〔37〕 「全社員年俸制」③-「全社員」のメリット、一般職に適用拡大する理由と期待効果

〔37〕 「全社員年俸制」③-「全社員」のメリット、一般職に適用拡大する理由と期待効果


● 「全社員年俸制」のメリット

 「全社員年俸制」のメリットは、賃金の「下方硬直性」のマインドセットを全社的に取り除くとともに、(基準額としてですが)会社がそれぞれの社員に年間いくら払っているかが一目瞭然となることにあります。
 基準賞与への業績反映を「会社・部門業績」に限定し、個人業績を入れないのであれば、査定が年1回で済むことになり、人事担当者の労務コストの低減にもなります。


● 一般職にまで年俸制を適用拡大する理由

 成果主義の考え方を全社員に浸透させる

 職種や業態によって差はありますが、若年層でも仕事の裁量度が高く、個人の創意と努力で高い業績を上げるケースがあります。
 会社が「成果主義」を標榜していても、そういう個人に報いるシステムが、表彰とか臨時ボーナスなどの一過性のものに限られていては、有能人材に対するリテンション(引き止め)効果は弱いと考えられます。

 ② 目標の遂行結果の評価は年ベースが合理的

 企業の数値目標は年ベースが基本であり、目標管理もそうなります。半期ごとにチェックことは大切ですが、中期プロジェクト的な業務などの場合は、その時点で評価をするとなると、最終結果とのズレが生じる場合があります。また、評価に業績・成果反映の度合いを強めるのであれば、従来のような4月の昇給時に能力査定をし、業績査定は夏・冬の賞与で行う、という教科書的な考え方を見直す必要があるかも知れません。

 ③ 従来の残業手当の不合理を解消する

 業務の進め方についての裁量度が高い仕事、例えば企画業務などはその傾向がありますが、こうした業務は、投入した時間と成果が必ずしも相関関係にないことがあります。
 しかし、時間単価で支払う残業手当は、成果に関係なく、多く残業した人に多く支払われてしまいます。ある程度の水準までは固定額とし、「時間=賃金」という発想を払拭することも、業務の効率化に繋がると考えられます。


● 一般職年俸制の期待効果と補完すべきシステム

 一般職にまで年俸制を適用拡大することの期待効果として次のことが考えられます。

 ① 社員の意識改革......"年俸制"適用者であることが「成果主義」適用者であるという自覚に
 ② 業務のやり方の改善......残業代は固定なので、効率的に仕事をし、結果を出す
 ③ 職場風土の改善......「遅くまで会社にいる人が偉い」「休みがとりにくい」という風土の改善
 ④ 労働時間の短縮......結果として、労働時間が短縮される
 ⑤ 人件費の有効カ活用......予測・制御が困難な流動費が減り、成果配分に再分配可能

 導入に際して補完または充実すべきシステムとして、①目標設定や評価フィードバックの際の面談制度、②自己申告制度などによる機会均等の人員配置、③ 残業時間の抑制(導入前の"時短"運動、導入後の長期間労働の発生予防)などが必要になると考えます。


次項⇒〔38〕 退職金制度改革の方向性と「ポイント制退職金制度」の位置づけ-短期決済化


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This page contains a single entry by wada published on 2006年6月11日 00:28.

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