【3113】 ○ 大島 渚 「青春残酷物語 (1960/06 松竹) ★★★★

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安保闘争とその後の時代を反映する主人公の怒り。今の若い人が観たらどうか?

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「青春残酷物語」ポスター「あの頃映画 青春残酷物語 [DVD]」桑野みゆき/川津祐介

「青春残酷物語」4d.jpg「青春残酷物語」00.jpg 真琴(桑野みゆき)と陽子(森島亜樹)が夜の街から帰る際に用いる手段は、クルマの窓を叩いて、運転者に家まで送らせるというもの。真琴は赤いシボレーの男(春日俊二)に声を掛けたりし、結局パッカードの男(山茶花究)にホテルに連れ込まれそうになり、清(川津祐介)という大学生に救われる。翌日、二人は隅田川の貯木場で遊び、丸太の上で清は真琴を抱く。その後1週間経っても清から連絡はなく、真琴は彼のアパートへ行き、バー「クロネコ」で伊藤(田中晋二)と陽子とで待つ。彼ら二人が去り、残った真琴に、チンピラの樋上(林洋介)や寺田(松崎慎二郎)が言い寄る。清が来て喧嘩になるが、兄貴分「青春残酷物語」03.jpgの松木(佐藤慶)が止めて金で話がつく。清は、アルバイト先の人妻・政枝(氏家慎子)と関係があったが、真琴の真情に惹かれ、アパートに泊める。真琴が朝帰りすると、姉の由紀(久我美子)がそれを叱り、彼女は家に閉じ込められるが、隙を見て逃げ、清と同棲を始める。由紀はその居所を突き止めるが、真琴は家には戻らない。金が必要だっベンツの男・堀尾(二本柳寛)を騙せなかった。彼女は妊娠していたが、清は堕胎しろと言い、そのためにも例の仕事は必「青春残酷物語」05.jpgた清は、真琴と出合った時のことを応用し、マーキュリーの男(森川信)を真琴が釣り、清が強請った。学校で同棲が噂になり、真琴は受持ちの下西(小林トシ子)に呼ばれるが、由紀が噂を否定する。妹の生き方を認めたくなっていたのだ。その夜、真琴は要だと。真琴は清のもとを去る。偶然に堀尾に会って、清を忘れるためにホテルへ泊る。清は政枝から金を借りるが、真琴が堀尾と寝たことを知ると、堀尾を強請る。一方の「青春残酷物語」渡辺文雄.jpg由紀は、昔愛して破れた医者の秋本(渡辺文雄)を訪ねる。工場街で診療所を開き、看護婦の茂子(俵田裕子)と関係があり、昔日の面影はない。真琴が寝ていた。ここで子を堕ろしたのだ。清が現われ、秋本や由紀を罵倒し、真琴をいたわる。海辺で、二人の結びつきは堅いようにみえた。アパートに帰った時、警官が待っていた。堀尾が訴えたのだ。真琴は家へ帰され、清は政枝の奔走で情状酌量された。別れようと清は言う。君を守る力がないと。追いすがる真琴を突き放すが、樋口たちが女を貸せと脅したため、殴り合いになる。彼らは清を殴り続け、彼は死ぬ。真琴はフォードの男(田村保)に誘われ、ふらっと乗り込むが、突然飛び降り、クルマに引き擦られて動かなくなる―。

「青春残酷物語」お.jpg 大島渚(1932-2013/80歳没)監督による1960(昭和35)年6月公開作。 "松竹ヌーヴェルヴァーグ"という言葉が生まれるきっかけとなった作品で、これを機に大島渚監督自身も篠田正浩や吉田喜重とともに"松竹ヌーヴェルヴァーグ"の旗手として知られるようになりました(しかし、自身はそのように呼ばれることを望まなかったという)。

 この映画では、川津祐介演じる主人公の清の怒りが、当時の多くの若者が抱いていた世の中への憤りと重なっている点が一つのポイントでしょう。そう見ないと、清は金を得るために美人局的なことぐらいしか思いつかない、単なる破滅型の愚かな敗北者ということになってしまいます。ただ、実際、真琴の自分への真情に自らも彼女に惹かれる一方で、彼女が妊娠すると堕ろせと命じているわけで、責任回避型のどうしょうもない男にも見えなくもありません。

「青春残酷物語」04.jpg 安保世代とその後の世代のギャップというものが時代背景としてあり、渡辺文雄が演じる町医者の秋本は、青春を投げ打ってまで社会と闘った過去を持ち、一方、清の友人の伊藤は、今まさに安保反対デモに参加しながらも、ガールフレンドともテキトーに付き合っています。それに対して清は、安保闘争のようなものには秋本のように没頭することも、伊藤のようにテキトーに関わることもできず、家庭教師先の熟女マダムと爛れた関係を持つばかりで、そこへ現れた真琴が眩しく見えたのではないでしょうか。

「青春残酷物語」しぼr.jpg やはり、時代背景抜きにしては川津祐介演じる主人公の清に共感しにくいように思われ、安保闘争とその挫折という時代の流れを知らない若い人が観たらどうかな?という思いはあります(清が乗るのが単車でしかも盗難車、それに対しクルマの男たちが乗るのが、シボレー、パッカード、マーキュリー、ベンツ、フォードとどれも高級外車というのが当時のくすぶった日本の現実を象徴しているともとれる。ただ、今の若者がこうした外車に憧れを抱くか?)。個人的にはむしろ、表現面で、表情の大写しなど今の映画ではあまり使われない手法が取られているのが印象的でした。

「青春残酷物語」j2.jpg この作品は、大島渚監督が亡くなった翌年['14年]4Kデジタル修復版が第67回「カンヌ国際映画祭」でワールドプレミア上映され、さらに同年の第15回「東京フィルメックス」でも上映され、審査委員長の賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督(カンヌ国際映画祭でもコンペティション部門の審査員だった)が舞台挨拶でこの作品に触れています。

「青春残酷物語」j1.jpg そこで述べたのが、「この作品の特徴は、青春のただ中にいる若者たちの個人的な事を扱いながら、非常に社会性があるという事です。大島監督はこの作品の中で、個人と社会を断ち切ることなく、個人が属する社会の問題をしっかり見据えていたわけです。この観点は、現在の映画の中で、啓発を受けるべき非常に重要な姿勢だと思いました」「我々個人はあくまでも社会に属しているわけで、決して関係を断ち切ることはできません。『青春残酷物語』の中には、様々な問題が盛り込まれています。青春という意識の問題、命の問題、社会、経済、学生運動といったものです。さらに、大島監督の凄いところは、社会をしっかり見つめながら、ただ社会の方向にだけ映画を持っていくのではなく、そこに人間性に対する洞察力をしっかり込めているということ。社会を題材に、社会的な見方でしか映画を撮らないとしたら、それは芸術ではなくなってしまいます。この点が社会学者とは違い、芸術にまで高めているところだと思います」ということで、ああ、やっぱりという印象です。

「青春残酷物語」j3.jpg「青春残酷物語」ま.jpg さらに、"忘れられない場面"として、序盤、街で出会った主人公の真琴(桑野みゆき)と清(川津祐介)が丸太の浮かぶ川で遊ぶ場面を挙げ、「男が女の子にキスしようとすると、彼女が嫌がります。すると、男は彼女を水の中に突き落とし、彼女は溺れそうになりながら必死にあ「青春残酷物語」02.jpgえぐわけです。その時の会話がまさに人生に関わることでした。セリフのやり取りを通じて、2人が傷つけ合いながら互いの存在感を確かめ合っているようで、大きな孤独感を感じました。そのような表現が、この場面に盛り込まれていたわけです」と述べていて、この辺りはさすが、中国映画界の「第六世代」の監督として知られる賈樟柯監督らしいなあと思います。大島監督の作品を初めて見たのは、北京電影学院で映画を学んでいた頃だったといいます。今年['22年]の北京冬季五輪・パラリンピックの開閉会式の総監督の張芸謀(チャン・イーモウ)監督が、かつて高倉健主演の「君よ憤怒の河を渉れ」('76年/松竹)を観て感動したという、「第五世代」の日本映画に対する出会いや感じ方とはまた違うなあと。

 賈樟柯監督は、この作品が「自分が映画を撮り始めた1990年代の中国を思わせ、不思議な感じがする」とも語っていて、やはり社会を反映している分、その時代(あるいは同じような時代背景の時代)を見知っているかどうかというのは、この映画を観る時かなり大きな要素になってくる気がしました。

 結局、〈60年安保闘争〉の後に〈70年安保闘争〉というのもあったわけで、後者についてこの作品に該当するのが、藤田敏八監督の 「八月の濡れた砂」('71年/ダイニチ映配)ではないかなと勝手に思っています。

佐藤慶(チンピラの兄貴分・松木)/渡辺文雄(町医者・秋本)
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「青春残酷物語」ぽ.jpg「青春残酷物語」●制作年:1960年●監督・脚本:大島渚●製作:池田富雄●撮影:川又昂●音楽:真鍋理一郎●時間:96分●出演:桑野みゆき/川津祐介/久我美子/ 浜村純/氏家慎子/森島亜樹/田中晋二/富永ユキ/渡辺文雄/俵田裕子/小林トシ子/佐藤慶/林洋介/ 松崎慎二郎/堀恵子/水島信哉/春日俊二/山茶花究/ 森川信/田村保/佐野浅夫/城所英夫●公開:1960/06●配給:松竹●最初に観た場所(再見):シネマブルースタジオ(22-02-22)(評価:★★★★)

桑野みゆき in「彼岸花」('58年/松竹) 久我美子/渡辺文雄 in「彼岸花」('58年/松竹) 
「彼岸花」桑野.jpg 彼岸花 映画5O.jpg 

   

  kawazu.jpg 川津祐介(1935-2022.2.26)



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和田泰明

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映画「青春残酷物語」やテレビドラマ「ザ・ガードマン」で知られる俳優の川津祐介(かわづ・ゆうすけ、本名川頭祐一〈かわず・ゆういち〉)さんが2月26日、慢性心不全で死去した。86歳だった。[朝日新聞デジタル 2022年3月4日]

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