【061】 △ 清水 佑三 『逆面接―たった10分で人を見抜く法』 (2003/12 東洋経済新報社) ★★☆

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事前準備が可能なら、プライオリティ判定材料として使える程度では?という気もする。

逆面接.jpg 『逆面接―たった10分で人を見抜く法』 shimizu.jpg 清水 佑三 氏(日本エス・エイチ・エル社長)

 従来の面接(著者は「単純面接」と言っている)では面接官が質問し応募者が答えるが、応募者が用意周到にりっぱな回答を用意してきた場合など、面接官が感心してしまい、応募者の資質や本音を見抜けないで面接が終わってしまうことがあると―。
 そこで著者が提唱するのが、応募者に質問させ、その質問力から応募者の資質や本音を見抜こうという「逆面接」ですが、著者が言うほどに特段の効果があるのか、個人的にはやや疑問です。

 「逆面接」的なことは、通常の面接でも、面接の最後の場面などで行われており、それは、応募者の資質(頭の回転の速さ)や企業に対するプライオリティ(本音の優先度)を推し量るためのものであったり、応募者に対して採用側が対等の関係にあることをアピールするためであったりしますが、それなりに意味があると思います。
 ただし「逆面接」の本来の効果は、応募者にとっての意外性に依るところが大きく、これは「単純面接」での採用側の質問についても言えることで、なんら「逆面接」に限ったことではありません。

 「逆面接」を面接の中心に据えて実施した場合、そういうやり方をあの企業では行っているという情報が流れれば、結局は面接官は、応募者が用意してきた質問と、何故自分がその質問をするのかという口上を長々と聞かされることになりかねません(これを避けるには理屈上は、筆記試験と同様に1日で全員に対し実施するしかない)。
 応募者の自己紹介や志望理由が面接官にとってしばしば単調に聞こえるのは、予め用意されているからであり、それと同じことが「逆面接」にも充分起こり得ます。

 ですから、「逆面接」の効果が現実にあるとすれば、もちろん頭の回転の速さも判るかも知れませんが、むしろ、質問が途切れないように、どれだけ「その企業の面接だけのための"準備"をしてきているか」を見ることにより、企業に対するプライオリティを探ることができるということではないでしょうか。
 
 本書の中では、「コンピテンシー面接」についてこれまであまり指摘されてこなかった問題点、つまり手法として体得することの困難さを的確に指摘しています(この部分は大いに賛同)。
 しかし、「逆面接」の場合は「面接官に負荷がかからない」とか「性格が悪い人」が面接官に向くなどの主張は、現実から乖離した詭弁またはレトリックであると思います。

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This page contains a single entry by wada published on 2006年8月13日 12:21.

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