◆残業時間を毎月一定時間までと決めて、割増賃金を毎月定額払いにしてもよいか

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Qのロゴ.gifのサムネール画像当社では、年間を通じての月々の給与支給額をおおむね一定額とすることで予算管理の精度を高めたいと考えており、そのために残業時間を毎月一定時間までと決めて、割増賃金を毎月定額払い(固定残業制)にしたいと考えています。
そうすれば、毎月残業時間を計算する手間も省け、労務コストの面でもメリットはあるかと思うのですが、このやり方に何か法律上の問題はあるでしょうか。



Aのロゴ.gifのサムネール画像ご質問のような「固定残業制」であっても、社員の日々の実労働時間を把握することは必要ですが、実際に行われた時間外労働が、定額の残業手当を上回ることがなければ、割増賃金を毎月定額払いとすること自体に法律上の問題はありません。ただし、実際に行われた時間外労働がそれを上回った場合は、超過分については時間外割増賃金を支払わなければなりません。

 

■解説
1 固定残業制と割増賃金

労働基準法第37条第1項では、「労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない」と、時間外・休日労働および深夜業の割増賃金の支払いについて定めています。
ご質問は、残業時間を毎月一定時間までと決めて、割増賃金を毎月定額払いとする「固定残業制」をとることが、労働基準法第37条の定めに反するかどうかということになるかと思いますが、その前にまず、使用者は、原則として労働者の労働時間を把握し、法定労働時間あるいは三六協定で定めた残業限度時間を超えないように管理しなければならず、事業所で働く社員が、管理監督者やみなし労働時間制における裁量労働従事者など、労働基準法上の時間管理の適用除外者に該当しない限りは、日々の実動時間を把握することは必要であるということを踏まえておく必要があります。
そのうえで、その月の実際に行われた時間外労働等に対して労動基準法第37条で定められた方法で計算した金額がその定額残業手当の額を上回らない限りは、こうした「固定残業制」そのものは特に違法となるものではありません。しかし、労動基準法上支払うべき割増賃金額がその定額残業手当の額を上回るときは、その都度(賃金支払日ごとに)その差額を支払う必要があります。
裁判例でも、営業社員の時間外労働に対して支払ったセールス手当について、法定の割増賃金を上回る額であれば、法の趣旨は満たされ、割増賃金として一定額を支払うことは許されるとしつつ、法定の計算方法で算出した割増賃金の額が定額の手当の額を上回るときは、その差額の請求権を労働者側に認めたものがあります(「関西ソニー販売事件」昭63.10.26大阪地裁判決)。


2 固定残業制の留意点

定額残業手当は原則として割増賃金の算定基礎対象から除かれますが、営業手当などの諸手当に含めて支払っている場合は、その金額がいくらで何時間分の残業手当に相当するのか、また、その計算方法などを賃金規程などで明確に規定していなければ、固定残業代を含んだ営業手当等の全額が割増賃金の算定基礎対象となる賃金とみなされるおそれがあります。
また、実際に行なわれた残業が多く、割増賃金が定額残業手当を上回る月は、その上回った部分について、定額の残業手当とは別に差額を支払わなければならないのは前述の通りですが、実際に行なわれた残業が少なく、割増賃金が定額の残業手当を下回る月であっても、定額の残業手当は支払わなければならず、前者で生じた差額を後者のような残業の少ない月の定額の残業手当で充当したものとして、相殺することはできません。
さらにつけ加えるならば、残業時間を毎月一定時間までとして、それを超える時間残業することを就業規則等で禁止している場合においても、結果としてその上限を超える残業量になった場合は、すでに労務が提供されている以上、使用者は超えた時間分の残業代を払わなければなりませんのでご注意ください。




 

 

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