〔24〕 日本の賞与と米国のボーナス- "生活保障+成果配分" vs. "ゼロベース"

●    日本の賞与は生活保障+成果配分、米国のボーナスはゼロベース

わが国における賞与の特徴は、「生活保障」と「成果配分」という2側面の機能持っていることです。会社が赤字でも生活保障分は支給し(賃金の後払い)、さらに利益が上がったならば企業業績を配分する(社員に対するインセンティブ)という考え方です。
一方、米国のボーナス制度(団体業績給)は、企業業績に連動した完全業績給制度です。賞与原資の算定方法にはスキャンロン・プランやラッカー・プランがありますが、売り上げや利益が一定以上のときのみ支給する、所謂ゼロベースであるという点で、刺激性の強い仕組みです。
わが国においてもバブル経済崩壊後は、定期昇給率を抑制し、企業業績や個人の成果は賞与においてより大きく反映させるという動き(「業績反映(連動)型賞与」)が見られます。

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〔25〕 業績・成果反映型賞与の設計①-一般的なタイプ(基本賞与・業績賞与・支給係数)

25-01.gif● 業績反映型賞与の狙い
業績反映型賞与に狙いは、賞与原資の決定基準をつくり、人件費をコントロールしながら成果配分することにあります。
経営指標を用いて行うものを、一般に「業績連動賞与」と呼んでいます。表は、支給月数を「半期ごとの売上高対経常利益率」に連動させた例です。







25-02.gif● 基本賞与と業績賞与、業績賞与への評価反映のさせ方
わが国の賞与の機能が「生活保障」と「成果配分」という2つの側面を持っていることに対応して、一般的には賞与は基本賞与と業績賞与に分かれており、業績賞与の部分に会社・部門・個人の業績を反映させるようになっています。
 
基本賞与は全社一律の月数(係数)を用いますが、業績賞与の月数(係数)は役割等級および評価が高いほど大きくなるように設計するのが一般的です。



 

 


25-03.gif 右表は業績賞与(成果賞与)の支給月数(係数)の「役割等級別・評価(S~E)別マトリックス」で、全社一律1ヶ月分の基本賞与に上乗せして支給する例です。
ただしこの例においては、標準的な評価(B)を下回ると上位等級の者ほど支給係数が小さくなり、基本賞与(1ヶ月分)を割り込む可能性もあることを示しており、より刺激性の強い運用方法だと言えます。



〔26〕 業績・成果反映型賞与の設計②-基礎額を基本給から絶縁した「等級別基礎額方式」

● 基礎額を基本給から切り離す
前節のような一般的な基本給ベースの月数方式(係数方式)は、現在の基本給が高い者ほど賞与額が高くなる傾向にあります。ですから、下位等級にあって業績評価も決して高くない社員が、上位等級で標準的な評価を得ている社員の賞与額を上回るということも起こり得ます。
そこで、賞与の算定基礎額に個々の基本給を用いることをやめ(基本給絶縁)、別途に等級別の基礎額を設定し、平均支給月数に評価係数を乗じたものを掛けて支給額を求める方法があります。
★ 支給額=等級別算定基礎額×平均支給月数×評価係数
このようなやり方は「等級別基礎額方式」と呼ばれるものですが、結果として次のような支給額テーブルができるので、「別テーブル方式」とも言います。

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● 基本賞与を存続し、業績賞与のみ基本給から切り離した場合
「等級別基礎額方式」を検討しシュミレーションしたところ、今までの支給実績との差額が大きくなる社員が多数出るという場合には、基本給連動型の基本賞与を存続し(例えば基本給の1ヶ月分を支給)、従来の(または新たに拡大設定する)業績賞与の部分のみ(例えば算定基礎額の平均1ヶ月分)において「等級別基礎額方式」を採用するというやり方により、制度移行をスムーズにする考えもあります(下表)。

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考え方として基本給から完全に切り離す方式より一見後退したかのように見えますが、評価間の評価係数のポイント格差の設定の仕方によっては、充分に業績反映度の高いテーブルを作ることができます(上の例では、評価間格差は拡がっています)。



〔27〕 業績・成果反映型賞与の設計③-原資管理に主眼を置いた「ポイント方式」

● 原資管理に主眼を置いた「ポイント方式」
前節の「等級別基礎額方式」と同じように基本給から切り離した賞与算定方式で、より柔軟な賞与原資の管理に主眼を置いたものに「ポイント方式」があります。
「ポイント式」業績賞与は、総額の確定している賞与原資がまずありき、という前提のもとに、次のような流れで算定します。
① 等級・評価ごとに支給額ポイントを設定する(ポイントテーブルの作成)
② 支給対象全員に個々の等級・評価に沿って支給額ポイントを割り当てる
③ 支給対象全員の総ポイント数を求める(Σ(支給額ポイント×人員)=総ポイント数)
④ 賞与原資÷総ポイント数=1ポイント当たりの単価
⑤ ポイント単価×等級・評価ごとのポイント=等級・評価ごとの支給額
⑤は<ポイント単価×個々の支給額ポイント=個々の賞与支給額>と言い換えることもできます。


27-01.gifポイントテーブルの作成手順は、次の通りです。
① 実績に基づく(標準評価〔B〕での)等級別支給額ポイントを仮設定する
② (標準評価〔B〕での)あるべき等級別支給額ポイントを設定する
③ 評価間格差を設定する(左表上)
④ 支給額ポイントに置き換える(左表下)