中小企業における働き方改革「同一労働同一賃金」の実践手順
中小企業における働き方改革「同一労働同一賃金」の実践手順 (共著)著者:二宮, 住美賀子, 大関ひろ美, 和田泰明, 横田和美, 市村剛史, 杉山秀文
出版社:労働調査会
発行年月:2021年12月
ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト 人事・人材開発2級・3級[第3版]
ビジネス・キャリア®検定試験 過去問題集(解説付き) 人事・人材開発2・3級
労働・社会保障実務講義: 社会保険労務士の仕事と役割
ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト 人事・人材開発2級・3級[第二版]
ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト 人事・人材開発2級・3級[第二版]


③管理職の基本知識とリーダーシップ
Webセミナー「③管理職の基本知識とリーダーシップ」を掲載しました。
②これからの部下指導のあり方
Webセミナー「②これからの部下指導のあり方」を掲載しました。
①部下をどう評価するか Ver.4.0
Webセミナー「①部下をどう評価するか Ver.4.0」を掲載しました。
◆退職後に判明した懲戒解雇事由をもとに、退職金を不支給とすることができるか
先日当社を退職した社員について、在職中に懲戒解雇事由に相当する非違行為があったことが、退職後に判明しました。このような場合、退職金を不支給とすることはできるでしょうか。
また、事実関係の究明に時間を要する場合、退職金の支払いを留保することはできるでしょうか。
すでに退職した社員を懲戒解雇することはできないため、懲戒解雇を理由に退職金を不支給とすることはできません。退職後に判明した事由をもとに退職金を不支給とするには、「懲戒解雇に相当する事由が認められるとき」「退職金支給日までの間に在職中の行為について懲戒解雇事由が認められた場合」などにおいても退職金を減額または不支給とすることがある旨を、あらかじめ就業規則や退職金規程に定めておくことが望ましいでしょう。
事実関係の究明に時間を要するため、退職金の支払いを留保する場合も、「当社が必要と認める調査を実施する間、支払いを留保できる」といった定めをしておくことが望ましいと考えます。
■解説
1 退職後に判明した懲戒解雇事由をもとに退職金を不支給とするには
多くの事業所では、従業員が重大な非違行為をした場合の制裁として、懲戒解雇できる旨の規定を設けるとともに、懲戒解雇の場合には退職金を不支給とするか、またはその一部を減額できる旨の規定を設けています。
しかし、ご質問のケースでは、すでに労働者が退職しており、当事者間の雇用関係は終了しています。そのため、使用者による解雇すなわち雇用契約を終了させる旨の意思表示は、その対象を失っているために意味を持たず、懲戒解雇することは不可能です。したがって、懲戒解雇を理由として退職金の不支給または減額を行うことはできないということになります。
そうすると、就業規則や退職金規程でその支給条件等が明確に定められた退職金は、労働基準法上の賃金として扱われますので、通常支払う額を全額支給しなければなりません。支給条件や支給額の算定方法が定められている退職金は、労働者にとって賃金債権となり、恣意的に減額したり支払わなかったりすることはできないからです。
そこで、実務上の対応としては、あらかじめ就業規則や退職金規程において、「懲戒解雇の場合」に加えて、「懲戒解雇に相当する事由が認められるとき」あるいは「退職金支給日までの間に在職中の行為について懲戒解雇事由が認められた場合」も、減額または不支給とすることがある旨を定めておき、ご質問のようなケースにおいて不支給等の決定をする際の契約上の根拠とすることが考えられます。
実際の裁判例では、このような減額・不支給事由が定められていない場合でも、労働者の在職中の非違行為が重大かつ悪質なものであれば、労働者の退職後になされた退職金の不支給決定が認められた例も若干はあります。しかし、労務管理上の観点からも、こうした減額・不支給事由をあらかじめ規定しておくことが望ましいといえるでしょう。
2 事実関係究明のため退職金の支払いを留保することはできるか
就業規則や退職金規程で退職金について定める場合は、退職金の支払い期日についても必ず定めておかなければなりません。その場合、労働基準法23条1項の「労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があった場合においては、7日以内に賃金を支払わなければならない」との定めの適用は受けないため、支払い期日は任意に定めることができます。就業規則等に退職金の支払い時期が定められていれば、権利者の請求があったとしても、賃金と同じように7日以内に支払う必要はありません。就業規則で定める支払い期日については、必ずしも支給月日まで特定しておく必要はなく、例えば、「退職金は、原則として退職の日から1カ月以内に支給する」などのように、退職の日から一定期間以内の期間に支払うとする定め方でも差し支えありません。
こうした定めがあれば、その間に事実関係究明のための調査をすることは可能かと思われますが、それでも退職金支払期日まで時間的に余裕がないといった事態が生じることも考えられます。
労働基準法23条2項では、労働者の請求がある場合にも、使用者が異議のある部分の支払いを留保することは認めていますが、さらに支払いを留保する根拠を明確にするためには、「会社が必要と認める調査を実施する間、支払いを留保できる」といった定めをしておくことが望ましいと考えます。
□根拠法令等
・労基法23(金品の返還)、24(賃金の支払)
・昭26.2.27基収5483、昭63.3.14基発150(退職手当の支払時期)
□ 判例等
・在職中に懲戒解雇に匹敵する重大な背信行為を行った者の退職金請求権を否定した裁判例(平8.4.26東京地判・東京ゼネラル事件、平12.12.18東京地判・アイビ・プロテック事件)
1 退職後に判明した懲戒解雇事由をもとに退職金を不支給とするには
多くの事業所では、従業員が重大な非違行為をした場合の制裁として、懲戒解雇できる旨の規定を設けるとともに、懲戒解雇の場合には退職金を不支給とするか、またはその一部を減額できる旨の規定を設けています。
しかし、ご質問のケースでは、すでに労働者が退職しており、当事者間の雇用関係は終了しています。そのため、使用者による解雇すなわち雇用契約を終了させる旨の意思表示は、その対象を失っているために意味を持たず、懲戒解雇することは不可能です。したがって、懲戒解雇を理由として退職金の不支給または減額を行うことはできないということになります。
そうすると、就業規則や退職金規程でその支給条件等が明確に定められた退職金は、労働基準法上の賃金として扱われますので、通常支払う額を全額支給しなければなりません。支給条件や支給額の算定方法が定められている退職金は、労働者にとって賃金債権となり、恣意的に減額したり支払わなかったりすることはできないからです。
そこで、実務上の対応としては、あらかじめ就業規則や退職金規程において、「懲戒解雇の場合」に加えて、「懲戒解雇に相当する事由が認められるとき」あるいは「退職金支給日までの間に在職中の行為について懲戒解雇事由が認められた場合」も、減額または不支給とすることがある旨を定めておき、ご質問のようなケースにおいて不支給等の決定をする際の契約上の根拠とすることが考えられます。
実際の裁判例では、このような減額・不支給事由が定められていない場合でも、労働者の在職中の非違行為が重大かつ悪質なものであれば、労働者の退職後になされた退職金の不支給決定が認められた例も若干はあります。しかし、労務管理上の観点からも、こうした減額・不支給事由をあらかじめ規定しておくことが望ましいといえるでしょう。
2 事実関係究明のため退職金の支払いを留保することはできるか
就業規則や退職金規程で退職金について定める場合は、退職金の支払い期日についても必ず定めておかなければなりません。その場合、労働基準法23条1項の「労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があった場合においては、7日以内に賃金を支払わなければならない」との定めの適用は受けないため、支払い期日は任意に定めることができます。就業規則等に退職金の支払い時期が定められていれば、権利者の請求があったとしても、賃金と同じように7日以内に支払う必要はありません。就業規則で定める支払い期日については、必ずしも支給月日まで特定しておく必要はなく、例えば、「退職金は、原則として退職の日から1カ月以内に支給する」などのように、退職の日から一定期間以内の期間に支払うとする定め方でも差し支えありません。
こうした定めがあれば、その間に事実関係究明のための調査をすることは可能かと思われますが、それでも退職金支払期日まで時間的に余裕がないといった事態が生じることも考えられます。
労働基準法23条2項では、労働者の請求がある場合にも、使用者が異議のある部分の支払いを留保することは認めていますが、さらに支払いを留保する根拠を明確にするためには、「会社が必要と認める調査を実施する間、支払いを留保できる」といった定めをしておくことが望ましいと考えます。
□根拠法令等
・労基法23(金品の返還)、24(賃金の支払)
・昭26.2.27基収5483、昭63.3.14基発150(退職手当の支払時期)
□ 判例等
・在職中に懲戒解雇に匹敵する重大な背信行為を行った者の退職金請求権を否定した裁判例(平8.4.26東京地判・東京ゼネラル事件、平12.12.18東京地判・アイビ・プロテック事件)
◆社員本人の同意があれば、貸付金の残額を退職金で相殺できるか
当社では、社員に対する福利厚生施策の一環として、社員融資制度(貸付金制度)を独自に設けることを検討中ですが、制度を利用した社員が退職する際に、貸付金の残額を退職金で相殺することは可能でしょうか。
退職する社員本人の同意があれば、退職金から貸付金の残額を一括して返済させることも可能です。ただし、その同意は、本人の完全な自由意思基づくものであることが客観的に認められる必要があります。
■解説
1 前借金相殺の禁止(労基法17条)との関係
銀行等との提携ローンとは別に使用者が独自に融資制度(貸付金制度)を設けている場合において、当該制度を利用している労働者が退職する際に、その貸付金の残額を退職金で相殺することができるかどうかをめぐっては、退職金の支給条件が労働契約や就業規則、労働協約等によって明確化されている場合、その退職金は労働基準法11条でいう賃金に該当するため、同法17条の「使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない」という「前借金相殺の禁止」規定に抵触しないかが、まず問題になります。
この点について、行政解釈では、労働者が使用者から人的信用に基づいて受ける金融であって明らかに身分的拘束を伴わないものは、「労働することを条件とする前貸の債権」には当たらないとしています。
使用者からの住宅建設資金の貸付に対する返済金のように融資額および返済額ともに相当高額に上り、その返済期間も相当長期間にわたるものであっても、①貸付の原因が真に労働者の便宜のためのものであり、労働者からの申出に基づくものであること、②貸付期間は必要を満たしえる範囲であり、賃金や退職金などによって生活を脅威し得ない程度に返済可能であること、③返済前であっても退職の自由が制約されていないこと等、当該貸付金が身分的拘束を伴わないことが明らかである場合は、法17条には抵触しないと解されています。
2 全額払いの原則(労基法24条)との関係
また、「賃金支払五原則」の1つとして、労基法24条1項に「全額払いの原則」が定められていますが、使用者による賃金債権の相殺も、「全額払いの原則」が禁止する賃金の控除に該当するため、法11条でいう賃金に該当するところの退職金から貸付金の残額を控除することが同原則に抵触しないかということが、次に問題となります。
この点について、同原則への抵触を回避するためには、「当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる」(法24条1項ただし書後段)との定めに沿って、労使間で控除協定を締結しなければなりません。
この協定は「二四協定」などと呼ばれ、「三六協定」とは異なり、労働基準監督署への届出を必要としません。「二四協定」では、「退職時に貸付金等の未返済債務がある場合は、退職金から一括控除することができる」などというように、未返済債務を退職金で相殺することについての明確な定めがされていることが必要です。
この協定が結ばれることにより、労働者の合意を得ないで行う一方的な控除であれ、労働者の合意を得て行う控除であれ、労基法違反は回避されます。ただし、それは、「二四協定」が締結されていれば、退職金から未返済債務を控除しても違法にはならないという刑事免責がなされるということであり、相殺の民事的効力を生じせしめるには、本人の完全な自由意思基づくものであることが必要となります。
この場合の労働者の同意の意思表示は、厳密には、退職金支給時の意思表示であることが必要となります。したがって、実際に退職金から貸付金等の未返済債務を控除するには、「二四協定」が締結されている場合や、貸付時に退職金と未返済債務の相殺を取り決めた契約書を交わしている場合であっても、その都度、本人の同意が必要となります。
裁判例では、労働者がその自由な意思に基づき相殺を同意したものであると認めるに足りる合理的理由が客観的に存在するときは、その同意を得てした相殺は「全額払いの原則」に違反しないとの解釈を打ち出しており、その限りにおいては、協定に基づかない控除も許容されています。
3 相殺する場合の限度額について
相殺する場合の限度額については、労基法24条は協定に基づく控除についての限度額を設けておらず、行政解釈上も、控除される金額が賃金額の一部である限り控除額についての限度はないとされています。
ただし、民法510条及び民事執行法152条2項の規定により、退職金の額の4分の3に相当する部分については、使用者側から相殺することはできないとされているのため、使用者が労働者の同意を得ないで一方的に相殺を行う場合には、退職金の4分の1を超える額については控除できないということになります。
しかしながら、「二四協定」があり、かつ、労働者の同意がある場合はこの規定に服するものではなく、したがって、控除される金額が退職金の一部である限り、控除額についての限度はないという前記の行政解釈に立ち返るため、未返済額の全額を退職金と相殺しても差し支えありません。
□根拠法令等
・労働基準法17(前借金相殺の禁止)、24(賃金の支払)①(全額払いの原則)
・昭22.9.13 発基1、昭33.2.13 基発90(前借金相殺の禁止の趣旨)
・昭29.12.23基収6185号、昭63.03.14基発150(控除額の限度)
・民法510(差押禁止債権を受働債権とする相殺の禁止)
・民事執行法152(差押禁止債権)②(退職手当)
□ 判例等
「使用者が労働者の同意を得て労働者の退職金債権に対してする相殺は、この同意が労働者の自由な意思に基づいてなされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、労働基準法二四条一項本文の全額払いの原則に違反しない」とされたもの。(平2.11.26 最二小判・日新製鋼事件)
・内容についての無断転載は固くお断りいたします。
![人事・人材開発2級[第3版]](http://hurec.bz/wp/wp-content/uploads/2015/03/fcea65fefb0ab43312b5b5dd16bcba1e.jpg)



