〔02〕 「成果主義」-「成果主義」導入の際に気をつけるべき落とし穴 

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● "制度の目的化"が「結果主義」や自主性の伸長阻害につながっている
「成果主義」は避けて通れない時代の趨勢だと言われています。しかし一方で、「成果主義」のさまざまな問題点の指摘がなされています。問題の源は、制度の策定・運用に際して本来の「成果主義」と異なる扱いをしたことにあると考えます。それは、
① 自己責任の原則なのに、会社が職務を一方的に決定している、
② 成果の特定が困難で評価者の認識も不十分なままスタートした、
③ 目標設定において中長期的テーマ・課題がないがしろにされている、
④ 人件費削減を主目的に成果主義を導入した、
などなどです。これでは、企業が目指すべき(本来の成果主義の目的である)「活力ある革新的な人材・組織の実現」には結びつきません。その結果、
★ 目標達成度を意識しすぎてプロセスを軽視しがちになる(単なる「結果主義」に陥る)、
★ 成果を生み出すために必要な社員の自主性・自立性の伸長を阻害する、
などの問題が生じているのです。企業としての本来の目的を見失い、制度を入れることが目的化してしまうことこそ、「成果主義」導入の際の落とし穴と言えるのではないかと思います。

● 自社にとっての「成果主義」の定義・目的を明確にしておく
成果主義一辺倒からの揺り戻し、というのが、先行して成果主義を導入した企業に昨今見られます。しかしこうしたニュースや情報に過度に左右されるのはどうかと思います。
「成果主義」というのは、"イデオロギー"の如く言われていますが、処遇制度の1つの方向性を指すにすぎないと考えます。で、実際に各企業で最近導入したという「成果主義」賃金制度の具体的内容を見てみると、導入企業ごとにかなり多様で程度差が大きいのです。どれも自社の従来の制度に比べ相対的に「成果主義」へシフトしたということであって、「成果主義」は定義こそあれ、「成果主義」の共通基準があってそこに到達した、と言い切れるものではないからです。

成果主義賃金制度は、簡潔に言えば「成果応分」ということであり、何も新しいことを言っているのではありません。賃金制度は社員に対するメッセージを込める手段であり、"容れ物"です。そこにどのようなメッセージを込めるのかという中身が必要です。制度の改定(成果主義の導入)が新たな弊害を生むのは、自社にとっての成果主義のあり方の事前検討が不充分だったためと考えられます。また、制度の作り方がまずいと、伝えたいメッセージもうまく伝わりません。「まずい」というのは、「精緻でない」ということではなく「自社適合でない」ということです。行き過ぎであったり、期待外れであったりすることになります。自社にとっての成果主義(賃金制度)のあり方は、その目指すところを明確にし、「自社適合」念頭において構築すべであると考えます。

● 人材の可能性・自立性を引き出す概念-「役割」
そうした中で、単なる「結果主義」に陥らず人材の可能性・自立性を引き出す概念として、これから成果主義へ移行しようという企業に注目されているのが、「役割」という概念です。

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