【3142】 ○ 大洲 齊 (原作:山本周五郎) 「ひとごろし (1976/10 大映) ★★★★ (○ 山本 周五郎 「ひとごろし」―『ひとごろし』 (1967/03 文藝春秋) ★★★★)

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山本周五郎の"こっけいもの"が原作。TVドラマ「探偵物語」の演技の土台が窺える松田優作。

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ポスター 「ひとごろし [DVD]」『ひとごろし (新潮文庫) 』(「壺」「暴風雨の中」「雪と泥」「鵜」「女は同じ物語」「しゅるしゅる」「裏の木戸はあいている」「地蔵」「改訂御定法」「ひとごろし」)

 福井藩武芸指南役の仁藤昂軒(丹波哲郎)は、酒に酔った帰途、彼を嫌う若い藩士たちによる闇討ちに遭う。正々堂々を好む昂軒は怒り、真剣を抜いて一網打尽にするが、その現場に居合わせ、若い藩士たちを止めるために昂軒に立ち向かった藩士・加納(岸田森)も斬られて絶命してしまう。そのまま藩を去った昂軒に怒った藩主は、上意討ち(じょういうち=主君が部下に逃亡した罪人を処断させること)を命じたが、昂軒の腕前を知る藩士たちは誰も手を挙げない。そんな中、上意討ちを名乗り出たのは、藩きっての臆病者で知られた双子六兵衛(松田優作)だった。臆病な自身の悪評のために婚期を逃した妹・かね(五十嵐淳子)のため、また自身の汚名返上のため、六兵衛は蛮勇を振るって旅に出る。すぐに六兵衛は昂軒に追いつき、上意討ちと直感した昂軒は六兵衛に決闘を求めたが、六兵衛は怖気づいて「ひとごろし!!」と叫び、逃げ出す。逃げた先で彼は、農民たちが「逃げたお侍は偉い」と噂話をしているのを耳にする。「世間には俺のように臆病な人間のほうが多いのだ」と悟った六兵衛は一計を案じ、街に着くたび昂軒につきまとい、宿屋や飯屋で彼を指差して「ひとごろし!!」と叫んでは周りの人々の恐怖を煽り立て、昂軒がこちらに向かってくれば徹底的に逃げることで、武士道に凝り固まった昂軒の自尊心を傷つけ、精神的に追い詰めていく作戦を図る。執拗に作戦を展開する六兵衛は、昂軒との奇妙な距離感を保ったまま旅を続ける。ある日、富山の街中で叫んでいた六兵衛は町奉行所に捕らわれるが、取り調べた町方与力・宗方(桑山正一)は、六兵衛が持っていた上意書を見て早合点し、果たし合いの会場を提供したうえ、昂軒を連れてくる。窮地に陥った六兵衛はわざと頭を打ち、気が変になったふりをしてやり過ごす。真剣勝負にならないと判断した昂軒は刀を納めて立ち去る。ある街道沿いの草むらで、遂に六兵衛と昂軒は向き合うことに―。

「ひとごろし」原作単行本.jpg 大洲齊(おおず ひとし)監督の1976年公開作で、原作は山本周五郎が1964(昭和39)年10月、「別册文藝春秋」に掲した短編載時代小説で、本作を表題作として1967(昭和42)年3月文藝春秋刊。野村芳太郎監督により1972年1月に「初笑いびっくり武士道」というタイトルでコント55号主演で映画化・公開されていて、タイトルからしてもコント55号主演であることからしてもコメディなのですが、原作をコメディ化したと言うより、原作自体が「雨あがる」(昭和26年)、「日々平安」(昭和29年)系の"こっけいもの"であり、ユーモアを存分に散りばめながら、強さというものの限界を示している作品となっています。この映画化作品の場合、以前に萩本欽一(双子六兵衛)、坂上二郎(仁藤昂軒)で演じたれぞれの役を松田優作、丹波哲郎でやっているところがミソでしょうか。この二人の起用は成功していたように思えます。

『ひとごろし』['67年/文藝春秋](「ひとごろし」「へちまの木」「あとのない仮名」「枡落し」)

「ひとごろし」松田.jpg「ひとごろし」1.jpg 松田優作は「太陽にほえろ!」('73年~'74年)の"ジーパン"刑事の印象がありますが、この映画を観ると後のTVドラマ「探偵物語」('79年~'80年)での演技の土台がこの頃にはすでに出来上がってことが窺え、この人って重い役よりもこうしたコミカルな役の方が向いていたようにも思えます。その松田優作のコミカルな演技に対して丹波哲郎の方はいつも通りの重厚な演技で、その対比が効いています。

「ひとごろし」五十嵐.jpg 女優陣で、松田優作演じる六兵衛の妹かねを演じた五十嵐淳子(1952年生まれ)は、「五十嵐じゅん」の芸名時代にグラビアアイドルとして超人気でした。プライベートでは中村雅俊と1976年12月婚約発表、1977年2月に結婚することなりますが、その前に中村雅俊と松田優作との間で五十嵐淳子を巡って争奪戦があったとか。婚約発表から結婚まで比較的短いのは、五十嵐淳子が妊娠していたためで、この映画の公開された1976年10月にはすでに"三角関係"は決着していたのでしょうか(松田優作は「探偵物語」の第1話にゲスト出演した熊谷美由紀と1983年に結婚)。

「ひとごろし」高橋2.jpg「ひとごろし」高橋.jpg ただ、この映画の中の女優でもっと目立っているのは、北陸の宿場町にある旅籠の女将・およう(本名はとら)を演じた高橋洋子(1953年生まれ)で、おようは「ひとごろし」呼ばわりされ別の旅籠を追い出された昂軒を宿泊させる一方、六兵衛の事情を知って暴力を嫌う彼の姿勢に共鳴し、旅籠を番頭に任せて六兵衛の旅に随い、六兵衛と共に昂軒に向かって「ひとごろし!!」と叫び続ける作戦に参加するという役どころです。撮影時は、五十嵐淳子、高橋洋子とも23歳で、高橋洋子は「サンダカン八番娼館 望郷」(1974年)などにすでに出演していたとはいえ、こうして見ると若いな~という感じがします。

「ひとごろし」vhs.jpg 武士道に対する風刺ドラマで、コミカルな松田優作、重厚な丹波哲郎、若々しい女優陣、シンプルなストーリーと、タイトルから受ける印象と少し違って肩が凝らずに愉しめる作品でした(珍品的プレミア価値を加味して星4つの評価とした)。

 因みに、原作では、この話は「偏耳録」という古記録の欠本を出典としているとし、その「偏耳録」によれば、双子六兵衛は上意討ちを首尾よく果たし、おまけに嫁まで連れて来たし(高橋洋子が演じた「およう」のこと)、その高い評判によって(五十嵐淳子が演じた)妹・かねも中老に息子と婚姻のはこびとなったとされています(もちろん「偏耳録」も含め全部フィクションだと思うが、このあたりが何となく本当にあった話みたいで上手い)。

ひとごろし」 (大映).jpg「ひとごろし」 (1976).jpg「ひとごろし」●制作年:1976年●監督:大洲齊●製作:永田雅一●脚本:中村努●撮影:牧浦地志●音楽:渡辺宙明●時間:82分●出演:松田優作/高橋洋子/五十嵐淳子/桑山正一/岸田森/永野達雄/西山辰夫/丹波哲郎●公開:1976/10●配給:大映(評価:★★★★)

【1972年文庫化[新潮文庫]】

             



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