【3111】 ○ 平井 和正(原作・原案)/桑田 次郎(画) 『8(エイト)マン (全6巻)』 (1995/04 扶桑社文庫) ★★★★

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原案も作画もオーディションで決定。「最終回」が2度描かれた。ラストはちょっと寂しい。

8マン 扶桑社文庫1.jpg 8マン 扶桑社文庫1-6.jpg 8マン マンガショップ.jpg エイトマン HDリマスター.jpg
8(エイト)マン (扶桑社文庫 く 2-1)』['95年]『8(エイト)マン 文庫版 コミック 全6巻完結セット (扶桑社文庫)』『8マン〔完全版〕(1) (マンガショップシリーズ) (マンガショップシリーズ 435)』['11年]「エイトマン HDリマスター スペシャルプライス版DVD vol.2<期間限定>【想い出のアニメライブラリー 第33集】」['18年]

8マン マガジン.jpg 『8(エイト)マン』は、平井和正(1938-2015/76歳没)原作・原案、桑田次郎(1935-2020/85歳没)作画によるSF漫画で、講談社の「週刊少年マガジン」に1963(昭和38)年20号から1965(昭和40)年13号まで連載され、テレビアニメ版は1963年11月から1964(昭和39)年12月までTBS系列局で放送されています(テレビアニメ版は「8マン」の「8」がフジテレビの8チャンネルを想起させるので、「エイトマン」とカナカナ表記になった)。

 因みに、この作品は、原案も作画もオーディションで決定されています。「少年マガジン」編集会議で、手塚治虫の『鉄腕アトム』を越えるようなロボット漫画を連載することになり、先にSF作家・平井和正が提出した原案が『鉄腕アトム』とも『鉄人28号』とも異なる、「変身能力」「加速性能」というオリジナリティが受け入れられて採用され(平井和正の漫画原作家としてのデビュー作になった)、続いて講談社の「少年クラブ」で『月光仮面』を連載したことがある桑田次郎が、シャープでスマートな描線だったことから選定されています。

8マン 変身.jpg 8マンはただ弾よりも速く動けるだけでなく。人工皮膚(プラスティック)でどのような顔にも変装でき、関節は伸縮可能で、関節を縮めることによって、女性など小柄な人物にも変装できるという万能ぶりですが(電子頭脳が麻痺して、さち子を思いやるあまりか、そのさち子に変身してしまったこともある(文庫第18マン たばこ.jpg巻・248p))、弱点もあり、電子頭脳は、火炎・高圧電流などの高熱にさらされると力を失ってしまい、小型の予備電子頭脳が肩にセットされているのですが、その際は本来の能力を十分に発揮できません。そこで、ベルトのバックルに、電子頭脳及び超小型原子炉を冷却するタバコ型の強加剤(冷却剤)が仕込んであり、これを吸わないと戦い続けることが出来ないことがままあります(ある意味、科学が、端的に言えば原子力が万能でないことを示唆しているとも言え、「鉄腕アトム」などよりは先駆的かも。さすが平井和正)。

8man たばこ.jpg 丁度、ウルトラマンが戦いが3分を過ぎるとカラータイマーがピコンピコン鳴るのと同じで、こうした弱みのあるところがまた魅力なのでしょう。冷却剤はタバコに似ているらしく、宿敵デーモン博士によって冷却剤をタバコにすりかえられる場面もあるほどでしたが(文庫第1巻・243p)、タバコ型冷却剤に手を伸ばす8マンの姿は、ちょうどタバコ好きの人(と言うかニコチン中毒の人)がタバコを切らした時の状況に、絵的には似てしまっています。そこでアニメ版では、子供が喫煙を真似するといけないとの理由で途中からタバコ型強加剤は使用されなくなり、貯水槽に穴を開けて水をかぶるなどの方法で原子炉を冷却していました(これはこれで周囲に迷惑がかかると思うのだが(笑))。因みに、殉職した刑事の東(あずま)八郎が谷博士の手で8マンになった経緯や、谷博士自身が実はスーパーロボットで、8マンとほぼ同じ姿であることは(最初は8マンもそのことを知らない)、話が進んでいくうちに序盤で明かされます。

 平井和正の原案がいいのは間違いないですが、桑田次郎の線画タッチも素晴らしいと思います。連載が始まった年にテレビアニメ化されたことからも当時の人気が窺えますが(スポンサーがふりかけの丸美屋だったのを憶えている)、漫画連載中に桑田次郎が拳銃不法所持(自殺用に所持していたと言われている。当時は、漫画の描写用と聞いたが)による銃刀法違反で逮捕されたため、連載は急遽打ち切りとなり、打ち切りとなった回(「魔人コズマ」篇の最終回(1965(昭和40)年13号))は、連載当時、桑田の弟子だった楠高治(くすのき・たかはる、1936-2014/78歳没)らが代筆しています。このため、「魔人コズマ」篇は単行本(秋田書店版)に収録されることはなく、長らく幻のエピソードとなっていました。

8マン rumu.jpg しかし、1990(平成2)年に桑田が26年ぶりに最終回を執筆し(ペンタッチが微妙に変わっている)、1989(平成元)年から1990(平成2)年)にかけて、リム出版より完全版(全7巻)が単行本出版され、このときにその最終回も収録されています(代筆版は未収録)。単行本は50万部以売れる大ヒットとなりましたが、余勢をかって出た実写映画化などは失敗し、その影響でリム出版も経営破綻し絶版となりました。

8マン fusou.jpg これを復活させたのがこの扶桑社文庫版で、その第6巻がシリーズの中でも最高傑作とされる「魔人コズマ」篇になります。最後に東八郎こと8マンはさち子に正体を知られ事務所を去る(さち子・一郎の前から姿消す)という寂しい結末になりますが、連載打ち切り直前の回で、すでに東八郎が8マンであるのはほぼ間違いないとさち子が悟るシーンがあり(文庫第6巻・299p)、これが描8マン さち子.jpgかれたのは連載打ち切りが決まる前なので、この部分については最終回を意識しての展開ではないと思われます。もっとも、さち子はかなり早い段階から東八郎はもしかしたら8マンではないかという疑念は抱いてしばしば悩んでいるため、このままずっと話を続けていくつもりだったのかもしれません。

 因みに、'04年刊行のマンガショップ版(全5巻)には楠高治版と桑田次郎版の両方の最終回が掲載されています。桑田次郎版との違いは以下の通りです。

8マン めたこ.jpg●楠高治版「最終回」
・最後に使用した8マンの武器は分からず
・8マンはゴーガンに命令され助ける
・化け物となったコズマが妻ノラを襲うが8マンに助けられる
・コズマは化け物から普通の人間に戻り、コズマ夫妻は警察に捕まる
・事務所に戻るが扉を開けられず立ち去る

●桑田次郎版「最終回」
・8マンがコズマに対して秘密兵器フォノン・メーザーの使用に踏み切る
・8マンが自分の意志でゴーガンを助ける
・化け物となったコズマに妻ノラは殺される
・8マンは両拳からの電撃で化け物となったコズマにとどめを刺す
・事務所に戻らず立ち去る

エイトマン 2.jpg 一方、テレビアニメ版「エイトマン」の方は56話放映され、脚本には半村良、豊田有恒、辻真先らも関わっていて、最高視聴率35.5%(扶桑社文庫による)を記録、視聴率を落とすことなく1964〈昭和39〉年〉12月に終了していて、桑田次郎が拳銃不法所持で逮捕される前に終わっていたことになり、終わり方も、東八郎が事務所を去るとかいうのではなく、普通に終わっています。


エイトマン 1963.jpgエイトマンエ.jpg「エイトマン」●原作:平井和正●キャラクターデザイン・作画:桑田次郎●演出:大西清/佐々木治次●脚本:平井和正/辻真先(桂真佐喜)/半村良/豊田有恒/加納一朗/大貫哲義●音楽:萩原哲晶(主題歌:作詞・前田武彦/作曲・:荻原哲晶/歌・克美しげる●出演(声):高山栄/上田みゆき/原孝之/天草四郎●放映:1963/11~1964/12(全56回)●放送局:TBS
「エイトマンの歌」
作詞:前田武彦
作曲:荻原哲晶
歌:克美しげる

                                  





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