〔52〕 新企業年金と退職金前払い制度-3つまたは2つ制度から社員が1つ選ぶ

〔52〕 新企業年金と退職金前払い制度-3つまたは2つ制度から社員が1つ選ぶ


● 3つの制度から社員が1つ選ぶ

 今まで見てきたように、確定拠出年金(日本版401k)は、退職金前払い制度との併設が認められていますが、確定給付企業年金と合わせて実施することも可能です。
 (確定給付企業年金は、税制適格年金、厚生年金基金、企業型確定拠出年金、退職金前払い制度の何れとの併設可能です。ただし、適格年金は平成24年3月末を以って適格年金制度自体が無くなります。)

 そうすると今後は、税制適格年金から、制度的に似ている確定給付企業年金への移行が多く見られるかと思いますが、その際に、①確定給付企業年金、②確定拠出年金(日本版401k)、③退職金前払い制度、の3つの制度から社員が1つを選ぶ制度も可能だということになります。

 ただし、確定拠出年金(日本版401k)は、税制適格年金からの移行時には、原則として過去勤務債務(積立て不足)を解消することが求められますし(確定給付企業年金への移行は積立て不足があっても可能)、企業型の場合、投資教育のコストなども考慮する必要があります(「企業内個人型」の場合は、投資教育は義務付けられていません)。

 また、退職金が"手切れ金"のような役割を担っている面がある中小企業などにおいて、こうした中途退職しても原則として60歳にならなければ受給できない仕組みが馴染むかどうか、仮に別途に会社退職金(退職一時金)の制度が用意されていなければ、転職準備金が手元に無い状況となるという問題もあります。


● 中小企業の場合、「中退共」という選択も

 そうした理由から確定拠出年金(日本版401k)を敬遠する中小企業の選択肢としては、税制適格年金から「中小企業退職金共済制度」への移行ということも考えられます。

 「中退共」へ加入できる要件を満たしていれば、適格年金からの移行は比較的容易であり、移行後は、企業は掛金を負担するだけでよく、予定利率を下回った場合でも追加拠出の必要がありません。
 「中退共」はある意味、"確定拠出"なのです。
 以前は、適格年金資産の移管額に上限がありましたが、平成17年4月からは上限が撤廃されています。


● 2つ制度から社員が1つ選ぶ

 「中退共」への加入要件を満たさない、金融機関との関係を維持しなければならない、などの理由で「中退共」を選ばない(または選べない)場合は、前掲の"三択"を"二択"に絞り、①確定給付企業年金、②退職金前払い制度、の何れかを社員が選択できる制度というのも、現実性が高いと考えられます。
 ただし、確定給付企業年金の加入者となることを選択した場合、その資格を任意に喪失することは許されていないので、最初の選択においての注意が必要です。


● 「完全前払い」制に「企業内個人型確定拠出年金」を付加する

 退職金前払い制度は、単独制度としても、新企業年金との組み合わせによる選択制度としても、その役割は大きいと考えます。
 また、企業年金を全廃して「完全前払い」制に移行した場合には、その受け皿としての「企業内個人型確定拠出年金」も、検討の価値があると思います。


次項⇒〔53〕 早期退職優遇制度と希望退職-両者の違いと割増退職金などの関連システム


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This page contains a single entry by wada published on 2006年6月11日 00:06.

3-3 割増退職金制度 was the previous entry in this blog.

〔51〕 従来制度からの移行事例②-基金を脱退し、完全前払いに移行した事例 is the next entry in this blog.

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