「●労働法・就業規則」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1602】 土田 道夫/山川 隆一/大内 伸哉/野川 忍/川田 琢之 『ケースブック労働法 [第6版]』
顧問先の経営者に、相手方の誤解が解ける様に説明するうえでは、参考になる。
『今すぐ捨てたい 労務管理の大誤解48』(2010/03 幻冬舎)
「パート社員はみなし労働時間制にできない」「有能と見込んで採用した社員には当然高い給与を支払うべき」「労働時間は現場で作業している時間だけ」などといった、就業規則、雇用、賃金・労働条件、休日・休暇、残業・労働時間、雇用・リストラなどに関するよくある誤解を、開業歴30年と言うベテラン社労士が、何故それが誤解であるか解説した本で、「Q&A」ではなく「大誤解」としている点がミソでしょうか。
「従業員の退職時に、有給休暇の請求を拒むことはできない」(残った有給を買い取り、引き継ぎ業務をさせることは可能。就業規則で引き継ぎをしなければ退職金を減額すると定めておく)といった、やや突っ込んだ解説を要する"誤解"もありますが、全体としては概ね基本的なポイントを押さえたラインアップとなっています。
「あなたの会社に忍び寄る労務倒産の足音。今や会社倒産の引き金は売上げ減少でも値下げ競争でもなく、労務管理の甘さに起因している」というキャッチにあるように、どちらかと言うと「実務家」向けと言うより中小企業の「経営者」向けの本であると捉えれば、マニアックになり過ぎていないという点ではいいかも。
逆に、この本に挙げてある48の誤解を、特に意識せず、何の問題もないと思い込んでいれば、それはやはり基本事項であるがゆえに「大」誤解なわけです。
実務に近いところで解説されていて、労働法に関することに関わらず、メンタルヘルス問題など労務管理全般にわたって取り上げているのが良く、各解説の最後に「これで解決!」として、解説の趣旨を簡潔に纏めているのもいいです。
また、各"誤解"を「大問題」「中問題」「小問題」と3つに区分しているのが興味深く、「大問題」はやはりお金に関係するものが多いかなあ。
経営者にはお勧めですが、社労士とかには、ちょっと足りないかも。但し、コンサルタントが顧問先の経営者に、そうした問題についてきちんと相手方の誤解が解ける様に分かり易く説明するうえでは、参考になる本です。