【341】 ○ 中村 修二 『大好きなことを「仕事」にしよう (2004/07 ワニブックス) ★★★★

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「●働くということ」の インデックッスへ ○日本人ノーベル賞受賞者(サイエンス系)の著書(中村 修二)

「松井選手を監督にするのが日本型処遇」だと批判。過激だが示唆に富む。

大好きなことを「仕事」にしよう.jpg大好きなことを「仕事」にしよう』〔'04年〕 成果を生み出す非常識な仕事術.jpg成果を生み出す非常識な仕事術

 青色発光ダイオードの開発者・中村修二氏の本で、たまたま図書館でみかけて借りてみたら結構面白かったです。

 本書刊行後ですが、'04年の長者番付で外資系投資顧問会社に勤めるサラリーマンがトップになったという報道がありました。
 中村氏は本書で、「アメリカの評価基準はお金である」と断言しています。
 彼に言わせれば、例えばメジャーリーグで松井秀樹選手が活躍すれば年俸を上げる。
 ビジネスの世界も同じであると。
 ところが日本では、いい仕事をしたら役職を上げる。
 これは松井選手をコーチや監督にするようなものだと言っています。
 この本は一応、小学校高学年向けになっていますが、ビジネスパーソン向けかと思ってしまいます。

 青色発光ダイオード開発の裏話も興味深いのですが、日亜化学工業を辞めてアメリカへ渡ったのが46歳のとき。
 意外と遅かったのだなあという感じで、アメリカで著者が「20年同じ会社に勤めていた」と言うと、アメリカ人から「そんなにいたら飽きてしまうのではないか」と驚かれたという話が『成果を生み出す非常識な仕事術』('04年/メディアファクトリー)に紹介されていますが、このあたりにも、渡米してアメリカナイズされた彼にとっての、元いた会社に対するルサンチマン(怨念)の源があるのかもと思ったりもします。

 「一般教養なんて無理に教える必要はまったく無い」とか、個々の主張は過激で賛否両論あるかと思いますが、氏が自身の歩んできた道を率直に振り返って、後に続く世代には出来るだけ後悔しない生き方をして欲しいという気持ちは伝わってきました。

 単に、「特許裁判前のアジテーション活動としてこの類の本を書きまくっているのだ」という先入観で、この人の一般向けの著作を切り捨ててしまう人がいるのはモッタイナイ感じがします(この裁判は、'04年1月に東京地裁が日亜化学に対して中村氏に200億円を支払うよう命じたものの、'05年1月に東京高裁において日亜化学側が約8億4千万円を中村氏に支払うということで和解が成立した)。

 子ども向けに書かれたものですが、主張がはっきりしていて、毒にもクスリにもならないような本よりはよほど示唆に富んでいると思いました。

《読書MEMO》
中村修二 氏 - コピー.jpg中村修二 ノーベル賞2.jpg中村 修二 氏 2014年(平成26年)世界に先駆けて実用に供するレベルの高輝度青色発光ダイオードや青紫色半導体レーザーの製造方法を発明・開発した功績により赤崎勇氏、天野浩氏らと共にノーベル物理学賞受賞。

  
   
   


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This page contains a single entry by wada published on 2006年9月 1日 22:42.

【340】 ○ 池田 清彦 『やぶにらみ科学論』 (2003/11 ちくま新書) ★★★☆ was the previous entry in this blog.

【342】 ○ 加古 里子(かこ さとし) 『小さな小さなせかい―ヒトから原子・クォーク・量子宇宙まで』 (1996/03 偕成社) ★★★☆ is the next entry in this blog.

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