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組織論になっていない。啓発書としては尤もなことばかりだが、目新しさに欠ける。
『すべての組織は変えられる (PHPビジネス新書)
』['15年]
Amazon.comでのレビュー評価が比較的高かったのでつい買ってしまいましたが、買ってから「リンクアンドモチベーション」の執行役員の人が書いたものだということに気づきました(まさか、帯に推薦文を書いている人の会社に勤務している人の本であろうとは)。ただ、"推薦人"である人の本は書店で立ち読みしたことしかなかったので、まあこれを機会に読んでみるのもいいかと...。
書かれていることは、啓発的で尤もなことばかりですが、タイトルからするに、著者自身は「組織論」のつもりで書いていると思われるものの、実際に組織全体の施策を説いている部分は終章の数ページだけではなかったでしょうか。
例えば、「陰口や悪口がなくなるだけで組織は激変する」とありますが、これって「組織論」とは言えないのでは。「気まずいメンバーこそ、呑みに誘え」とか、リーダー論、部下コミュニケーション論だなあと。"メソッド"と言うほどのものでもなく、殆どこれまで幾多もあった自己啓発書の世界と変わらないと言っていいかも。内容的に目新しさはありませんでした。
紹介されているマズローの欲求階層説などは、モチベーション理論でしょう。また、モチベーションの高さは「目標の魅力」×「達成可能性」×「危機感」で決まるとしていますが、これって、ビクター・ブルーム(V.Vroom)の、モチベーションの高さは「対象の魅力度」×「達成への直結度」×「実現可能性」で決まるとした「期待理論」を自社流にアレンジしたものでしょう。こうした亜流の理論から入るよりも、本来の「期待理論」を押さえておいた方が読者にとっては良いように思うのですが、どうでしょうか。著作権の無いことをいいことに、既存理論の一部を改変して、あたかも完全に自社オリジナルの理論のように見せるやり方というのは(多くのコンサルティング会社がやっていることだが)好きになれません。
「リンクアンドモチベーション」系の本と言っていい? Amazon.comレビューの高評価から見て、嵌る人は嵌るのだろなあ。個人的には、組織論にもなっていないし、目新しさにも欠け、読んでもあまり得られるものはないように思いましたが、一定の「固定客」がいるのでしょう。