【3129】 ◎ 濱口 竜介 「ハッピーアワー (2015/12 神戸ワークショップシネマプロジェクト) ★★★★★

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良かった。従来の日本映画の〈非リアリティ〉の壁を打ち破ったという感じ。

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Happy Hour [DVD] [Import]」田中幸恵/菊池葉月/三原麻衣子/川村りら
「ハッピーアワー」ws.jpg「ハッピーアワー」1.jpg 兵庫県神戸市で暮らす看護師のあかり(田中幸恵)、専業主婦の桜子(菊池葉月)、学芸員の芙美(三原麻衣子)、科学者の妻の純(川村りら)は、お互いに仲が良く、行動を共にすることが多い。彼女たちは、鵜飼(柴田修兵)が開催したワ「ハッピーアワー」3.jpgークショップに参加する。打ち上げの席上、純が離婚調停を進めていると知ったあかりは、なぜ今まで話してくれなかったのかと怒り、その場を立ち去る。その夜、駅のプラットフォームで倒れた純を桜子は自宅に泊め「ハッピーアワー」2.jpgる。あかり、桜子、芙美、純は温泉へ出かける。あかりと純のあいだにあったわだかまりは消えて、彼女たちは旅行を満喫するが、芙美は、夫で編集者の拓也(三浦博之)と小説家のこずえ(椎橋怜奈)が連れ立って歩いている場面を目撃してしまう。翌日、純は1人だけバスで帰途につく。後日、あかり、桜子、芙美は、純の夫の公平(謝花喜天)からの連絡を受けて、カフェを訪れる。純の行方が分からなくなっているのだという。離婚を望んでいた純が裁判に敗れたこと、そして、純が公平との子を妊娠しているらしいことも、公平の口から語られる。桜子は、中学生の息子が恋人の女性を妊娠させてしまったと知らされ「ハッピーアワー」f.jpgる。夫の良彦(申芳夫)と話し合ったのち、良彦の母のミツ(福永祥子)と共に女性の家を訪ねた桜子は、女性の両親に土下座する。その帰り道、桜子は、自分と良彦の仲を取り持ってくれたのが純であった、と息子に話す。桜子の息子が、フェリー乗り場で恋人の女性を待っていたところ、偶然にも純と出会う。純は、感謝の言葉を告げる桜子の息子に見送られながら、フェリーに乗り込む。純を乗せたフェリーが、神戸の街から遠ざかって行く。こずえ「ハッピーアワー」13.jpgの小説の朗読会が開催される。トークセッションに登場する予定だった鵜飼が途中で退席するが、純を探して朗読会に来ていた公平がその役割を引き継いで、朗読会は無事に終わる。打ち上げでは、公平、桜子、芙美、拓也、こずえのあいだで口論が起こる。その場にいた者たちが次々と席を外し、こずえと拓也が残される。帰りの車中でこずえは拓也に好意を伝える。その言葉に拓也は戸惑うが、こずえとそのまま一晩を明かす。芙美とともに最終電車に乗った桜子は、夫とは久しく性的な関係を持っていないと芙美に告げる。やがて電車が駅に着き、桜子と芙美は電車を降りるが、ワークショップの参加者だった風間(坂庄基)の姿を車内に見つけた桜子は、再び電車に乗る。転倒により足を怪我しているあかりは、松葉杖をつきながら、鵜飼の妹の日向子(出村弘美)が働くバーに行き、鵜飼と打ち解ける。翌朝、芙美は拓也に離婚の意思を伝える。芙美の言葉を聞いた拓也は動揺するが、出社の時間が迫っていたため、家を出て車に乗り込む。同じ頃、桜子は良彦に、風間と性的な関係を持ったことを伝える。その後、職場へ向かった良彦は、交差点で泣き崩れる。一方、病院に出勤したあかりは、いつも失敗を叱っていた後輩の柚月(渋谷采郁)から、泣きながら感謝の言葉を告げられる。あかりは柚月をそっと抱擁する。交通事故にあった拓也は、あかりが勤める病院に運びこまれる。あかりは、廊下にいた芙美を誘って、病院の屋上に上がる。芙美は拓也のそばにいるつもりだという。また4人で旅行へ行こう、と語るあかりの目の前には、神戸の街と海と空が広がっているのであった―。(Wikipediaより)

「ハッピーアワー ロカルノ.jpg 2015年公開の濱口竜介監督作で、主演を務めた田中幸恵、菊池葉月、三原麻衣子、川村りらの4人は、第68回「ロカルノ国際映画祭」で「最優秀女優賞」を受賞しています(予備選考の段階でコンペ部門に正式には入っていなかったこの作品が最終的には賞を受賞し、同監督の「偶然と想像」('21年)の「ベルリン国際映画祭・銀熊賞」の受賞、「ドライブ・マイ・カー」('21年)の「カンヌ国際映画祭・脚本賞」、「米アカデミー・国際長編映画賞」の受賞へと繋がっていった経緯が、アカデミー賞受賞を伝える朝日新聞に出ていて[下]、興味深く読んだ)。本作の製作は、2013年9月から5か月間、KIITOにて開催された「即興演技ワークショップ in Kobe」がきっかけとなっていて、ワークショップの参加に応募した希望者の中から、17名が選考されたたそうですが、参加者の約3分の2とのことですは、それまでに演技した経験が無かったとのことです。

 2014年5月に第3稿の脚本で撮影が開始され、その後、脚本の方は、演技の感触や撮影の状況により、撮影を重ねる中で微調整を加えていって第7稿まで手直しされたそうですが、2015年2月に5時間36分の編集ラッシュ版を上映したのち、3時間20分版や3時間50分版なども製作されたものの、5時間36分版の方が面白いということでスタッフの意見が一致し、これの一部を切り詰めて、5時間17分の上映時間となったとのことです。

「ハッピーアワー」sa.jpg 脚本の改稿を重ねる中で、出演者と面談し、彼女たちが脚本に感じる違和感は修正されていったとのこと(第3稿)。さらに、「語りたいドラマを語ること」と「『演者が口にできないだろう』と思わないセリフを書いていくこと」という2点の課題に取り組むこととなった(第6稿)とのことで、とりわけ後者は、ドキュメンタリーを思わせるようなタッチとなって効いているように思いました。大袈裟に言えば、従来の日本映画の〈非リアリティ〉の壁を打ち破ったという感じでしょうか。個人的には、今までに観た日本映画で最もインパクトが大きかった今村昌平監督の「人間蒸発」('67年)以来の衝撃でした(「人間蒸発」の場合はドキュメンタリーに潜む演技性を露わにしたものだったが)。

「ハッピーアワー」b.jpg 当初は、家庭という守るものを持っている3人の中年男性が、急死した親友の葬儀後、家族や仕事を放り出し、人生を見つめなおす放浪を繰り返すという、ジョン・カサヴェテス監督の「ハズバンズ」('70年/米)という映画における「4人組がひとりを失い、他の3人が精神的な彷徨いを体験する」構造を使おうとしたそうで、(実際その構図は活かされている)、「ハズバンズ」の女性版で、かつ「かつての花嫁たち」という皮肉が込めて(実際4人ともかつて結婚していたか、今も結婚しているが夫婦の危機にあるという設定)「BRIDES」という仮題がつけられていたそうですが、濱口監督が偶々「HAPPY HOUR」とい「ハッピーアワー」cf.jpgう看板を見つけて、「ファニーな響きが、映画が進行するに従って皮肉な働きをする」「ラストをアンハッピーエンドと思わせない力をタイトルが持ち得るんじゃないか」と感じて、これを題名に選んだとのことです(製作段階において資金が底を尽きそうになったため、濱口竜介監督自らネットでクラウドファンディングを呼びかけたが、この時はまだ「BRIDES」という仮題のままだった)。

ネット動画でクラウドファンディングを呼びかける濱口竜介監督

「ハッピーアワー」k.jpeg 確かに、最初は4人ともフツーに日常を過ごしているアラフォーの女性たちに見えたのに、ワークショップの打ち上げの席上で純が離婚調停を進めていると告白したあたりから、それぞれが抱える容易ならぬ問題が浮き彫りになってきて、終盤になればなるほど何れもカタストロフィー(破局)に向かっていうように見えるけれども、アンハッピーエンドかというと、そんな印象も受けない不思議な作りになっているように思いました。

「ハッピーアワー」k.jpg 個人的には実家である神戸が舞台なので親近感がありましたが、今までにないニュータイプの日本映画を観たというか(リアリズムに立脚していることがニュータイプであるならば、今までの日本映画はなんだったのかというのはあるが)、ともかく、5時間17分を飽きさせないで見せる傑作であると思います。

「ハッピーアワー」●制作年:2015年●監督:濱口竜介●製作:高田聡/岡本英之/野原位●脚本:濱口竜介/野原位/高橋知由●撮影:北川喜雄●音楽:阿部海太郎●●時間:317分●出演:田中幸恵/菊池葉月/三原麻衣子/川村りら/申芳夫/三浦博之/謝花喜天/柴田修兵/出村弘美/坂庄基/久貝亜美/田辺泰信/渋谷采郁/福永祥子/伊藤勇一郎/殿井歩/椎橋怜奈●公開:2015/12●配給:神戸ワークショップシネマプロジェクト●最初に観た場所:渋谷・Bunkamura ル・シネマ1(22-03-22)(評価:★★★★★
Bunkamura ル・シネマ1.jpgBunkamura ル・シネマ内.jpgBunkamura ル・シネマ2.jpgBunkamura ル・シネマ1・2 1989年9月、渋谷道玄坂・Bunkamura6階にオープン

 
 
  

[左端]濱口竜介監督(出演)
「ハッピーアワー」14.jpg

「ハッピーアワー」0102.jpg.png.jpg「ハッピーアワー」0102.jpg.png.jpg

「朝日新聞」2022年3月28日夕刊

       



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和田泰明

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This page contains a single entry by wada published on 2022年3月30日 17:48.

【3128】 ◎ 濱口 竜介 (原作:村上春樹) 「ドライブ・マイ・カー」 (2021/08 ビターズ・エンド) ★★★★☆ was the previous entry in this blog.

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