〔30〕 年俸制とは何か-その定義と日本型年俸制の特徴、導入のメリット・デメリット

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● 年俸制とは賃金の"決定形態"の1つに過ぎない
年俸制と言うとかつてはプロ野球の選手の年俸しか思い浮かばなかったものですが、日本企業においても1995年ごろから電機・自動車・鉄鋼業界などがコンスタントに導入を始め、現在では大企業の管理職を中心広く普及しています。
年俸制というのは、賃金の額を年単位で決める制度で、賃金の"決定形態"の1種ということになります(賃金体系や支払形態を指すのではありません)。
"決定形態"の1つに過ぎないものが"成果主義賃金の究極のスタイル"であるかのように見られるのは、従来の定昇制度による賃金の下方硬直性を撤廃し、働く側の社員の「給料(年収)は毎年上がるものだ」という思い込みを取り除くのに、「年俸制」という言葉が有効なキーワードだったからだと考えます。経営側から見て、自社の処遇制度がパラダイム・シフト(従来支配的だった考え方の転換)をしたことを社員に伝えるのに効果的な用語であったとも言えると思います。

日本の企業で今までに導入されてきた年俸制の特徴としては、次の3点があると思います。
① いずれも「成果主義」を明確に志向(標榜)している
② なのに、年俸の増減幅などは緩やかな運用にとどまるケースが多い(今までは)
③ 「月例給×12+業績賞与」という「足し上げ方式」が主流だった(所謂「日本型年俸制」)


30-01.gif※ ③の「足し上げ方式」とは、月例給と業績賞与を別々に定め、足し上げたものを年俸とするもので、移行時に月給の減額を避けることができるので導入しやすいというメリットがありますが、従来の賃金制度との違いがわかりにくいという欠点があります。一方、もう1つのタイプ「係数配分方式」は、「はじめに年俸ありき」で、それを係数で月額分・賞与分に配分するものです。年俸ダウンはそのまま月給ダウンにつながるので、導入のインパクトは大きいと言えます。







● 年俸制導入のメリットとデメリット
年俸制を導入するメリットは、①成果主義の徹底や年功的賃金の是正が可能になる、②社員の意識改革や組織風土の改善につながる、③目標管理制度と連動することで社員の業績達成志向が強まる、④フィードバック面接の実施によりコミュニケーション機会が増える、⑤社員個々の年収管理や総額人件費予算の把握が容易になる、などです。
デメリットが出るとすれば、それはちょうどメリットを裏返したかたちであらわれます。年俸制は運用次第では、①単なる「結果主義」(結果偏重)に陥る、②チーム連帯感が喪失する、③目標達成基準や評価基準が明確にできない、④フィードバック面談に時間がかかるためフィードバックがおざなりになる、⑤人件費が硬直化する、などの危険性を孕んでいるのも事実です。


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