〔46〕 ポイント制への移行に際して-現行制度との調整方法、企業年金における注意点

〔46〕 ポイント制への移行に際して-現行制度との調整方法、企業年金における注意点


● 現行退職金制度との調整方法
55-46-1grf400.gif
 ポイント制退職金制度の導入に際し、旧制度を残し(凍結し)新制度を入れる場合は、移行時に旧制度で計算した全従業員の退職金を算定しておく必要があります。
 退職事由別にそれをしますから、制度自体も退職給付会計も複雑化します。

 そこで、新制度に一本化し、過去分については改定時点での累計ポイントを算定するのが普通です。

 ただし、新制度の基準を過去に遡及して適用しようとすると、全員の入社来の履歴(ヒストリーデータ)が必要になりますし、そもそも同時に等級制度を変更する場合は不可能です(できたとしても、新旧で給付水準に過大な格差が出ることが予想されます)。

 ですから一般には、旧制度での退職金を移行時点で捉え、この退職金水準に見合う累計ポイントを新制度へ"持っていく"という方法をとります。
 この場合、一般には、会社都合計算したものを持っていき、新制度移行後に自己都合退職した場合、新旧の総ポイントに対して新制度の退職事由係数を掛けるという扱いをします。


● 企業年金にポイント制を入れる場合の留意点

 税制適格年金であれ確定給付企業年金であれ、制度改定により総給付現価を低下させることは、当局の認可基準において「不利益変更」とみなされ、"原則"認められていません。実施する場合は加入者の同意書取り寄せなどの特別な手続きが必要です。
 他の会社退職金制度から企業年金への移行割合を高めるなどして、制度上この問題をクリアする方法はあります。

 しかしそこまでしなくとも、本当に会社の経営状況が悪化している場合や、拠出金の大幅な上昇が経営を逼迫しているなどいったやむを得ない事情がある場合には、給付減額が認められる可能性があります。
 個々人の給付減額についても同じ考え方が成り立ち、現時点での給付額が下がる場合は、労働組合または本人の同意が必要となります。

 ただし、制度移行時点での過去分の給付額を保障したうえでの新制度への移行は、将来分についての一般に言われる"期待権"というもののが、法律で明確に規定されているものではないので、問題は少ないと思います。
 それでも、現時点での支給額(ポイント)などは社員個々に通知し、制度移行についての了解をとりつけておくなどの配慮はした方が良いと考えます。


次項⇒〔47〕 退職金前払い(選択)制度の概要-「後払い」から「その都度払い」へ


About this Entry

This page contains a single entry by wada published on 2006年6月11日 00:19.

3-2 退職金前払い(選択)制度 was the previous entry in this blog.

〔45〕 算定シミュレーションと全体調整②-全体調整の考え方と制度設計のバリエーション is the next entry in this blog.

Find recent content on the main index or look in the archives to find all content.

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1