〔49〕 退職金前払い(選択)制度の設計②-制度移行時および運用上の諸問題

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● 制度移行時および運用上の諸問題
① 既得権分の扱い
新制度として導入する場合、移行時点までの勤務分の退職金相当額を保障するのが一般的ですが、そうした既得権分をA.一時金で前払いする方法と、B.退職時まで支払いを留保する方法があります。Aは、一時的に大きな給付原資が必要となることに加え、受給者にとっては一時所得として課税されてしまう、という問題があります。一方Bは、結局会社の退職給付債務として残ることの他に、支給時までの利息付与をすべきかどうかという問題が発生します。

② 中途での選択変更、在籍者の選択変更の扱い
新入社員のときに「前払い制」を選択したが、途中で従来制度へ乗り換えたいというケースや、あるいはその逆のケースも出てくる可能性があります。A.「前払い→通常」、B.「通常→前払い」の何れのケースも、給付額の計算上不利になる可能性が高いと言えます。更にBの場合は、①と同様、勤務中にいったん支払われた"退職金"が税法上の退職所得として認められるかが問題になりますが、一般的には認められない、ということになるかと思います。
これについては、松下電器が「前払い(選択)制」を在籍社員に適用拡大した際に、退職所得として当局から承認されたことがあります。松下の場合、'99年秋のみの公募だったのですが、このような一回性の場合は退職所得として認められる可能性がありますが、いつでも自由に"乗り換え"ができるような制度設計をした場合は、こうした扱いは受けられません。
こうした問題を避けるために、例えば選択制の場合、新入社員について入社時に選択希望を聞き、さらに受給権が発生する前に再度確認するなどの対応が必要であると考えられます。

③ 金利変動、退職金水準改定への対応
長期にわたって制度を運用している間に、経済・経営環境の変化により、割引率の根拠数字であったところの金利が大幅に変動したり、支給水準を見直さなければならないことがあるかもしれませんが、すでに「前払い」された分については、遡及して改定することはできません(社員にとっての有利不利はわかりません)。このことは、制度導入時によく周知しておくべきです。

④ 前払い給付の方法
前払い給付については給与に上乗せして支給するのが一般的ですが、賞与に上乗せしての支給や、年度末に別途一時金で支給する例もあります。社会保険料の料率を勘案しての措置であったのと(総報酬制の導入によりその意義は無くなりました)、「評価反映型」の場合には、半期ごとの評価を反映させるために、賞与支給時に上乗せ支給するケースが多いようです。

以上のような制度設計・運用上の問題の他に、「前払い制」を入れることで社員の会社に対する帰属意識が弱まること、退職理由によって給付額を変えるということはできなくなるということなどを、大前提として踏まえておく必要はあるかと思います。

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