【044】 ○ 奥村 佳史 『会社の年金が危ない―厚生年金基金・適格退職年金はこうして減らされるそして会社は行き詰まる』 (2004/05 生活情報センター) ★★★★

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あおり気味のタイトルだが、しっかりした内容の入門書。

会社の年金.jpg会社の年金が危ない-厚生年金基金・適格退職年金はこうして減らされるそして会社は行き詰まる』 
 やや煽り気味のタイトルですが、内容はしっかりしているように思えます。
 一般向けにわかりやすく書かれた入門書ですが、企業年金業務に携わる新任の実務家や管理職が読んでも有益な内容ではないかと思いました。

 従来型の厚生年金基金や税制適格年金は、加入者側からみれば(退職給付を年金で受給中の人も同様ですが)「給付減」となる可能性が大きく、また企業側から見れば、「掛金の引き上げ」は避けて通れない、あるいはその必要に迫られる可能性が高いという著者の前提は、ここ何年かの企業年金の財政状況を見ればけっして大袈裟なものではないでしょう。

 単年度では株式市況の回復などで年金資産の今まであった評価損を大幅に圧縮したというような話があるにしても、それは今までの負債を軽減したということであり、また少しでも利回りが悪化すれば、企業は再び退職給付債務の償却に追われることになる...。
 
 著者は、どうしてこうした事態になったかを"憤りを込めて"解説するとともに、一般に想定される給付減額の方法について、それがどのようにして実施されるのかを、年金を受け取る側の視点から"冷静に"解説していてます。  
 
 その冷静さはとりもなおさず、著者が、現実に従業員と向き合って対応しなければならない企業側の立場もわかって書いているということによるもので、この辺りのバランスの良さと実務的な観点が(社員側から見れば、「どっちの味方なのか」という感情論的な反発はあるかも知れませんが)、経済評論家などによって書かれた類書とは異なるところではないでしょうか(著者は公認会計士です)。

●新しい退職給付会計基準によって会社が経理処理している場合、掛金の引上げが会社の損益に影響を与えることは原則としてない。税金の計算にあたっては、掛金は損金に算入されるので節税効果がある(法人税・住民税・事業税あわせて約40%)
●適格退職年金では受給者の給付減額を実施するための手続きについての明文規定が無い。そのため、国税当局に事前にネゴし、全員から同意書をとる。確定給付年金では加入者の2/3以上の同意があればよい。

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