【355】 ◎ 佐治 晴夫/佐藤 勝彦 『宇宙はすべてを教えてくれる―未知なる「知」への探求 タイムマシーンから地球外生命体まで』 (2003/10 PHP研究所) ★★★★☆

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2人の物理学者の興味深い考察が随所に。

宇宙はすべてを教えてくれる.jpg 『宇宙はすべてを教えてくれる―未知なる「知」への探求 タイムマシーンから地球外生命体まで』 〔'03年〕

 佐治晴夫(理論物理学)、佐藤勝彦(宇宙物理学)両氏の対談形式ですが、宇宙論から始まって、教育論、進化論、知性の意味、時間論と話題は駆けめぐり、最後にまた宇宙へ。自らの専門に固執しない自由な対談は、「知」への探究意欲を感じます。

 と言っても、佐藤氏の「インフレーション理論」や佐治氏の「f分に1ゆらぎ理論」の話に多少の説明を要しているぐらいで、メガネ屋でどうして鏡に映った逆向きの顔を見て納得しているのか? 快晴の空はなぜ気持ちがいいのか?といった素朴かつ身近な切り口から、認知論や進化心理学などを語っています。

 時間が循環しているとしたら人間の自由意志はどうなるかとか、ETと遭遇しないのは高度な知的生命体は短い期間に滅びるからではないかとか(何となく納得)、興味深い考察やうんちくが随所に。

 宇宙について知ることは、単に知識として知ることでなく、鳥瞰的に自分の位置づけを知ることだという両者の考えに共鳴しました。

《読書MEMO》
●【佐治】眼鏡屋にいって鏡に映る顔は、他人が見る顔ではない-顔をデジカメで撮ってパソコン上でフレームわかける合成画像方式の店がある(25p)
●【佐治】鳥の目【佐藤】宇宙について知ることは、単に知識として知ることではない(28p)
●「ミトコンドリア・イブ」...10万年前のアフリカに(44p)
●【佐藤】量子論ではタイムマシンは可能、親殺しのパラドックスは、その時点で別の宇宙が分離いしていくと考える(別の宇宙へ行って別のお母さんを殺しただけ)(55p)
●【佐藤】インフレーション理論...空間自体の真空のエネルギーでミクロの極小宇宙が急激に膨張、インフレーションが終わると真空エネルギーが熱エネルギーに変わり、火の玉宇宙、ビッグバンへ(64p)
●【佐治】ドーキンスによると戦争の原因は集団帰属意識【佐藤】長谷川訳書によると殺人原因の最多は酒場の口論(雄の虚勢←メスの獲得)(102ー104p)
●【佐藤】快晴の青空がいい訳を進化心理学で説明(144p)
●【佐治】f分の1ゆらぎ...半分は予測できて半分は予測できない変化の度合い(153p)
●【佐藤】因果のループ...時間が循環しているとする場合、人間の自由意思はどう説明?(自由意思と思っているものも何かに決められている、または時間が枝別れする(165p)
●【佐治】本川達雄の動物の時間論(179p)
●【佐藤】カミオカンデ゙の目的は陽子崩壊の確認(187p)
●【佐藤】高度な知的生命体は100か〜1000年程度で滅びる?(201p)

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This page contains a single entry by wada published on 2006年9月 2日 00:23.

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