◆年俸制の場合、支給日前に退職する者に対しても、賞与を支払わなければならないか

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Qのロゴ.gifのサムネール画像当社では社員に年俸制を採用しており、期首(4月)に決定した個々の年俸額を、配分係数(16)で割って月々の給与として支給し、残りを2で割って7月と12月の初日に賞与として支給しています。一方、就業規則では、「賞与は支給日の在籍者に限り支給する」との定めていて、支給日前に退職する者には賞与を支払っていませんでした。この措置について、支給日の直前日(6月30日)に退職する予定の年俸制社員から、7月の賞与の半分に対して自分には請求権があるのではないかという訴えがありましたが、年俸制の場合、支給日前に退職する者にも、賞与を支払わなければならないのでしょうか。


Aのロゴ.gifのサムネール画像一般的には、就業規則に、「賞与は支給日の在籍者に限り支給する」との定めがあれば、支給日前に退職する者には賞与を支払わなくても問題ありません。しかし、賞与が年俸の一部を構成しているときは、その賞与は賃金債権として確定しているため、支給日前に退職したことを理由に不支給とすることはできません。
また、賞与支給時に加算する業績賞与や、年俸とは別に支給するインセンティブについても、評価が確定している(したがって、支給額が確定している)部分については同様です。

■解説
1 支給日在籍要件の一般的効力と年俸制の場合

貴社では、「賞与は支給日の在籍者に限り支給する」という規定になっているということですが、まず、一般論からいうと、このような「賞与支給日在籍要件」の定めをすることは問題ないとされており、裁判例においても、賞与支給日前に退職した者に賞与を支給しなかったことについて、そのことを適法であるとしたものが多くあります(「梶鋳造所事件」昭55.10.8名古屋地裁判決、「大和銀行事件」昭57.10.7最高裁第一小法廷判決、「京都新聞社事件」昭 60.11.28最高裁判決、「カツデン事件」平8.10.29 東京地裁判決など)。
 しかし、これらの判例における賞与とは、「定期的又は臨時的に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないものをいうこと。定期的に支給されかつその支給額が確定しているものは、名称の如何にかかわらず、これを賞与とみなさないこと」とした行政解釈にあるように、あらかじめ支給額が確定していないものであることを前提としています。
 ご質問の年俸制における「賞与」の場合、年俸額が賞与分も含めて決定されているため、期首(4月)において、7月と12月に「賞与」として支給される額(それぞれ年俸額の16分の2)がすでに確定していることになります。前掲通達にある通り、こうした「支給額が確定しているものは、名称の如何にかかわらず、これを賞与とみなさないこと」とされるため、確定した賃金債権となります。
年俸制の場合は、一般に年間を通じて労務の提供がなされることを前提に年俸額が決定されるため、労務提供期間が1年に満たない場合は、その期間に応じて賞与を按分計算することは認められています。したがって、ご質問の6月末退職者については、本人の訴えの通り、6月支給予定の賞与の半分の額(年間賞与額を各月に均等配分したうちの4月から6月分)の請求権があることになります。


2 業績加算賞与やインセンティブ・ボーナスなどの扱い

年俸制の場合でも、期首に定めた賞与を基本額(基本賞与)とし、それに業績加算部分(業績加算賞与)をたしたものを賞与総額として支給することがあります。また、年俸契約で決められた賞与以外に、決算賞与(プロフィット・シェア・ボーナス)や報奨金(インセンティブ・ボーナス)などのインセンティブが支給されることがあります。
これらも、一般的には、労働基準法上の「臨時に支払う賃金」として扱われ、「賞与支給日在籍要件」の定めに沿って支給日に在籍しない者に支給しなくとも問題はありませんが、当該者の評価が確定している(したがって、支給額が確定している)場合は、年俸制における賞与(基本賞与)の扱いと同様、確定した賃金債権となり、支給日前に退職した者にも支払わなければなりません。


□根拠法令等
・昭22.9.13発基17(賞与の意義)




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