【1593】 △ 今野 晴貴 『マジで使える労働法―賢く働くためのサバイバル術』 (2009/05 イースト・プレス) ★★★

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製造業派遣労働者だが、今まで労働法をあまり意識したことが無かった、といった様な人向け。

マジで使える労働法.jpgマジで使える労働法―賢く働くためのサバイバル術 (East Press Business)』['09年]

 著者は労働相談や労働法セミナーを行っているNPO法人の代表者で、本田由紀氏らとの共著(『労働、社会保障政策の転換を―反貧困への提言』('09年/岩波ブックレット))もあるとのことですが、「賢く働くためのサバイバル術」というサブタイトルからも察せられるように、今まであまり「労働法」というものを意識してこなかった人のための入門書という感じ。

 本書にも紹介されている教育訓練給付などは「使える」という言葉が馴染まなくもないですが、「労働法」の核となる労働基準法などは、労働者が「利用する」と言うより、労働者に「適用される」と言うのが筋で、実際には、法を無視したような労働者の使い方をする事業主があるために、弱者である労働者の側からみて、自分で勉強して自分の身を守ることが必要となり、その結果「使える」という表現になるのだろうなあと。

 サービス残業をしている場合は、労働基準監督署に駆け込めばいいとか、確かにそうなのでしょうが、全編を通して、会社側に話したり組合に相談してみるといった姿勢はあまり無く、これは、製造業派遣や請負で働く労働者が、違法な多重派遣構造のために、自分の本来の雇い主の名称や所在地すら知らないことが多いといったこともあることからすれば、止む得ないことなのかも知れません。

 会社の労働組合は一部の社員の利益しか代表していないケースが多いので、アテにならない場合はコミュニティ・ユニオンに駆け込めばいいとし、派遣労働者の労働組合作りを支援している「ガテン系連帯」の大手自動車会社内での成功事例を紹介を紹介している点などからも、読者ターゲットがそうした"労働弱者"であることが窺えますが、ユニオンに入いれば入ったで、組合費がかかることなども、一応は書いておいた方が良かったのでは。

 最後はもう「会社とのケンカ」の仕方になってしまっていて、その方法として「労働基準監督署に駆け込もう」「労働審判制度を活用せよ」「ユニオンで争え!」の3つを挙げていますが、会社側に状況改善の姿勢が見られず、労働者個人としても打開策を見出すのが困難な状況にある人にとっての方策ということになるかと思います。

 巻末の労働問題の相談先のリストに、「労政事務所」(東京都の場合)とありますが、東京都の場合は、「労政事務所」は旧称で、今は「労働相談情報センター」という名称になっています。

《読書MEMO》
●章立て
PART1 【セクハラ・パワハラ編】 非常識な上司につける薬とその効用
PART2 【サービス残業代編】 「しごとダイアリー」は強力な武器になる!
PART3 【休暇取得編】 病欠で2年間もの有給休暇が!
PART4 【キャリアアップ編】 タダで手に職をつける術
PART5 【給料アップ編】 どんどん年収が上がる「仕組み」実践法
PART6 【「辞めろ!」と言われたとき編】 逆境をチャンスに変えるテクニック<・ふぉんt>

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This page contains a single entry by wada published on 2011年11月23日 00:23.

【1592】 ◎ 高谷 知佐子 『雇用調整の法律実務―労働条件変更から解雇まで (労政時報別冊)』 (2009/04 労務行政) ★★★★☆ was the previous entry in this blog.

【1594】 ◎ 石嵜 信憲 『実務の現場からみた労働行政』 (2009/06 中央経済社) ★★★★☆ is the next entry in this blog.

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