◆管理監督者の深夜割増賃金はどのように算定するのか

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Qのロゴ.gifのサムネール画像管理職でも、深夜労働割増賃金の支払いが必要であると聞きましたが、その場合、深夜割増の2割5分相当のみを支払えば足りるのでしょうか、それとも、通常の労働時間1時間分の賃金に割増分2割5分相当を加えた額(125%)を支払う必要があるのでしょうか。
また、当社では、管理職に対して職責の重さに応じて役職手当を支給していますが、こうした通常の賃金に上積み支給する手当がある場合、そのことを理由に、割増賃金を支払わないとすることは可能でしょうか。



Aのロゴ.gifのサムネール画像いわゆる管理職の深夜労働については、時間単価の2割5分相当を支払えば足ります。
また、職責に対する手当の支払いを理由に、深夜割増賃金を支払わないとすることはできません。ただし、就業規則等によって「深夜労働の割増賃金に相当する手当」として支給することが明記されている場合は、この手当を法定の割増賃金に代わるものとして取り扱うことが可能です。

 

■解説
1 管理監督者の深夜割増は2割5分相当を払えば足りる

労働基準法第41条第2号では、監督もしくは管理の地位にある者(以下「管理監督者」という)について、労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用は除外することとされています。ただし、ご指摘の通り、深夜労働割増賃金については、管理監督者に対しても支払いの義務を免れません。
これは、労基法が労働時間に関する規制と深夜労働に関する規制を区別しているためで、行政解釈においても、法第41条は、「労働時間、休憩及び休日の規定を適用除外としているものであり、深夜業の関係規定は適用は排除されるものではない。したがって、本条により労働時間等の適用除外を受ける者であっても、第37条に定める時間帯に労働させる場合は、深夜業の割増賃金を支払わなければならない」とされています。
では、実際に管理監督者が深夜労働を行った場合の割増賃金の支払いはどうなるのかということですが、これは、時間単価の2割5分相当の支払いのみで労基法上は足ります。なぜなら、午後10時以降の労働に対する通常の賃金は、時間外賃金と同様、すでに所定賃金に含まれていると解されるからです。


2 役職手当の支払いを理由に深夜割増賃金を支払わないとするのは原則不可

現在貴社で支給されている役職手当は、管理職に対して職責の重さに応じて定額を支給されているもののようです。一方、割増賃金の算定基礎から除外できる賃金は、①家族手当、②通勤手当、③別居手当、④子女教育手当、⑤住宅手当、⑥臨時に支払われた賃金、⑦1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金の7種類のみであり(労働基準法第37条第4項、施行規則第21条)、この他の手当は名称にかかわらず、すべて割増賃金の算定基礎に算入しなければなりません。
以上から、現在支給されている役職手当を深夜割増賃金とみなして、実際に支払うべき割増賃金を支払わないとすることはできず、むしろこれらの手当を割増賃金の算定基礎に含めて深夜割増賃金を計算し、支払わなければならないということになります。
ただし、行政解釈では、管理監督者の深夜労働割増賃金について「労働協約、就業規則その他によつて深夜業の割増賃金を含めて所定賃金が定められていることが明らかな場合には別に深夜業の割増賃金を支払う必要はない」とされています。すなわち、役職手当を"職責の重さに応じた手当"ではなく、就業規則等によって「深夜労働の割増賃金に相当する手当として支給する」ことが明記されている場合は、この手当を法定の割増賃金に代わるものとして取り扱うことが可能です。


□根拠法令等
・労基法41(労働時間等に関する規定の適用除外)、37(時間外、休日及び深夜の割増賃金)、
・労基法規則21(割増賃金の基礎となる賃金に算入しない賃金)
・昭22. 12.26 基発572(割増賃金の基礎となる手当)
・昭63. 3.14 基発150、平11. 3.31 基発168(深夜労働に関する規定との関係)




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