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シニアの問題を、本人の意識・心構えの問題にすり替えてはならないというのが趣旨だが...。

劣化するシニア社員2.JPG劣化するシニア社員4.JPG  「新型うつ」な人々.jpg
劣化するシニア社員 (日経プレミアシリーズ)』 『「新型うつ」な人々 (日経プレミアシリーズ)

 『「新型うつ」な人々』('11年/日経プレミアシリーズ)などの著書のある産業カウンセラーによる本書は、仕事を選り好む、マネジメントに口を出す、「あと数年だから」と無気力に陥る、過去の経験や職位を振りかざす、「もう年だから」を理由に努力をしない等々、シニア社員の"問題児化"を六つのタイプに分類し、筆者が遭遇した実例を交えながら、シニア問題の根本要因に迫っています。

 第1章「『縦横無尽』に振る舞うシニア社員たち」で、その6タイプを示し、ケースを挙げて典型的な口癖などと示すとともに、そのケースの最後に周囲の声が付されており、それらは以下の通りです。
 ①自分の不遇への共感を周囲に求める「嘆きタイプ」
 「その仕事はちょっとね...」
  そんな人には「そんなに仕事をしたくなければ辞めてしまえ!」と叫びたくなる。
 ②年下の社員に対する依存が止まらない「おんぶに抱っこタイプ」
 「ねえねえ、パソコン教えて」
  「私はあなたのパソコンインストラクターではない!」と叫びたくなって、結局「そんなに働きたくないなら、早く辞めてよ!」と叫びたい。
 ③自分で選んだ仕事しかしない「わが道を行くタイプ」
 「1人でできる仕事がしたい」
  「いい加減、チームで働くことを覚えろ!」と叫びたい。
 ④職場を地域のサークルと勘違い「ご隠居タイプ」
 「その指輪、彼氏のプレゼント?」
  「頼むから、1日も早く全員辞めてほしい。その仕事は無償で引き受けてやる!」と叫びたい。
 ⑤安請け合いが最悪のトラブルを生む「無責任タイプ」
 「まあ、なんとかしますよ」
  「1日も早く、辞めてくれ!」と叫びたい。
 ⑥権限を超越し暴走する「勘違いやり過ぎタイプ」
 「俺が若手にビシッと言ってやる」
  「あなたにそんなことは期待していない、自分の身分をわきまえろ!」と叫びたい。
う~ん、これを読んで、確かにこういうシニアはいるなあと思った人は多いのでは。
 第2章「なぜ『問題児』化するのか」では、タイプごとに本人の抱える意識面での背景要因を分析していますが、これ読むと、本人の人格的要素が占める割合が大きいような...。

 ここまで本人責任論っぽいですが、第3章「ほんとうは本人が苦しい」では一転してシニア本人の側に立ち、上司サイドに問題があって職場適応でつまずいたり、更に職場適応への失敗からメンタル不調に陥ったりするケースなどが紹介されています。

 そして、第4章「その職場環境がやる気を奪う」では、無視できない環境・状況面での問題を取り上げ、第5章「周囲の社員の危険な思い込み」では、周囲の様々な思い込みが状況をますます悪化させることに繋がる場合があることを示唆しています。

 更に「実践編」として、シニア社員を受け入れる側からとシニア社員本人からのアプローチを示し(チェックリストのようなもの)、終章「『「意味』があれば仕事はつらくない」で、「価値観の創造」ということについて述べています。

 全体を通して、シニア社員の職場で問題になるケースや本人が辛い思いを抱えているケースを具体的に示し、環境・状況面の問題性、本人の意識の問題性、周囲の意識の問題性など幅広い観点から分析することで、シニアの問題を、本人の意識・心構えの問題にすり替えて考えてはならないことを訴えています。周囲が「いい大人なのだから、周囲にとけ込む努力をしてほしい」「わからないときは、本人から教えを請うべきである」と明らかな上から目線から捉えているとしたら、それはシニア社員を完全に拒絶する意識とも言え、"厄介者"発想に根ざして、はじめから配慮するつもりがないのなら、摩擦が起きてくるのも当然だというのは穿った指摘でした。

 但し、第1章「『縦横無尽』に振る舞うシニア社員たち」が全体の中で相対的にインパクトあり過ぎて(マンガ的であり過ぎて?)、"あるある本"みたいな(うっ憤解消本みたいな)印象が強くなってしまった感じもします(タイトルもさることながら、帯にも「"問題シニア"の驚くべき生態とは?」とあるくらいだからなあ)。それに比べると、後半は、産業カウンセラーという立場からなのか、企業内外の制度や仕組みには触れず、ヒューマンスキルでの対応のみで事を解決しようとしている分、ちょっと弱かったように思われました。

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「社内出世」と「プロとして生きること」の両方を論じている分、インパクトに欠けるか。

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出世する人は人事評価を気にしない (日経プレミアシリーズ)

 本書では、冒頭で、経営層に出世した人たちの特徴として、自分の人事評価を気にしていなかったことを挙げています。そして、その背景には彼らに共通した行動があり、それを整理する試みが本書であるとのことです。

 企業内では、目の前の仕事で結果を出していてもある日昇進できなくなることがあり、一方で、それまで評価の低かった人がいきなり出世することがあるとしています。なぜそうしたことが起きるのかというと、一般社員層の間の昇進基準は、今担当している仕事での評価結果に基づくのに対し、管理職になるときには、別の昇進基準が用いられる――つまり、上位者から「使われる側」でいる間は「競争」が基本だが、それ以上の「使う側」になるには「選ばれる」ルールが変わる、すなわち互いに選び合う立場になる「協奏」になるタイミングがあると指摘しています。

 一般社員の間は「卒業基準」で、課長からは「入学基準」となり、「職務主義」のもとでは、課長として優秀でも部長にはなれないといった本書の指摘は、一般のビジネスパーソン(とりわけ若い人たち)にとっては新たな知見として受け止められる面もあるかもしれませんが、人事パーソンにとってはある種コモンセンスに近いものではないでしょうか。ただし、ケース・ストーリーも交え、そうしたことが分かりやすく書かれているため、おさらい的に読むにはいいかもしれません。

 課長の手前までは「できる人」が出世するが、さらに上にいくには「できる」だけでよいのか、管理職止まりの人と経営陣になる人は何が違うのかといったことが、会社側のアセスメント基準として、また、ビジネスパーソンに対する啓発的示唆として説かれています。因みに、「出世する人」の行動パターンとして著者は、第一につながりを大事にしていること、第二に質問を繰り返していること、を挙げています。

 さらに、40歳からの10年間、課長時代の働き方がその後の人生を決定するとして、40歳は第二のキャリアの出発点であるとし、第二のスタートを切るにあたって自ら人的資本の棚卸しを行い、キャリアの再設計を行うことを提唱しています。

 その上で、40歳からのキャリアの選択肢として、社内プロフェッショナルになるという生き方を提唱しています。併せて、企業におけるプロフェッショナルの処遇の在り方が、本来の専門性を評価する方向に変わってきていることも指摘しています。ただし、プロフェッショナルとして認められるには高い評価を得る必要があり、では、評価を意識せずに専門性を認められるには、組織でどう働けばよいかといったことを、最終章にかけて指南しています。

 そして、プロフェッショナルとして認められるには、「明確な専門性がある」ことが第一条件であり、プロフェッショナルを目指す人なら、この条件はクリアしやすいだろうが、テクニックが求められるのは第二の条件の「ビジネスモデルに貢献する」ことであるとしています。

 以上の流れでも分かるように、途中までは「出世する」にはどうすればよいかということが書かれていたのが、途中から、組織の中でプロフェッショナルとして生きるにはどうすればよいか、言い換えれば、部下のいない管理職としての地位にあり続けるにはどうすればよいかという話に変わってきているように思いました。

 本書では、「出世」という言葉を社内での昇進のことだけではなく、起業して成功したり、転職して新たなキャリアやさらに高いポジションを得ることも含めて指しているとのことです。ならば、結局、本書の本来の趣旨は、社内外に関わらずプロフェッショナルを目指せということになるのでしょうか。

 プロフェッショナルとは、自分で自分の仕事に評価を下す人と解すれば、必ずしもタイトルから大きく外れるものではないともとれますが、「出世する人は―」というタイトルは間違いなくアイキャッチになっていると言えるでしょう。

 若年層向けの啓発書としてはそう悪くないと思いました。ただ、結局、前半部分は基本的に社内での出世について書かれていて、「それが叶わなくなった場合」に備えて今のうちにどうしておけばよいかということが後半部分に書かれているような気もしました。

 これでは、「とりあえず社長レースに参加しておこう」という"従来型サラリーマン"の発想を変えるものではなく、「本旨」であるべきところの後半部分が前半部分の「保険」に思えてしまう分、インパクトは弱かったように思います(ゼネラリストを目指す人、スペシャリストを目指す人、ゼネラリストを目指してダメだったらスペシャリストを目指す人の全てを読者ターゲットとして取り込もうとした?従来型サラリーマン"マジョリティ"との相性は良さそうだけれど)。

《読書MEMO》
●目次
第1章 評価が低いあの人が、なぜ出世するのか――「使う側」「使われる側」の壁
第2章 課長手前までは「できる人」が出世する――組織における人事評価と昇進のルール
第3章 役員に上がるヒントは、ダイエット本の中にある――経営層に出世する人たち
第4章 採用試験の本番は40歳から始まる――課長ポストからのキャリアの見直し
第5章 飲みに行く相手にあなたの価値は表れる――第二のキャリアを設計する
第6章 レースの外で、居場所を確保する方法――組織内プロフェッショナルという生き残り方
第7章 「求められる人」であり続けるために――会社の外にあるキャリア
おわりに 「あしたの人事の話をしよう」

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取り上げた事例が多すぎて「不祥事カタログ」みたいになってしまった印象も。

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不祥事は、誰が起こすのか (日経プレミアシリーズ)』 マックス・ベイザーマン『倫理の死角ーなぜ人と企業は判断を誤るのか

 元日銀マンであり、日銀在職中には自ら考査の現場を担当したという著者が、データ漏洩、偽装表示、横領、反社会的勢力など、絶え間なく発覚する近年のさまざまな企業不祥事の数々を俎上に載せ、どこからそれは起こるのか、原因の解明に挑んだ本です。

 不祥事を起こした企業が事後に発表した第三者委員会の報告書を読み解くなどして、報道としてなされたもの以上に正確で詳細な情報を把握したうえで論考を進める姿勢には信頼が持てるとともに、内容的にも興味深いものでした。

 但し、ちょっと詰め込み過ぎだったかな。ここ何年かでこんなにも多くの多種多様の不祥事があったのかとあきれるくらい多くの不祥事の事例を取り上げていて、人命を損なう事故乃至その恐れのある事故(食品汚染・運輸事故・産業設備事故・医療過誤・設計瑕疵等)及びその隠蔽に由来する刑事犯罪から、金融に係るもの(粉飾決算・不正融資・インサイダー取引等)、官民・民民間に係るもの(談合・汚職・横領・贈収賄・カルテル・下請いじめ等)まで、確かにきちっと分類されているし、分析の方法論も理解できるものの、あまりに事例の拾い方が網羅的であり過ぎたために、結果的に「不祥事カタログ」みたいになってしまい、必ずしも読み易くない上に、1つ1つの案件の分析がやや浅くなってしまったようにも思えたのが残念です(多くを取り上げ過ぎることで、逆に著者の持ち味が見えてこない)。

 本書においても取り上げられているマックス・ベイザーマンの『倫理の死角』('13年/エヌティティ出版)にもありましたが、結論的には、不祥事を起こしやすい企業には共通の「文化」があり、そこでは正論より「大人の事情」が優先され、或いはまた、ミス発生に過剰なプレッシャーをかけたり、しがらみ構造が存在したりするということなのでしょう。M&Aを繰り返した結果、経営の統制が弱くなって現場任せが放置されていたりすることもミス等に繋がると、ガバナンスの盲点なども指摘しています。

デザートに異物混入.jpg 最近マクドナルドで相次いだ異物混入問題は、食べ物に異物なんてあり得ないという前提で商品を口にする消費者と、完全な混入ゼロは困難とする食品業界との認識のズレを浮き彫りにしましたが、本書でもビッグデータから不正を見つけ出す手法など最新のテクノロジーを紹介する一方で、現実には不正・不祥事の「ゼロ」はありえず、必ず起きるという前提の下でいかに頻度を減らすかが予防のポイントだと述べているのが興味深い点でした

マクドナルド、「デザートに異物混入、子どもけが」を受け会見 2015/01/07 19:00 【共同通信】 

《読書MEMO》
植村 修一 『不祥事は、誰が起こすのか』.jpg●「不祥事防止のための10ケ条」
  第1条:人は弱い。必ずミスをする
  第2条:予兆を逃すな 
  第3条:システムにバグはつきもの  
  第4条:権威勾配の傾きに気をつけろ 
  第5条:挙証責任を転嫁するな 
  第6条:ルールは守れ 
  第7条:正論を大事にしろ 
  第8条:副作用には気をつけろ 
  第9条:組織文化を自覚しろ  
  第10条:大事な事(本分)を忘れるな

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「一見、労働者の保護のためになりそうな政策が逆効果となるおそれがある」。

雇用改革の真実3.jpg大内 伸哉 『雇用改革の真実』2.jpg大内 伸哉 『雇用改革の真実』.jpg雇用改革の真実 (日経プレミアシリーズ)

 労働法の研究者による本書は、解雇、限定正社員、有期雇用、派遣、賃金、労働時間、ワークライフバランス、高齢者という8つのトピックを取り上げ、政府がどのように雇用政策を進めようとしているのか、それについてどう評価すべきなのか、また、それらが働く人の今後の働き方にどのように影響するのかを読み解いていくことを目的として書かれています。

雇用社会の25の疑問.jpg 本書の特徴として、政府の様々な雇用施策がかえって労働者の利益を損ねたり企業の自発的努力を阻害したりし、また、労使自治を揺るがすことにもなりかねないという懸念を表明している点が挙げられます。こうした考え方は、同著者の『雇用社会の25の疑問―労働法再入門』(2007年/ 弘文堂)においてもすでに示されていましたが、前著が入門書の形をとりつつ、こうした問題に対する多角的な視点を提示したものであったのに対し、今回は、近年の法改正の動きや雇用施策を巡る論議を踏まえ、トピカルなテーマについてのさらに踏み込んだ論考となっています。

 例えば、労働契約法における無期転換制度について、一般には、本来は無期雇用で働くべき労働者が使用者による有期雇用制限によって不利益を受けていた状況が、この制度により改善が図られると評価されていますが、著者は、この制度は企業に対して無期転換が起こらないように短期に雇用を打ち切るという行動を誘発する危険があるとして批判的に「再評価」しています。個人的には、この章はたいへん説得力があるように思えました(第3章「有期雇用を規制しても正社員は増えない」)。

 このほかに、それぞれのテーマに絡めて、「解雇しやすくなれば働くチャンスが広がる」「政府が賃上げをさせても労働者は豊かにならない」といった刺激的な章タイトルが並びますが、各章を読んでみれば、概ねナルホドと思える論考になっているように思えました。「ホワイトカラー・エグゼンプションは悪法ではない」という章もあれば(実は自分自身も、相当以前からホワイトカラー・エグゼンプションは悪法ではないと思っているのだが)、「育児休業の充実は女性にとって朗報か」という章などもあり、一方的に政府の雇用施策を非難したりまたは受け容れたりするのではなく、テーマごとに著者の考えを示しています。従って読者も、著者の問題提起を受け、自分なりに「再評価」を試みる読み方になるかと思います。

濱口桂一郎 日本の雇用終了.jpg『日本の雇用終了―労働局あっせん事例から』(2012年)などを読むと、中小企業における労働紛争の解決策として、実態的にはすでに行われているようにも思いました。ただし、著者は、法制度として解雇の金銭的解決が認められた場合の効果という視点から論じており、政府の雇用流動化施策やセーフティネットの拡充ということを付帯条件として挙げています。ただし、この付帯条件の部分が現実にはなかなか難しいのではないかという思いもしなくはありませんでした。

 「一見、労働者の保護のためになりそうな政策が逆効果となるおそれがある」という視点を提示している点では、著者の本を初めて読む読者には章タイトルに相応の"刺激的"な内容であり、実務者にとってただただ法改正を追いかけるのではなく、いったん自身でその意義と問題点を考えてみる契機となる本かと思います。その意味で人事パーソンを初め労働法の実務に携わる人にとっては「教養」とし押さえておきたい本です。

 以前、別のところで本書の書評を書いて、『雇用社会の25の疑問』をはじめ著者の本を何冊か読みつけている読者からすれば、「新機軸」と言うよりは「続編」といったという印象も受けるとしたところ、著者のブログの中で、著者が同じであるという意味では続編であるけれども、「『雇用改革の真実』はもっぱら政策論で、著者としては『雇用社会の25の疑問』とはかなり異なるテイストの本だと思っている」とのコメントがあり、言われてみれば確かにその通りであると思いました(タイトルの示す通りでもある)。

 この「日経プレミアシリーズ」は、「プレミア」を「プライマリー」ととれば丁度それに当て嵌まるラインアップという感じがじなくもありません。本書はそうした中では、読み易いばかりでなく鋭く本質をついており、重いテーマを突き付けてきます。著者の本を読んだことがある人にも、まだ読んだことが無い人にもお薦めです。

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自社の管理職任用アセスメントが形骸化していないかどうかをチェックするうえでお勧め。

『お子様上司の時代』.JPGお子様上司の時代 (日経プレミアシリーズ)』 榎本 博明.jpg 榎本 博明 氏(略歴下記)

 本書によれば、未成熟な大人が増加し、上司‐部下間の関係構築を困難にしているとのことであり、上司の側は、経験を伝え、部下を育てるために、言うべきことを言っているつもりでも、部下の側は、責められているように感じ、上司の指示や注意が押しつけられて、こちらの言い分は聞いてもらえないという不満を持っていることがあるとのことです(著者はこれを「俺の話を聞け!」ハラスメントと呼んでいる)。

 人間は、理屈ではなく感情で動くものであり、こうした「聴く耳」をもたず、自分語りに終始する上司では、部下のやる気を引き出すのは難しいとのこと。そこで、心理学者(心理学をベースにして企業の研修などを行う研究所の主宰者)である著者が提唱しているのが、心理学の世界で今流行している「ナラティブ」であり、「ナラティブ」とは「語り」を意味し、上司の思いを伝えるというよりも、部下の思いを共有すること、それによって気持ちの交流を引き起こし、その結果、部下のやる気を引き出すことができるものであるとしています。

 第1章「台頭するお子様上司」では、頼らないと拗ねる、立ててやらないと拗ねる、できる部下が気に食わない、意見が毎回変わる、といった、大人として未成熟な上司の具体例をいくつも挙げていますが、この部分を読んで、思わず「いるいる、こんな上司」と思う人は多いのではないでしょうか。

 第2章「社員旅行に行きたい20代」では、今度は若者世代を俯瞰して、プライベートな世界で率直に語り合える関係性を作れない若者が増えるなか、自分のことをわかってほしい、認めてほしい、といった承認欲求と結びついた関係性の欲求が高まっていて、アフターファイブの"ノミュニケーション"のようなものが退潮した現代において、彼らには職場のドライな人間関係が物足りなくなっていると分析しています。

 第3章「幼稚園化する職場」では、こうしたメンツや保身ばかり考える上司と、権利意識ばかりが強い部下(若者)という、それぞれが抱える要因により、職場全体が"幼稚化"していることを指摘しています。そうした状況を踏まえたうえで、第4章「やる気を引き出すのは『気分』」において、ナラティブの効用を説いていますが、この部分は、ナラティブの考え方の基本を説いた啓発的な内容となっています。

 最終の第5章「お子様上司の処方箋」において、ナラティブ・コーチングの手法を紹介していますが、相手の言うことをきちんと引き出して、かつ、ストーリーを語ることで部下のやる気を引き出す、細かいところまで指示するのではなく、自分で考えさせるのが大切と。紙数の関係もあってかごく簡潔なものにとどまっており、昔から言われているようなことを、ナラティブの名のもとに繰り返し述べていている印象も。結局、本書全体を通しては、ナラティブの「技法」よりも「必要性」と「効用」を説いた啓蒙書のような印象を受けましたが、それほど新鮮味は感じませんでした。
 
榎本 博明 『お子様上司の時代』.jpg むしろ、今日の職場で起きている世代間の認識のズレやコミュニケーション不全を、心理学というより世代論的な観点から分析してみせた本のようにも思います。その意味では"タイトルずれ"はしておらず、また、企業勤務の経験がある著者らしい洞察がみられますが、「分析」に比重がかかった分、「処方箋」の部分がやや弱かったように思います。

 読み物として楽しく、またすらすらと読めましたが、この本を読んだだけでナラティブを即実行するのは結構たいへんかも(ナラティブって意外と難しい?)。まあ、部下との関係性において、ナラティブということを意識してみる契機にはなるかもしれませんが。
 
 著者は元大学助教授で、心理学をベースにして企業の研修などを行う研究所の主宰者であるとのこと、『「上から目線」の構造』など「日経プレミアシリーズ」だけで既刊が3冊あり、固定的な読者もいるようですが、個人的にはこの著者の本を読むのは初めてです。浅く広く、この手の本をいっぱい書いていそうな人という印象も受けました。
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榎本 博明
心理学博士。1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授を経て、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした企業研修・教育講演を行う。著書に、『「上から目線」の構造』『「すみません」の国』『「やりたい仕事」病』『記憶の整理術』、『〈ほんとうの自分〉のつくり方』など多数。

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評判の良い人の方の3つの重要ポイントを示す。これって〈コンピテンシー〉だなと。

会社人生は「評判」で決まる.jpg  『会社人生は「評判」で決まる (日経プレミアシリーズ)』['12年]

 人事コンサルタントである著者は、企業内では「評価」に基づく人事が前提となっているにもかかわらず、「評判」が"裏スタンダード"として大きな影響力を発揮していると、本書で述べています。評価が高くても、たった一つの悪評で、彼には人望がないとされて、昇進が見送られたりすることもあるとしていますが、自社内を見回して、思い当たるフシのある人は多いのではないでしょうか。

 著者は本書で、評判がどのように形成され、どのような特徴を持つものなのかを解説するとともに、評判の善し悪しを分ける3つの重要ポイントを示しています。それによれば、悪い評判につながる傾向が強いと考えられるのは、1番目が、自分の力を誤認している、自信過剰な「ナルシスト」、2番目が、自分自身を省みないで、他人のことはとやかく言う「評論家」、3番目が、自分の立場を理解しておらず、勘違いの大きい「分不相応な人」であると。

 評判の良い人の方はこの裏返しとなり、1番目が、自分自身をよく分かっており「他者への十分な配慮のできる人」、2番目が、口は出すが手は出さない「評論家」の逆で、労をいとわない「実行力の人」、3番目が、自分の立場や役割を正しく理解し、それに基づいた「本質的な役割の果たせる人」であるとしています。

 また、著者がこれまで仕事上行ってきた好業績者に対する数多くのインタビューから、業種・職種を問わず、それらの人たちに見られる重要な共通点として、それらの人たちが20代~30代前半という時期に、脇目も振らずに目の前の仕事に没頭してきたことを挙げ、社外の人脈づくりに一生懸命であったり、資格取得に励んだりしてきた人たちではないとしています。

 数年前から若年層の間で"自己ブランド化"が流行っているようですが、著者は、見えやすい特徴をアピールすることに重点が置かれる「パーソナル・ブランディング」は、結果として、現在の仕事や組織と乖離してしまうということが起こりがちであり、今後のキャリアを切り拓くための実力を身に付けようとするならば、現在の仕事に没頭し、組織とより密着度を高めていく方向へ向かわなければならないとしています。

 つまり、社外へ向けての「パーソナル・ブランディング」ではなく、社内での自分自身の価値を高め、同時に評判を高めていく「パーソナル・レピュテーション・マネジメント」こそが、将来のキャリアを切り拓くことにつながるというのが本書の趣旨ですが、近年言われる「エンプロイアビリティ」とか「自律的キャリア」といった言葉には、「社外に向けて」「業界内でも通用する」といったイメージが付きまといがちであるため、こうした対比のさせ方は興味深く思いました。

 全体を通して具体例を踏まえ、分かりやすく書かれており、とりわけ若いビジネスパーソンには、単なる処世術・出世術ではない示唆を与えるようになっていると思いました(処世術・出世術として読んでしまう人も、もしかしたらいるかもしれないが、そうした人には物足りないかも。元々"人望"って、そう簡単に意図して形成されるものでもないと思うけれどね)。

 人事部の人から見れば、「好業績者に対するインタビューから」という箇所で、これって〈コンピテンシー〉だな、と思い当たる人も多いはず。実際、著者には、〈コンピテンシー〉や〈360°評価〉について書かれた著作もあります。

 〈コンピテンシー〉って、最近今一つ言われなくなった気がしますが、「行動評価」という風に形を変えて、定着している企業には定着しているのではないでしょうか。本来は「(性格に近いところの)能力」を指すものであったはずが、従来の「業績・能力・情意」の三大効果要素のうち、「能力」とではなく「情意」と置き換わり、「性格」を評価するのではなく、そうした「行動」をしたかどうか評価するようになっているというのが、"日本的コンピテンシー"の特徴ではないかと、個人的には思います(結局〈コンピテンシー〉って、本来は人物評価なんだよなあ)。

 一般のビジネスパーソンに向けて書かれた本ですが、著者がこれを人事部に向けて書くとすれば、「他者への十分な配慮のできる人」「実行力の人」「本質的な役割の果たせる人」という項目を、考課要素(とりわけ昇格・昇進において)に織り込みましょう、ということになるのかな(その方が、本来的な〈コンピテンシー〉に近いかも)。そうしたら、「評価」と「評判」がより一致することにも繋がるのだろうけれども...。

 但し、本書にもそうした事例があるように、日本企業の場合、昇格・昇進においては、「パーソナル・レピュテーション」のチェックが比較的"自動装置"的に機能し、結果をコントロールしてきたような気もします。

 むしろ著者自身も、「パーソナル・レピュテーション」そのもの自体を考課要素とすべきであるという考えではなく、「評価」と「評判」が乖離しないことが望ましいのであって、その手法として、〈コンピテンシー〉の考え方が補完的に生かせるという考え方なのだろうけれども、本書の対象読者層が一般ビジネスパーソンであるため、そのあたりまで踏み込んでいないのが、人事部目線でみた場合、やや物足りないか。

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「新型うつ」の見分け方から企業としての対応の在り方や予防法までを分かりやすく解説。

「新型うつ」な人々.jpg「新型うつ」な人々 (日経プレミアシリーズ)

 真面目な人が「うつ」になり易く、「うつ」になった場合は自分を責める傾向にある―という「従来型のうつ」に対し、軽く注意したら不調を訴え会社に来なくなった、本人からは上司に叱責されたために「うつ病」になったとの訴えがあり、配置換えを申し出てくる―そうした、いわゆる「新型うつ」ではないかと思われるケースが、最近若い社員を中心に増えていると言われますが、本書はその「新型うつ」と呼ばれるものについて、経験豊富な産業カウンセラーが分かりやすく解説した新書本です。

 前半部分では、「新型うつ」の特徴や「従来型うつ病」との違い、「新型うつ」になりやすいのはどんなタイプの人かなどが事例をあげて解説されており、後半は、「新型うつ」と思われる社員への対応から、社員を「新型うつ」にしないための対策やストレス・マネジメント法まで、対処法が提案されています。

 このように、「新型うつ」の見分け方から企業としての対応の在り方や予防法まで、全体によく網羅されていて、内容のバランスもとれていると思いますが、新書であるため、その分一つ一つの事柄がそれほど深く書かれているわけではありません。それでも個人的には、「新型うつ」は若者だけの問題ではなく、四十代、五十代でもなることがある、といった新たな知識を得ることができました。

 また、企業内で、メンタル不調者一人ひとりに対しどのようなアプローチが必要なのかを総合的にアセスメントできる人材、「メンタルヘルスのスペシャリスト」を育てることを提案している点は、まったく同感だと思いました。

うつ病をなおす.jpg この分野の知識を深めようとするならば、精神科医など専門家の書いた本も読むといいと思われ、最初に読む入門書としては、野村総一郎『うつ病をなおす』(2004/11 講談社現代新書)などがお薦めです。逆に、医師であっても専門医ではない人が書いた本には、特殊な見解や特定の療法に偏っていたりするものもあり、危うさを感じることがあります。一方で、専門医は専門医で、"病態区分"などに関して、それぞれの立場ごとに書かれていることが異なったりすることもあります。

 例えば、林公一『それは、うつ病ではありません!』(2009/02 宝島社新書)では、"「ディスチミア親和型うつ病」(「うつ病」と診断されるには至らない軽症のうつ状態が慢性的に長期間持続するもの―岩波 明『ビジネスマンの精神科』(2009/10 講談社現代新書))などをうつ病と呼ぶ派"などという言い方で、「新型うつ」と呼ばれるものは「擬態うつ」であってうつ病ではないとそれってホントに「うつ」?.jpgしています(岩波氏自身の考え方は後述)。一方で、吉野聡『それってホントに「うつ」?―間違いだらけの企業の「職場うつ」対策』(2009/03 講談社+α新書)では、「ディスチミア親和型うつ病」などを「現代型うつ病」とし、さらに、「職場うつ」と呼ぶべきものの中には、パーソナリティ障害や内因性精神障害(統合失調症や躁うつ病など)も含まれる場合があるとしています。

 本書『「新型うつ」な人々』の場合、精神科医による典拠を示し、さらに「私の解釈」と断ったうえで、「うつ病」の領域には「ディスチミア親和型」も含まれ、「新型うつ」を理解するためには、「適応障害」や「パーソナリティ障害」の理解も必要であるとしており、これは吉野氏の立場に比較的近く、また「新型うつ」に関するオーソドックスな解釈であると言えるのではないでしょうか。

うつ病.jpg 「ディスチミア親和型うつ病」は、かつては「軽症うつ」などという言われ方もし、従来型のうつ病に比べて軽度のものであると思われがちですが、岩波明『うつ病―まだ語られていない真実』(2007/11 ちくま新書)では、非常に重篤で大きな事故に繋がった「ディスチミア親和型うつ病」の症例が報告されています(但し、岩波氏の場合、岩波明『ビジネスマンの精神科』(2009/10 講談社現代新書)の中で、「新型うつ病」を「ジャンクうつ」と"断罪"し、「ディスチミア親和型うつ病」とは峻別している。これはつまり、林公一氏が言うところの"「ディスチミア親和型うつ病」などをうつ病と呼ぶ派"であることになるが、ディスチミア親和型うつ病はうつ病の一種であるというのが大方の見方で、林氏の見解の方がマイノリティであると思われる)。

気まぐれ「うつ」病.jpg また、貝谷久宣『気まぐれ「うつ」病―誤解される非定型うつ病』(2007/07 ちくま新書)では、かつて「神経症性うつ病」と呼ばれた「非定型うつ病」について解説されています。岡田尊司『パーソナリティ障害―いかに接し、どう克服するか』(2004/06 PHP新書)は、パーソナリティ障害の入門書としてお薦めです。

 メンタルヘルス対策の専従部門を設けることができるのは、限られた数の大企業だけでしょう。普通の会社だと、結局、人事労務部門にいる人たち自らが「メンタルヘルスのスペシャリスト」となるべく自助努力をしなければならないような気もしますが、新書レベルでも、一人の専門家に偏らず何冊かを読むようにすれば、一定の知識は得られるように思います。

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現役の人事パーソンにとっても示唆に富むフレーズに満ちている。

人事部は見ている5.JPG人事部は見ている.jpg人事部は見ている。 (日経プレミアシリーズ)

 Amazon.com のレビューではそれほど評価が高くなかったのですが、読んでみたらなかなかよく、また、人事に関係する仕事をしている人の間では、「意外と優れもの」だったとの声も聴くことがあった本。
 基本的には一般ビジネスパーソン向けの体裁であるため、「出世の方程式」のようなものを期待して読んでしまった人もいたのかなあ。

 本書プロローグによれば、ビジネスパーソンに「人事」の仕事の実態を理解してもらい、自分自身のキャリアを考える際に役立ててもらうのが本書の狙いであるとのことで、帯には「企業で人事業務に携わった筆者が包み隠さず語ります」とありますが、実際、自らの体験や多くの人事担当者へのインタビューがベースとなっているため、読み物のように楽しく読めて、かつ、人事の"実態"を分かりよく解説しているように思いました。

 外から見た人事部と実際に人事部の中で行われていることの違いや、人事部員がどう思って仕事しているかなどは、キャリアの入り口にあり、人事の仕事を希望している人や、今は別部署で働いているけrども、将来は人事の仕事をやってみたいと考えている人には、大いに参考になると思われます。

 同じ人事部員でも、担当する業務によって性格傾向が異なることを著者なりに分析していて、例えば、異動や考課を担当する人事部員は、コミュニケーション能力とバランス感覚に優れた人が求められるといったように、それがそのまま、適性要件として示されているのが興味深いです。

 「公平な人事異動をしても7割は不満を持つ」「人は自分のことを3割高く評価している」といのは、まさに"実態"でしょう。「採用を左右するのは"偶然"や"相性"」であるというのも、経験者ならば思わず頷きたくなるのでは。

 「人事部の機能は担当する社員数に規定される」とし、人事部員にとって重要とされる能力が、企業規模によってその要素や重要度が異なってくることを統計で示すとともに、「社員と直接つながることがいいのか」を考察し、そのことに違和感を持つ人事部員も少なくないのではないかとしています。

 「目標管理だけでは真の評価はできない」とし、コミュニケーション・ツールとして割り切るべきだとの考えにも納得。評価されるポイントは職場内での評判だったりもするとして、様々な例を挙げて、人事部から見た「出世の構造」を解き明かしています。

 「人事は裁量権が残されている仕事だ」とし、「個別案件こそが人事部の存在意義」であるとしながらも、特定のマネジャーや部員の「正義の味方になるとしっぺ返しを受ける」というのも、身に覚えのある人事パーソンはいるのでは。

 最後に、現在、人事部は曲がり角に立っているとして、雇用リスクや働き方の多様化とどのように向かい合っていけばよいかを説くとともに、「社員の人生は社員が決める」ものであり、会社(人事)側も、社員のライフサイクルに応じたよりきめ細かな対応が求められるとしています。

 最初は、一般ビジネスパーソンに向けた「人事部の仕事」の入門書のように思えたのですが、読み終えて振り返ってみれば、現役の人事パーソンにとっても示唆に富むフレーズに満ちており、たいへんコストパフォーマンの良い本でした。
 人事部にいる人にとっては、"励ましの書"という感じかな。若手、ベテランを問わず、お奨めです(「人事部の仕事」のストレートな入門書としては、大南幸弘・稲山耕司・石原正雄・大南弘巳 著『人事部 改訂2版(図解でわかる部門の仕事)』('10年/本能率協会マネジメントセンター)がお奨めです)。


《読書MEMO》
●人事部員のキャラクターの違い(34p~42p)
・異動・考課を担当...コミュニケーション能力とバランス感覚に優れる(姿勢が真摯で誰に対しても公平)
・労働条件を担当...過去のいきさつや実際の運用事例も把握する必要(一人前になるには一定の時間を要す)
・労働組合との団体交渉担当...かけひきや揉め事が嫌いではないタイプ。
・人事制度の企画・立案担当...概念的な嗜好を好む傾向
・勤務管理・給与管理担当...縁の下の力持ち
・採用担当...明るくて感じのいい人(採用担当者の魅力が、応募者を惹きつける要素になるから)
●そもそも、人事評価は主観的であり感情面が大きくかかわってくる。求めるべきは、客観性や公平性ではなく、評価される社員の「うん、そうだ」という納得なのだ。
●一定の人数を超えると、直接個々の社員を知ることはできないので、所属長を通した伝聞情報で個々の社員を把握する。
●人事部の役割は、所属長をサポートすることであり、管理を代行することではない。
●どの職場を経験して、どのポストに就いているかが、現在の評価基準になり、将来の昇格の可能性を示唆する。
●どの職層においても、直接の上司との関係が基本的に重要だ。その上司の得意、不得意を観察すること。そのうえで、定期的にさまざまな報告をすること。
●人事権は、個人や役職者の権利ではなくて、経営権の一つなのだ。だから、人事権を自分の権限であると錯覚して、部下や後輩に威張り散らしたり、彼らの人生をコントロールできるなどとは決して思ってはいけない。

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広い意味での国際プロトコルについて書かれた本。実践の場がないとなあ。

「お辞儀」と「すり足」はなぜ笑われる.jpg 『お辞儀」と「すり足」はなぜ笑われる』(2010/01 日経プレミアシリーズ)

 国連機関などで長年に渡って仕事し、国際会議やパーティなどを通じて外国人との仕事・交流の経験が豊富な著者が、外国人の思考・行動特性と日本人のそれとの違いを踏まえた上で、外国人との付き合い方を指南したもの。

 本書の後半では、欧米人と対等に付き合うためのマナーや、レセプションやディナーでの基礎理式、スピーチの秘訣や国際会議での立ち回り方などが書かれていて、最終章が「恥をかかないための基礎的なプロトコル」となっていますが、後半全体が広い意味での国際プロトコルについて書かれたものであり、見方によっては本書全体がそうであるとも言えるのでは。

 但し、前半部分の、日本人がよく使う「すみません」という言葉が欧米人にとっては何を意味しているのか理解されにくい、とか、欧米では、自己主張できなければ無能力と評価されるため、子供の頃からいかに自分の意見を主張し、他人を説得できるかを鍛えられるが、謙虚が美徳の日本社会では「沈黙は金なり」と教えられる、従って、日本人と欧米人とが一番異なる行動をするところは、発言するかしないかである、といったことは、これまでも多くの本などで言われてきたことではないでしょうか。

 日本の社会では、結果よりもプロセスが大事にされるが、欧米社会では結果が全てであるというのは、時と場合によるような気もしました。
 以前、女子サッカーの2011年FIFAワールドカップの日本対アメリカの決勝戦の選手別採点表の日本版とドイツ版をネットで比較してみたことがありますが(サイトの運営会社は同じ)、日本の場合は優勝したこともあって皆高い評価になっていたのに対し、ドイツの方は、苦戦したプロセスを見ているのか、結構厳しかったように思います。

 尤も、日本人は分析力や総合力に長けているので、問題を分析し、解決方法を探し、自分で改善して行く能力を持っているため、いわゆるマニュアルは不要で、上司の役割も細部にわたる指示ではなく、むしろ問題点を発掘し大きな方針を示すことに重点が置かれるが、一方、西欧では、事細かに何をするのかを指示しなければ人々は動かない、という指摘など、改めてナルホドなあと思わされる部分も多々ありました。
 
「お辞儀」と「すり足」はなぜ笑われる 2.jpg 表題の「お辞儀」に関しては、日本人はやたらとお辞儀をするが、平常の挨拶で頭を下げてお辞儀をする国はあまり無く、殆どの国でお辞儀は君主に会ったりしたときに使う最敬礼の挨拶であるとのことで(だからオバマ大統領は天皇に会った際にお辞儀したわけか)、通常のビジネスの場においては、堂々と胸を張り握手をすべきであり、それが欧米人と対等に付き合うことができる第一歩であると。

 前半は比較文化論的で面白いけれども、聞いたことがあるような内容も多く、後半に行くほど「プロトコル」色が強くなっていくため、知識として持っているにこしたことはないけれど、周囲に外国人がいて実践する機会がないと、応用に繋がらないかなあと(誰かレセプションにでも呼んでくれないと、忘れてしまいそう?)。

 『国家の品格』という本がありましたが、国際社会は闘争の場であり、自国において「誇り」や「品格」を大事にしている外国人でさえも、国際社会に出た途端にそうしたものを捨て去るという指摘は興味深かったです。

 その他にも、外国人間では、相手の家族のことを気に掛けたり、家族同士で付き合ったりすることが、日本人間以上に高い親密度の表れとみなされるといった指摘なども興味深かったですが、やはり、応用の場がないとなあ(実践の場がある人にとってはいいかも知れないが、そうした人達にとっては、すでに分かり切ったことかも)。

女子サッカー.jpg2011 FIFA女子ワールドカップドイツ大会 決勝戦(対アメリカ)先発メンバー個人別評価

女士サッカー.jpg 

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日本企業の強みを生かしつつ、時代の変化に対応するにはどうすればよいかということの処方箋。

人材の複雑方程式  日経プレミアム.jpg 『人材の複雑方程式(日経プレミアシリーズ)』(2010/05)

 '06年から'09年にかけてビジネス誌「プレジデント」に連載されたコラムがベースになっている本で、バブル崩壊後、2000年代初期(当連載の開始時期以前)にかけて導入された成果主義的な評価・処遇制度や人材ビジネスに関する規制緩和が、その後の企業の人材育成に複雑な変化をもたらしたことを、冒頭で指摘しています。

 具体的にどのような変化が起きたかというと、それは、人という資源の重要性、人材育成機能や働きがいの提供、働く人の経営に対する信頼など、人にまつわる基本要素が脆弱化したことであるとしていて、本書は全体を通して、そした傾向に警鐘を鳴らすとともに、そうした状況に対する多くの処方箋を示唆するものとなっています。

 前半部分では、日本企業の職場の特性とリーダーシップの関係について論じるとともに、なぜ日本企業においてリーダーが育たないのか、どのようなリーダー(フォロワーシップを含む)が今後は求められるのかを考察しています。

 中盤部分では、終身雇用への心情的回帰現象を踏まえつつ、会社と従業員の信頼関係の再構築を図るには何が鍵になるかを示し、また、その中での人的ネットワークのもつ経営上の価値というものを強調しています。

 そして、後半部分では、今後、人々の働き方の改革が始まるであろうことを前提に、企業はどのようにすれば、働きやすさや働きがいを従業員に提供することができるかを考察しています。

 本書で述べられている「リーダーシップの状況対応理論」などは、理論としては必ずしも目新しいものではありませんが、ベストリーダー像を固定観念で捉え、現場リーダーに過剰な期待を寄せてしまうことの危うさを説く論旨のなかで、「どこでもリーダー」という分かりやすい言葉で提唱されると、すとんと腑に落ちるものがありました。

 各論においても、個人情報保護、コンプライアンス、ワークライフバランスといった概念に対する盲従的な礼賛の危うさを、鋭く批判してしており、その箇所を読んで、それまで抱いていた何となくもやもやしたい印象が(やっぱりそうかということで)すっきり晴れる読者も多いのではないでしょうか。

 日本企業が長年にわたって培ってきた協働、人材の育成、コミュニティ、同質性の促進といった組織的な強み(こうしたものをいきなり否定してしまったのが2000年代初頭にかけての様々な施策だったとも言える。そうしたももの価値を再考させてくれるだけでも、本書の「価値」は高い)を生かしつつ、時代の変化に対応していくにはどうすればよいかということについて、多くの示唆を与えてくれる本だと思います。

 さらに、展開されているリーダー論、組織論、労働論に、現場で実際に仕事をしている人間の心理面に対する著者の洞察が織り込まれているのが良いです(組織行動論は著者の主たる専門分野)。

 但し、3年間の連載を1冊の新書に詰め込んだために、新書にしては密度が高い分、イシューが多すぎて「複雑」になったという感も否めなくはなく、内容が良いだけに、各論についてもっと踏み込んでもらいたかった気もしますが、新書では叶わぬ望みか。

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「判例勉強会の取りまとめ」みたいな感じの本?

日本をダメにした10の裁判.jpg 『日本をダメにした10の裁判 (日経プレミアシリーズ 4)』 ['08年]

 若手の弁護士やロースクール出身者4人による共著で、冒頭に有名な労働裁判2例が出ていたので思わず買ってしまいましたが、何か新しい切り口でもあるのかと思いきや、意外とオーソドックスと言うか、すでに巷で言われていることが書いてあるだけのように思いました。

 解雇権濫用法理のリーディングケースとなった「東洋酸素事件」を以って、日本の労働社会における解雇の障壁を高くしたとか、転勤命令についての会社側の裁量権を大幅に認めた「東亜ペイント事件」はワークライフバランスが言われる現代には合わないとか、労働判例の勉強をしたことがある人の多くが以前から感じていることではないでしょうか。

 「東洋酸素事件」の解説の終わりにある、正社員の既得権を守り過ぎたがために、非正規社員は冷遇され、「正社員の親とパラサイトの子」という構図が出来上がっていることの問題も、労働法学者がすでに指摘していることであり、「皮肉な結果ではないか」で終わるのではなく、そこから先の展開が欲しかった気がします。

 代理母事件や痴漢冤罪、企業と政治の癒着...etc.後に続く判例についても同様で、判例解説としても論考としてもスッキリし過ぎているような...。

 個人的に、多少とも我が意を得たのは、国家公務員が事件の加害者になっても、多くの場合、個人が賠償請求の対象にはならず、国家賠償法により国が代償するという「公務員バリア」に疑念を呈した部分で、社会保険庁の職員の懈怠の問題などに関連づけているのもナルホドね、そういうことかと。

 ただ、全体としてはやはり、「判例勉強会の取り纏め」みたいな感じが拭いきれなかったなあ。その分、ある程度、勉強(復習)にはなりましたが。

2008年06月04日 日経朝刊.jpg 2008年6月4日 日経朝刊

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人材登用のトレンドを探るが、人事専門誌に書かれていることの域を出ない。

人事と出世の方程式.jpg 『人事と出世の方程式 (日経プレミアシリーズ)』 ['08年]

 ジャーナリストである著者が日本のトップ企業の人事の基本方針、主に幹部社員の登用のあり方について取材していて、新書のわりには取材量は豊富ですが、タイトルにあるような「出世の方程式」がそれらから導き出されるというものではなく、結局、人材登用を決める側は決める側で自社適合の仕組みを考えなければならないし、社員は社員で企業に寄りかかるのではなく自立した職業人として、或いはリーダーとして成長していかなければならないということでしょうか。

 社長に上り詰めた人、一旦置かれた苦境から立ち直ってヒット商品を生み出した人など華々しい例も出てきますが、そうしたこと以外に、最近の企業の人事・人材育成の動向などが、具体的な選抜方法や評価、研修制度、賃金制度なども含めて広く紹介されていて、その部分については参考になったと言えば参考になったし、オーソドックスと言えばオーソドックス。

 参考になった点は、成果主義の弊害ということが昨今言われるものの(経営トップの外向けの発言はともかくとして)企業の人事部は成果主義というものをさほどに否定していないように思えたこと、但し、仕事の結果だけでなく資質的なものを見る傾向にあること、また、大企業では幹部候補社員の選抜時期を早める傾向が近年見られるということなどでしょうか。

 更に、管理職への道がこれまで閉ざされていた女性や外国人などに対する処遇をダイバーシティマネジメントの観点から見直す傾向にもあるということですが、人事専門誌などにある近年の動向情報や今後の人事マネジメントの展開予測の域を出るものでは無く、まあ、再確認できたというぐらいでしょうか(この新書の"プレミア"の意味は実は"プライマリー"ではないかと、時々思う)。

 気になったのは、各社の人材登用の事例がいまだに人材の「選抜」という観点で紹介されていることで、人材にゆとりのある大企業ならともかく、中小企業では人材の「確保」そのものが大きな課題になっていて、少子高齢化社会の到来を考えれば、今後は限られた人材をどう生かすかということの方が、企業規模を問わず課題になってくるのではないかと思われたこと(大企業の方がすべてにおいて進んでいるとは限らない)。

 女性の活用だけでなく、コースに乗れなかったため目標を喪失している人、会社や仕事に対してコミットメントしきれていない人を、どう活性化し再生していくかということも、広い意味でのダイバーシティマネジメントだと思うのですが。

2008年06月19日 日経朝刊.jpg 2008年6月19日 日経朝刊

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「プレミア(最高級)」と言うより「プライマリー(初心者向け、基礎編)」という感じかも。

ダメ上司論.jpg 『ダメ上司論 (日経プレミアシリーズ 49)』 ['09年] バカ社長論.jpg 『バカ社長論 (日経プレミアシリーズ 5)』 ['08年] 

 大手監査法人を経て独立し、現在は自ら会計事務所を経営する公認会計士が書いた本で、日経プレミアシリーズの同著者の『バカ社長論』('08年)に続くもの。

組織を壊す」(第1章)とか「会社も恐い、すぐキレる上司」(第3章)とかいったことを、リアルな具体例を挙げて説いていて、若い読者が読むと、大いに「ある、ある」感を満たすのではないのでしょうか。

 そうした事例を通して、上司と部下のコミュニケーションが組織の効率を決めることを全体としては説いており、また、「すべては内省から始まる」(第5章)とあるように、最後には部下の側に対しても謙虚さを求めています。

 この著者の本、「バカ社長」とか「ダメ上司」とかきつい言葉を使っている割には、二宮尊徳を"偉大な先哲"としているように、書いてあることは読者の想定内のことと言うか、比較的クラシカルな感じがしました。

 書かれていることそのものに異を唱えるようなものではないですが、本のべースになっているのが「メルマガ」であるためか、日々の部下に向かう姿勢、上司に対する対応の心構えを説いているような感じで、どちらかと言うと後者(部下向け)だろうなあと。

 「日経文庫」とは別に「日経プレミアシリーズ」というのが創刊されたのが'08年5月で、実務書としての「日経文庫」に対し、同じビジネス関係でも読み物的なものを考えて、「ビジネスにも役に立つような内容だったり、オフの過ごし方だったり、ビジネスパーソンが興味のありそうなテーマを選んでいる」(野澤靖宏編集長)とのこと(元々は「新書にこだわった創刊ではなかった」とも)。

 「プレミア」というのは、「最高級の好奇心」というこの新書のコンセプトに呼応したネーミングのようですが、本書に関して言えば、「プレミア」と言うより「プライマリー」(初心者向け、基礎編)という感じかも。

2009年05月14日 日経朝刊.jpg 2009年5月14日 日経朝刊

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