◆退職金の支払期日は必ず決めておかなければならないか

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Qのロゴ.gifのサムネール画像当社では、現行の退職金制度を見直し、新たに退職金規程を作りたいと考えていますが、その際に退職金の支払い期日を定めておく必要があるでしょうか。またその場合、労働基準法の「労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があった場合においては、7日以内に賃金を支払わなければならない」とした定めとの関係はどうなるのでしょうか。


Aのロゴ.gifのサムネール画像退就業規則や退職金規程で退職金について定める場合は、退職金の支払い期日についても必ず定めておかなければなりません。その場合、ご質問で指摘されている労働基準法第23条第1項の定めの適用は受けないため、支払い期日は任意に定めることができます。就業規則等に退職金の支払い時期が定められていれば、権利者の請求があったとしても、賃金と同じように7日以内に支払う必要はありません。

 

■解説
1 退職金と労働基準法第23条との関係

退職金を支給するかどうか、また支給するならばどのように支給するのかは、使用者または労使当事者の任意にゆだねられるものですが、退職金について就業規則等に定める場合には、賃金に関する事項と同様に、適用される労働者の範囲、退職金の額の決定・計算方法とその支払方法、および支払い時期に関する事項を定め、それらを記載しなければなりません(労働基準法第89条3号の2)。
このように、退職金も賃金の一種として扱われており、退職金制度を設ける際は、退職金の支払い時期についても就業規則等に必ず定めておかなければならないとされています。一方で、ご質問にあるように、労働基準法第23条第1項では、「使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があった場合においては、7日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない」と定めていて、それでは退職金の場合も、社員が退職してその請求があれば、就業規則等で定めた支払い期日に関係なく7日以内に支払わなければならないのかということが問題になります。
この点についての行政解釈は、「退職金は、通常の賃金の場合と異なり、あらかじめ就業規則等で定められた支払期間に支払えば足りるものである」(昭和26.2.27基収5483、昭63.3.14 基発150)としています。したがって、就業規則等に支払い時期が定められていれば、権利者の請求があったとしても、賃金と同じように7日以内に支払う必要はありません。


2 就業規則への支払い期日の記載方法

就業規則で定める支払い期日については、必ずしも支給月日まで特定しておく必要はなく、例えば、「退職金は、原則として退職の日から1カ月以内に支給する」などのように、退職の日から一定期間以内の期間に支払うとする定め方でも差し支えありません。
また、あらかじめ定めた退職金の支払い期日を延期する場合があること、支払いを分割する場合があることなどを就業規則において定めることも可能です。ただしその際には、どのような場合に支払いを延期したり分割したりすることがあるのか、その理由がわかるようなかたちで記載しておいた方が望ましく、また、支払いを分割する場合には、その支払い期日(期間)を定めておく必要があります。
ですから、分割支給についての就業規則への記載例としては、「定年による退職の場合の退職金は、原則として退職の日から1カ月以内にその2分の1の額を支給し、同じ日から3カ月以内に残額を支給する」というように、分割回数と分割されたそれぞれのものについての支払い期日(期間)までを含めて定めたものでなければならないということです。


□根拠法令等
・労基法89(就業規則の作成及び届出の義務)、23(金品の返還)
・昭和26.2.27基収5483、昭63.3.14基発150(退職手当の支払時期)




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