【1329】 × 北村 薫 『盤上の敵 (1999/04 講談社) ★★

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作品のトーンの不統一が気になった。 読み進むほどスラップスティック調になっていく...。

盤上の敵.jpg 『盤上の敵』単行本['99年] 盤上の敵 ノベルズ.jpg 講談社ノベルズ 盤上の敵 文庫.png 講談社文庫

 我が家に猟銃を持った殺人犯が立てこもり、妻・友貴子が人質にされていることがわかった末永純一は、妻を救出すべく奔走するが、自宅が警察とワイドショーのカメラに包囲され「公然の密室」化していることから、彼は警察を出し抜いて犯人の石割と直接交渉することを図る―。

 「人間の悪意」をテーマにした作者の新境地を拓いた作品とされているようですが、体裁はタイトルからも察せられる通りの本格推理で、確かに"息もつかせぬ"展開ではあるものの、結末がやや安易で、本格推理にありがちなリアリティの喪失が感じられました。

 それと気になったのは、作品のトーンが安定していないように思われた点で、ずっとハードボイルドっぽくいくのかと思ったら部分的にブラック・コメディ調になったりし、加えて、伏線となるべき幾つかの話が結末に向けて必ずしも収斂せず、むしろバラけている面もあって、総体的にみて、読み進めば進むほどスラップスティック調になっていくような...(筒井康隆か?)。

 でも、作者は重々しく物語を締め括っていて、従来の作者のファンにも大方の受けは良かったようで、週刊文春「ミステリーベスト10」の'99年度の7位、宝島社「このミステリーがすごい!」の'00年の8位にランクインしており、何だか自分だけ取り残されたような気がしました(波に乗れなかったということか)。

 作者は、この時点で2度ほど直木賞候補になっていますが、個人的には、この人、直木賞は獲れないのではとも思ったりしたら、結局6回目のノミネート作『鷺と雪』('09年/文藝春秋)で受賞ということになりました。

 【2001年新書版[講談社ノベルズ]/2002年文庫化[講談社文庫]】

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This page contains a single entry by wada published on 2010年2月26日 23:16.

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