〔28〕 プロフィット・シェア・ボーナス(利益還元賞与)-好業績時に利益の一部を社員に還元

● プロフィット・シェア・ボーナスとインセンティブ・ボーナス
欧米企業では、社員のモチベーションを促す業績分配システムとして、プロフィット・シェア・ボーナス(ペイ・バック)やインセンティブ・ボーナスがよく見られます。日本企業でも、通常の賞与とは別に決算賞与(期末賞与)や報奨金制度を設けているところは多いですが、ほぼ同趣の流れを汲むものと見てよいでしょう。
プロフィット・シェア・ボーナスは目標利益(営業利益または経常利益)を超過したときに全社的に支給されるものを指すことが多いのですが、インセンティブ・ボーナスは目標とする売上高(または売上総利益)を達成したときに部門や個人に対して支給されることが多いようです。
ですから、プロフィット・シェア・ボーナスは利益還元の意味合いが強く、決算賞与に近い性格を持つものであるのに対し、インセンティブ・ボーナスは日本の報奨金制度に近い(ただし報奨金制度は売上げ目標のみが対象となるとは限りません)と捉えてよいかと思います。

● プロフィット・シェア・ボーナスの支給の考え方と配分方法
プロフィット・シェア・ボーナスは、業績が一定の基準より良いときにだけ適用されるのが原則です。業績の良し悪しの指標は、主に営業利益(または経常利益)の目標達成度になります。
全社の営業利益を指標とするので、本来は全社的に支給されるものですが、定期賞与ではないので、貢献度の高かった部門や個人のみ支給する(あるいは"重点的に"支給する)という柔軟な考え方で運用してよいかと思います。全社的に低調だったが特定部門の利益貢献が著しい場合や、配分原資が小さくて全員に配分しきれない場合などは、特にその方がよいと思います。


28-01.gif配分方法としては、賞与配分の「ポイント方式」を準用する方法があります。
右図は、営業部門・管理部門の一定評価以上の社員に支給した例ですが、配分ポイントを定め、該当者を当てはめて総ポイント数を求め、原資総額を総ポイント数で割ってポイント単価および各該当者の支給額を決めています。
※ 決算賞与として支給する場合は、決算日までにすべての支給対象者に支給額を通知し、かつ決算日から1ヶ月以内に支払われるという条件を満たさなければ、当期の損金として認められません。
ですから、仮決算後に回収不能債権が露見するような会社の場合、まずそうした体質を改善しない限り制度が機能しないことになります。


〔29〕 インセンティブ・ボーナス(報奨金)-わかりやすく達成感のある仕組みにする

● インセンティブ・ボーナスのポイント
インセンティブ・ボーナスという用語は、日本では定期賞与のうちの業績反映部分を指して用いられることもありますが、ここでは報奨金(褒賞金)制度という意味で用います。
インセンティブ・ボーナスは、わかりやすく達成感のある仕組みにすることがポイントです。中小企業等で実際に実施されている、そうした報奨金制度のいくつかのタイプ例を挙げてみます。
① 売上高目標達成基準・Aタイプ 【達成率基準】
115%以上2万円、110%以上1万6千円、105%以上1万2千円、100%以上8千円
② 売上高目標達成基準・Bタイプ 【社内順位】
1位3万円、2位2万円、3位1万円、4・5位5千円
③ 新規開発基準・Aタイプ 【売上高基準】
800万円以上3万円、600万円以上2万円、400万円以上1万円、200万円以上1万円、
④ 新規開発基準・Bタイプ 【件数基準】
4件2万円、3件1万5千円、2件1万円、1件5千円
上の例は月次ベースですが、業態や業務内容によっては四半期、半期ベースでよりまとまった金額を支給するやり方の方が、効率的かつ効果的な場合もあります。

● 業績連動報酬の考え方
プロフィット・シェア・ボーナス(利益還元賞与)、インセンティブ・ボーナス(報奨金)、コミッション(歩合給)などはすべて、毎期の範囲内で会社がその社員に支給する報酬額を変動させるという意味で、業績連動報酬にあたります。ですから、短期インセンティブ(刺激給)とも言えます。
ストックオプションのような新たなインセンティブが登場し、今どき報奨金などは古いやり方ではないかと考える経営者の方もいますが、権利行使期間の制限があるストックオプションは、厳密な意味では短期インセンティブではありません。その点、利益還元賞与や報奨金は、報酬に利益貢献の対価としてのメッセージを持たせる上での強力かつ即時的なメッセージになります。
また、期中での業績測定や原資配分の難しさ、間接部門の成果判定の難しさ、直接部門との機会均衡の問題などから、制度の検討や導入を躊躇する人事担当者がおられますが、導入時にすべての問題をクリアしようとは考えずに、制度策定の方向性として次の3点を見据え、運用しながら制度を拡充し、納得性のある社内基準を整備していくという考え方でよいと思います。
① 社員全員を何らかの業績連動報酬の対象とすることができるようにする
② どのような業績・成果をあげた場合にどれぐらいの報酬がでるか予め示せるようにする
③ 役職や職群別に支給水準(支給パターン)を定める
③については、全員が業績連動報酬の対象となることを前提としつつ、例えば管理職は一般職よりも、営業・事業開発部門の社員はスタッフ部門の社員よりも業績が悪ければ業績賞与(定期賞与)などでシビアな査定を受けるリスクを負っている分、業績が良ければ相応の業績賞与に加えて高い金額の報奨金が得られるチャンスもあるというように、自社内での職層・職群別の相対的なハイリスクハイリターン、ローリスクローリターン構造を定めるということです。