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養老氏と第一線で活躍する若手研究者らとの"学際的"対談。
『養老孟司 ガクモンの壁 (日経ビジネス人文庫)』 〔'03年〕 『養老孟司・学問の挌闘―「人間」をめぐる14人の俊英との論戦』 〔'99年〕
「日経サイエンス」に'97年から'99年にかけて連載された養老氏と第一線で活躍する若手研究者らとの対談をまとめた『養老孟司・学問の格闘』('99年)の文庫化。
『バカの壁』('03年/新潮新書)がヒットしたのでこんなタイトルにしたのだろうけれど、考古学、文化人類学、行動遺伝学、心理学など人文科学系のテーマを含む14編が収められていて、確かに"学際的"です。
「人はなぜ超常現象を信じるのか」とか、色んなことを研究している人がいるなあと思いました。
でも、詰まるところ「心と脳」の話に収斂されているのではという感じもします。
『平然と車内で化粧する脳』('00年/扶桑社)の澤口俊之氏や『ケータイを持ったサル』('03年/中公新書)の正高信男氏など、後にベストセラーを出すことになる研究者との対談もあります。
本書は脳科学など自然科学・医学系の研究の紹介が主となっていますが、その中ではやや異色な冒頭の2つ、ネアンデルタール人の研究をしている奈良貴史氏との対談と、古代アンデス文明の研究をしている関雄二氏との対談が、それぞれにとてもロマンがあって、個人的には良かったです。
ネアンデルタール人が現代人とある期間共存していたというのは面白い、それも何万年ものかなり長い期間。
これが今や主流の学説とのことです。しかも、争いなく暮らしていたらしい?
アンデスの標高2200メートルにある〈クントゥル・ワシ遺跡〉というのも本当に不思議です。
アンデスで神殿が造られたのは紀元前2500年頃だというから、その後のアンデス文明の停滞ぶりなどに照らしても(自らの文明の歴史を記すための"文字"すら見つかっていない)、宇宙人飛来説が出てくるのも無理ないかもと思ったし、もしかして本当に...?。
何れの対談もよくまとまっていて密度が高いけれど、自分が関心あるテーマについては、紙数上やや物足りない感じもしました。