〔35〕 「全社員年俸制」①-「全社員年俸制モデル」の「基準年俸」構成要素

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● 「全社員年俸制」を考える
年俸制は今や多くの企業で導入されていますが、その適用対象の大部分は、管理職と高度専門職です。一般職への適用が少ない理由としては、「習熟過程にある社員に年俸制は馴染まない」という説明の仕方もありますが、「年俸制」自体は賃金決定の"形態"に過ぎず、この考え方は「年俸制」の"運用"についての予断が含まれているように思います。
一般職への適用が少ない実際上の理由には、時間外手当の問題が克服できない、というマインドセット(思い込み)があるかと考えます。年俸とは別に時間外手当を支給すればいいのですが、裁量労働などのみなし時間制であれば、残業見合い分を年俸に含めて構いません。それに該当しない一般職も、予め割増賃金を含めて年俸を設定し、年俸や月額給与のうちの時間外手当相当額を明示するとともに、実労働時間に基づく残業手当の計算額が見合い分を超過した場合にはその差額分を支払うなどの条件を満たせば、法規上の問題はクリアできます。

● 「全社員年俸制」モデルの「基準年俸」構成要素
全社員年俸制の1つのモデルとして、「基準年俸」の構成要素を次の通りとする方法を考えてみました。「基準」という言葉を使うのは、賞与に変動的要素を持たせるためで、年俸額が「固定」額ではないということです。
  ★ 管理監督職の「基準年俸」=「役割年俸+業績年俸」(または「役割年俸」のみ)
  ★ 一般職の「基準年俸」=「役割(キャリア)年俸+残業固定分の年額
管理監督職を「役割年俸+業績年俸」とするか、「役割年俸」一本とするかは、賃金制度での「役割給」「業績給」の問題と相似形です。同じように考え、自社適合型を選べば良い訳です。
 管理監督職の「役割年俸」も一般職の「役割キャリア年俸」も、最初から年間ベースで決定します(1万円単位が妥当です。。
 管理監督職の「業績年俸」には、最初から年間ベースで決める方法(1万円単位が妥当です)と、月額ベースで決めて12倍したものを「業績年俸」とする方法(この場合は年額が千円単位になる可能性あり)があります。
 一般職の「残業固定分」の年額は、全員の基準残業時間(毎月これだけの時間は残業するであろう、という時間)を定め、個々の超勤単価に基づき月額を算定し、更にそれを12倍して年額を決めます。勿論、年間の基準残業時間からいきなり年額算定する方法もあり、この方式だと、繰上げ計算で年額を1万円単位にすることができます。(ただし、支給の際には12等分した額を月々支給するため、年額を1万円単位にすると月額分に端数が出ます。)

 「残業固定分」は残業実績に関わらず毎月支払われ、月々において基準残業時間を超過した場合には、超過分の手当を別途支給することになります。そのことを前提に、基準残業時間を「一般職一律」「役割等級別」「職種・職群別」「個人別」のどの決め方をするか選ばなければなりません。管理上は「一般職一律」が最も簡便ですが(単価が異なるので、金額は個々に異なる)、その場合、ほとんど残業がない社員にも毎月定額の残業手当が支給されることになります。

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