【890】 △ ホンマ タカシ 『NEW WAVES (2007/07 パルコ) ★★★ (? ホンマ タカシ 『東京郊外 TOKYO SUBURBIA (1998/12 光琳社出版) ★★★?)

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波だけの写真集。癒し指向? 週末サーファー向けか?

NEW WAVES.jpg New waves―Relax.jpg  東京郊外 TOKYO SUBURBIA2.jpg 東京郊外 TOKYO SUBURBIA1.jpg(28.8 x 21.5 x 5.5 cm)
(37 x 28 x 1.8 cm)『NEW WAVES』 ['07年] 『東京郊外 TOKYO SUBURBIA』['98年]
New waves―Relax 75.5(2003|05) (Magazine House mook)

 まさに「出たあ!波だけの写真集」という感じで、ハワイ、ノースショアの波を'00年から'07年まで8年間撮りつづけた記録ですが、大判(37cm×28cm)の各ページに写っているのは、ただひたすら、波、波、波...。ハワイなのに意外と曇天のもとでの写真が多いのが意外ですが、かえってしっとりとした情感があっていい。

 この写真集の写真家・ホンマタカシ氏は、木村伊兵衛写真賞を受賞した『東京郊外 TOKYO SUBURBIA』('98年)や、娘の成長を記録した『Tokyo And My Daughter』('06年)など、「ハワイの波」だけでなく、いろんなものを記録風に撮ってきているなあという感じがします。

 もともと、この波だけの写真は、'01年に雑誌「relax」の特別編集企画として発表されたものですが、その間に、この手法を真似して、波ばかり写したものを写真集として刊行した別の写真家が何人かいて、それだけ、この手法は「売れ筋」だと見られたということでしょうか。

 梶井照陰(しょういん)氏という、佐渡で寺の住職をする傍ら、写真家としても活動している人の、『NAMI』('04年/リトル・モア)なども、同じパターン。佐渡の波へのこだわりはわかりますが、リトル・モア社にはかつて、ホンマ氏の作品や展覧会も手掛けた"やり手"編集者がいたので、そうした人が、これは「売れ筋」だと見たのではないかと思ったりもして...。

 実際、雑誌「relax」や他の写真家のものも含め、この「波」シリーズ見て、「心が癒された」というのが、寄せられる専らの感想だそうですが、個人的には、大胆な試みの先駆者(多分)として評価はするものの、そこまでは入り込めませんでした。
 昔、パイオニアのレーザーディスクで、波が寄せる海辺だけを延々と映し続けたものがありましたが、そちらの方が、音感的にも、「ゆらぎ効果」からくる"癒し"が得られるのでは(最近、DVDで、その名もまさに"波"というシリーズが出た!)。

 聞いた話では、この写真集は週末サーファーに人気があるそうで、海が時化たりしてサーフィンが出来ない時に、自宅でこの写真集を見て、休日の癒しとするそうです。

TOKYO SUBURBIA 64.JPG 因みに、ホンマ氏の『東京郊外 TOKYO SUBURBIA』は、タイトル通り、東京の郊外の風景とそこに住まう子どたちを撮った写真集で、フツーの写真家なら選ばないようなテーマ選定かも(この写真集、1ページ1ページがハードカバーのような厚い紙質になっている! 従って、ページ数で50ページしかないのに、電話帳のように本が厚くて重いし、値段も高い!)。

東京郊外 TOKYO SUBURBIA 65.JPG 自分の住まいの近所を撮っているのかと思ったら、西へ東へあちこちで向いて撮っていたんだなあと。見ただけでは皆同じような場所に見えるのが、「郊外」の1つの特徴なのかも。しかも、10年ぐらいの時を経たところで、去年撮った写真だと言われても全然分からないという...(これもまた「郊外」の特徴か)。

東京郊外 TOKYO SUBURBIA 67.JPG 巷の評価は高いようですが、個人的には何となく面白くはあるんだけど、今一つ、意図が分かったような分からないような...。

 建売り住宅の物件案内広告に出てくるような写真に見えるものもあるんだなあ。でも、それでこそまさに「郊外」的要素を旨く抽出していることの証しなのかも。

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