◆年俸制で雇用する契約社員にも割増賃金の支払いは必要か

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Qのロゴ.gifのサムネール画像当社ではこのたび、社員の新規採用にあたり、その一部を契約社員として雇用し、年俸制で賃金を決めたいと考えています。その場合に、年俸制で雇用されることになった契約社員にも、時間外労働に対しては割増賃金を支払わなければならないのでしょうか。


Aのロゴ.gifのサムネール画像契約社員を年俸制で雇用する場合にも、原則として法定労働時間を超えた時間については割増賃金を支払う必要があります。
ただし、年俸額が通常の労働時間の賃金に相当する部分と時間外労働による割増賃金に相当する部分に区分されている場合で、かつ、実際に月に行われた時間外労働につい本来支払うべき割増賃金の額が、年俸の月配分額のうちの割増賃金分としての固定額の範囲内であるならば、必ずしも年俸の月配分額とは別に割増賃金を支払う必要はありません。

■解説
1 年俸制と割増賃金

年俸制とは、賃金を年単位で決める賃金決定方法のことですが、年俸制を採用する場合にも、労働基準法第24条第2項で定める「毎月1回以上定期期日払い」の原則が適用されるため、年単位で決めた年俸の総額を月々に配分して支払う必要があります(年俸額の一部を賞与に配分することは差し支えありません)。
年俸制は、もともと労働時間の長さに関係なく、成果や役割をもとに賃金額を決定しようというものであり、時間外労働や割増賃金といった考えにはなじまない制度です。しかし、一般的には、契約社員であるからといって、労働基準法上の労働時間等の規定は除外されませんから、年俸制で雇用する契約社員が法定労働時間を超えて労働したり、法定休日に労働したりした場合には割増賃金を支払うことを免れることはできません。
ただし、労働基準法第41条では、管理監督者、機密事務取扱者については、労働時間に関する規制の一部の適用を除外しており、労働時間が法定時間を超えても割増賃金を支払う必要はないとされています。また、裁量労働制などのみなし労働時間制の場合には、実際の労働時間に関係なく、労使協定で定めたみなし時間に応じた一定額の割増賃金が支払われていればよいとされています(労働基準法第38条2から4)。
しかしながら、ご質問にある契約社員として採用しようとしている新規従業員の場合には、こうした管理監督者や裁量労働従事者に該当するケースはまずないものと思われますので、年俸制であっても、割増賃金の支払いを適正に行う必要があります。


2 年俸に時間外割増賃金分を含める方法

人件費予算を管理するうえで、あるいは個々の年収管理の観点から、契約社員に年俸制を適用しようとするのであれば、年俸総額に占める予想される年間の時間外割増賃金に相当する額を決め、年俸を月額給与に配分する際にも、月給額のうち、所定内賃金の部分の額と、予想される月の時間外割増賃金に相当する部分の額とに区分して、それぞれ明示するようにすればよいでしょう。
この場合にも社員の日々の実動時間を把握することは必要ですが、その定額の割増賃金の額が、実際に行われた時間外労働に対し労働基準法上支払うべき割増賃金の額を上回る限り、特に違法となるものではありません。このやり方については、行政解釈においても、「年俸に時間外労働等の割増賃金が含まれていることが明らかであって、割増賃金相当部分と通常の労働時間に対応する賃金部分とに区分することができ、かつ、割増賃金相当部分が法定の割増賃金額以上に支払われている場合には、労基法第37条に違反しない」とされています。
ただし、実際に行われた時間外労働が予想を上回り、その時間外労働に対し労働基準法上支払うべき割増賃金の額が定額の割増賃金の額を超えた場合には、その超えた分について、割増賃金を追加して支払わなければなりません。
また、賞与を含め1年を通じて確定した年俸額を定めている年俸制(「完全年俸制」、「確定年俸制」などという)の場合は、賞与は臨時に支給される賃金とはみなされず、時間外労働割増賃金の単価については、賞与相当部分を含めて決定された年俸額の12分の1を算定基礎として割増賃金を支払う必要があるため、注意が必要です。


□根拠法令等
・平12.3.8 基収78(年俸制適用労働者に係る割増賃金及び平均賃金の算定について)



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