〔07〕 賃金制度改革の目的と検討項目-目的を明確に。職能給か、職務給か、役割給か

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● 目的を明確にすることからスタート
賃金制度改革に当たっては、当然のことですが先ずその目的を明確にすることからスタートします。成果主義を入れるのであれば、そのことを念頭に置きつつ、現状の問題をどういう方向で解決したいのか再確認します。
会社経営が安定するように柔軟な人件費コントロールがしたいのか、役割に見合った賃金となるように人件費の再配分を行いたいのか、業績によって相当の処遇格差が出るようにしたいのか、若年層社員の流出阻止を図りたいのか、優秀な外部人材を獲得できるようにしたいのか、よく整理し基本的なコンセプトを固めておきます。検討委員会や改革プロジェクトがあれば、メンバー内でそのコンセプトを共通認識事項にしておきます。その上で、「何のために変えるのか」が社員に明確に伝わる賃金制度にすることが大切です。

 賃金制度改革の検討項目としては、次の3項目があります。
① 賃金体系 ... 基本給の構成要素(職能給か、職務給か、役割給か)
② 賃金水準 ... 業界・職種に照らして妥当か
③ 賃金形態 ... 計算期間・支払形態(年俸制か、月給制か、日給月給制か)
この中で特に重要なのが ①賃金体系、つまり基本給の構成要素です。

● 基本給の構成要素
職能給とは、「社員の職務遂行能力」を基準として決める賃金です。社員が保有する職務遂行能力に着目し、その能力が高まれば職能給も上げるというかたちになります。通常は職能資格制度がベースとなり、運用に際しては職務遂行能力の基準としての「職能資格要件書」が用いられます。資格降格がない限り降給することがないため、安定的な給与である反面、能力-仕事-賃金の間にギャップが生じやすいため、人件費の配分にムダが生じやすいという欠点があります。
職務給とは、「社員が担当する職務の難易度・責任度」を基準に決める賃金です。通常は職務等級制度がベースとなり、運用に際しては個々の職務の内容・特徴・難易度をまとめた「職務記述書(ジョブディスクリプション)」が用いられます。しかし従来型の職務給制度には、その前提である職務等級の内容や区分が細かくなりすぎる傾向にあり、せっかく作成した職務記述書も仕事の変化に追いつけず柔軟性に欠けるなどの欠点があります。また、中途採用者の給与決定、配置異動への対応、人材育成への動機付けなどの面でも難点があります。
役割給とは、「社員の職位・職務上の責任・権限である職責」を基準に決める賃金です。これに「業務の拡大・革新等のチャレンジ度」を付加したもの、つまり「職責+チャレンジ度」を基準にする場合もあります。"仕事の内容"より"仕事の価値"に準拠した給与とも言えます。役割等級制度がベースとなりますが、職務等級制度に比べて等級を大括り(ブロードバンド)で区切るため柔軟な運用が可能となります。一方で、新たに定める「役割基準」が、社内での仕事の"価値"のレベルに対応するものでなければ、社員の納得性は得られにくくなります。

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