は3,4年後に使えなくなるとしていますが、その補修のためには国際宇宙ステーション向けとは別にスペースシャトルを打ち上げなければならないというのは、本書の内容とも符号するところで、こうなると人命問題だけだなく、費用問題、政治問題など色々絡んでくるなあ(素人目にもハッブル望遠鏡は国際宇宙ステーションよりは軍事的効果はないように思えるし)。

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