〔45〕 算定シミュレーションと全体調整②-全体調整の考え方と制度設計のバリエーション

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● 全体調整の考え方
給付抑制の方向で制度設計した場合、社員の間に不満感や不安を引き起こす可能性もあります。しかし、現状の給付カーブと同じモデルカーブになるように設計することが目的ではないので、本末転倒にならないようにしたいものです。
45-01.gif一般に定年間近の社員ほど退職金に対する意識が高いので、中高齢層から不満の声が上がることが多いのですが、過去から現在までの勤務分の支給額は保障し、これから将来にかけての勤務分についてのみ新制度を適用するならば、残存勤務年数が少ないほど新制度の影響は小さくなります。(右図)
「評価反映型」にする場合は、評価に対する信頼度、現在の評価が何年も後に支払われる退職金に反映されることが受け入れられるかどうか、という企業風土の観点からの検討も必要です。







● 制度設計上のバリーション
支給水準や格差の全体調整は、原則として付与ポイントの修正というかたちで行います。修正後再度シミュレーションし、適正ならば設計完了です。ただし、制度設計自体のバリエーションもいくつか考えられます。2つばかり挙げ、それらのメリット、デメリットを示します。
① 同一等級に長期滞留している場合、単年度当たりの付与するポイント数を減らす
〔メリット〕 累積ポイントの高騰を抑制することになり、全体としては成果主義的傾向を強めることができます。(例えば、中途採用者と長期勤続者の差が縮まる、など)
〔デメリット〕 個々のヒストリーデータ(履歴)の管理が必要になるなど、運用が複雑になります。例えば、昇級・降級(昇進・離任)を繰り返した場合の扱いをどうするか予め決めておく必要がありますし、等級制度を改定(等級区分の新設や統合)した場合にも、運用が複雑化します。
② 退職時の役職を加味する(最終役職ポイント)
〔メリット〕 このパターンは、職能資格制度でポイント制の退職金制度を入れている企業に見られます。職能資格基準のポイント付与においては、貢献度反映の要素は強まります。
〔デメリット〕 役割等級制度で等級基準でのポイントの付与の場合、最終役職ポイントの付与は、意味合いが重複するので合理性が希薄です。役職任免が硬直化する危険性もあります。

以上から、全体調整は、基本的には付与ポイント修正で行うのが標準的手法と思われます

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