◆社員が死亡した場合、死亡退職金は誰に支払えばよいか

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Qのロゴ.gifのサムネール画像病気療養のため休職していた社員が亡くなったため、退職金規程に基づいて退職金を支払いたいと思うのですが、受取人の間に争いがある場合には、誰に支払えばよいのでしょうか。


Aのロゴ.gifのサムネール画像就業規則、退職金規程等で支給対象者(受取人)が定められている場合はそれに従い、定めがない場合は、民法上の相続人に支払います。
支給対象者が複数いる場合で、当事者間で争いがあるときは、「異議のない部分」を予定期日までに支払えばよく、争いとなっている部分については、争いが解決するまで支払いを留保しても差し支えありません。

 

■解説
1 死亡退職金の一般的な受給権者の順位

労働者が死亡したときの死亡退職金は、労働協約や就業規則、退職金規程等で、死亡退職金の支給対象者(受取人)の順位を定めている場合には、その定めに従って支給します。この場合、死亡退職金の支払い順序は、民法の遺産相続の順位や、労働基準法施行規則第42条、第43条の順位(労働者が業務上の災害により死亡したときの遺族補償を受けるべき者の順位)の通りでなければならないということはなく、就業規則等で任意に定める支給対象者や支給順位に基づいて支払っても差し支えありません
このように、就業規則、退職金規程等に支給対象者の定めがある場合には、遺族が受け取る死亡退職金は、相続財産にはなりません。したがって遺族は、相続人としてではなく、直接これを自己固有の権利として受給権を取得することになります。
例えば、支給対象者を、死亡労働者の配偶者、子、父母と定めているとき、その死亡労働者に配偶者も子もなく、父母も亡くなっているようなときは、たとえ民法上の相続人(例えば、兄弟姉妹)が存在していても、その相続人は、死亡退職金の受給権を持つことはできません。
一方、支給対象者についての定めがない場合は、行政解釈では「民法の一般原則による遺産相続人に支払う」とされています。したがって、死亡退職金の支給対象者に関する定めがない場合で、死亡労働者の民法上の相続人が存在するときには、その相続人に対して死亡退職金を支払うことになり、相続財産になると考えられています。
なお、この場合で、複数の相続人が存在するときには、やはり民法の定めに従って、各相続人に分割支払いすることになります。支給対象者(受取人)順位が定められている場合でも、同順位者が複数存在するときは、「そのときは長幼の順による(最長年者とする)」などの定めが就業規則、退職金規程等にない限りは、分割払いの方法をとります。


2 受取人(相続人)に争いがある場合

死亡退職金の受取人(相続人)が複数いる場合で、当事者間で争いが生じたときは、「異議のない部分」を予定期日までに支払えばよく(労働基準法第23条第2項)、争いとなっている部分については、争いが解決するまで支払いを留保しても差し支えありません。
ただし、そうした場合、事業主はその間、死亡退職金を保管しなければならなくなるため、訴訟事件になるなど争いが長引くようなときには、実務上の処理として、供託(法令の規定により、金銭、有価証券、その他の物件を地方法務局などにある供託所または一定の者に寄託すること)などの措置を講ずることも可能です。また、このような争いに事業主が巻き込まれることを避けるために、複数の支給対象者があるときは、支払い側(事業主)が指定する支給対象者に支払うことができる旨を、就業規則、退職金規程等にあらかじめ定めておくことも考えられます。


□根拠法令等
・昭25.7.7基収1786(死亡労働者の退職金)




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